#2 予想外の事態
「……な、なんであの子がここに!?」
いつも見るランニングしている美少女は、年上なんだろうなって思ってたけど、同い年だったのか!?
し、しかも同じクラス……だと?
これは頑張ればお近付きになれるのでは……!?
今日は入学式だけだし、話しかけるのは無理だろうから明日から頑張ろう。うん、明日から。
明日なら自己紹介とかもあるだろうから、話す話題が見つかるかもだし!
※※※
翌日の朝、俺はまだ着慣れていない制服を着て、いつも行っている公園に向かっている。
「今日もいるかな、あの子」
最近は公園に到着すると、無意識にあの子を探している。
そのため、モーニングルーティンと称しているこの朝の散歩はもはや、あの子を見るためだけにしているのかもしれない。
元々はこんな思いでここに来てなかったんだけどな。
「あ……」
いつもいる場所に行き、自転車を止めると、水色のスポーツウェアを着た1人の女の子が公園に入ってくるのが見えた。
その女の子、元い同じクラスの名も知らぬ美少女は、いつも通り俺の方に向かって走ってくる。
「あ!」
同じクラスの名も知らぬ美少女は、急に声を上げてどんどん近づいてきた。
「ねぇ! あなた、同じクラスの人よね?」
「……そう、だと思うけど」
…………ん?
いや、待て待て待て待て。
一体何が起きてるんだ?
俺は今ずっと気になってた美少女に声を掛けられた? 掛けられたよね?
今日から頑張ってお近付きになる予定だったのに、向こうから近づいてくるなんて、予想外過ぎるんですけど!?
「やっぱり! あなた入学前からいつも朝この公園にいるわよね? 何やってるの?」
「……受験終わってからのモーニングルーティーンで、ただここに来ているだけだよ。別に特別何かやってるわけではない」
「へぇ〜、そうなんだ」
ああああああああ!
こういう時は男がリードしなきゃいけないのに、全然話題が浮かばない……
あ、そういえば名前名乗ってなかったかも。
「えっと……俺、愛徳拓也。これからよろしく」
俺が自分の名前を言った瞬間、なぜかは分からないが、沈黙が流れた。
急に名前を言うのはおかしかったか?
「…………たっ、くん?」
「…………はい?」
それって、俺の幼い頃のあだ名だよな。
どうしてそれを、この美少女が知っているんだ……?
「たっくん、たっくんだ! 私のこと覚えてる?」
え、もしかして…………
「お前、まさか……澪、なのか?」
「うん!! 久しぶり! たっくん!」
えぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?!?
10年前に遠くへ引っ越した澪と、最近気になり始めた美少女が同一人物、だと!?
そんな偶然があるのか!?
「……ということは澪、お前こっちに帰ってきてたのか?」
「うん、最近だけどね。本当は近いうちにたっくんがまだあの家に住んでいるのか確認しに行こうと思ってたんだけど、家の準備が中々終わらなくて」
おいおい、マジなのか?
本当は偽物で、なりすましとかだったらタチが悪いぞ。
「あとは、その…………」
「ん?」
「たっくんに会うのは、心の準備がまだ、出来てなくて……」
え…………
「だから、あなたがたっくんだと分かった今も、本当はずっとドキドキしてて……」
それって、俺のことが好きってことなのか?
……そんなわけないか。いくら幼馴染でも、こんな美少女が俺のことを好きなわけがない。
「そ、そんなことよりもそろそろ帰らなきゃ。学校に行く準備しないといけないし」
「そうだな、じゃあまた学校で……」
そう告げて俺も学校に向かおうとしたその瞬間、澪が俺の腕を掴み、上目遣いで見てきた。
「…………え?」
「……あのさ、学校、一緒に行かない?」
こんな美少女が上目遣いで見てくるのは反則に近い。そんなの断れる男など、この世に存在しないに決まっている。
「分かった。一緒に行こうか」
そう答えると、澪は嬉しそうに目を輝かせた。
「うん!」
それから俺と澪は、2人で歩いて澪の家に向かっている。
俺の家がある方は和風の家が多いが、澪の家がある方は洋風の家が多い。
どうやら、あの公園を境に家の外観が変わっているらしい(初めて知った)。
「じゃあ、ちょっと待っててね。すぐ戻ってくるから」
澪の家に着いたらしく、澪は見るからに大きく、豪華な家に入っていった。
「す、すげぇ……俺の家の1.5倍はあるんじゃないか?」
澪の家は外から見た感じだと、どこかのお姫様が住んでいるお城のような家だ。
中に執事とかいたりするのだろうか。やばい、めっちゃ気になる。
「ごめん、遅くなっちゃった」
家から出てきた澪は、水色のスポーツウェアから着替えて制服姿になっていた。
(……昨日も見たけど、制服姿はやっぱり破壊力やべぇ!)
ランニング中は長い黒髪を後ろで結んでポニーテールにしているが、学校の時は髪を結ばず下ろしているため、清楚系美少女として学校中から人気を集めるかもしれない。
俺みたいな凡人が、こんな可愛い子の隣を歩いていいのだろうか。
「どうしたの?」
「え……? あ、いや、なんでもない」
「そう? ならいいけど」
そうして2人で並んで、小さい頃の思い出話で盛り上がりながら、学校の方向へ歩き出す。
しかし、この時の俺は知る由もない。
こんなにも可愛い女の子と、幼馴染という関係を持ったことの罪深さを。
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