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番外編短編・幸子とメゾン・ヤモメ

「私、実は石田店長と付き合っていて、結婚しようかと思っているんです」


 幸子の爆弾発言が、メゾン・ヤモメの食卓に落とされた。


 今日は日曜日の昼で、ホットプレートを出しみんなでお好み焼きを食べていた。


 空美子の事件も解決し、季節はそろそろ春に近づいていた。


「えぇ、あの石田店長とですか?」


 亜弓はお好み焼きを切り分けながら、かなり驚いている。


「まあ、私はそんな気もしてたわ。最近カフェで石田店長とよく話し込んでいたじゃない」


 桃果はあまり驚いていなかった。


「まあ、結構お似合いじゃない。二人ともおっとり系で」


 栗子はおめでたいニュースに喜びの笑顔を向ける。確かに石田店長は幸子と5歳ぐらいしか歳の差もなく、お互い独身であるし問題ないだろう。


「結婚の話はどれぐらい進んでいるの?」

「たぶん夏頃には、彼と一緒に同居を始めるつもりです…」


 ちょっと恥ずかしそうに幸子が言う。


「じゃあ、幸子さんもメゾン・ヤモメからお別れか。寂しくなるわね…」


 亜弓がしんみりといい、おばさん二人も寂しくなってしまった。


「まあ、いつでも遊びのきてよ」


 栗子がそう言うと、幸子も少し寂しそうに笑う。こんな風に一緒にお好み焼きを食べるのは、当分ないかもしれないと思った。



 幸子の夫は突然亡くなった栗子と聞いている。詳しい事情は知らないが、朝起きると亡くなっていたのだという。胸の痛くなるような話だ。


 その後の幸子の落ち込みようは、側で見ていた栗子でも思い出すと泣きたくなるものだ。おっとが残したカフェうぃ気丈に一人で運営している姿も、栗子の胸を打った。数年前の話であるが、昨日のことのように思い出す。


 そんな幸子を見ていて居た堪れなくなった栗子と桃果はメゾン・ヤモメに一緒に住まないかと提案した。


 ある日、客としてカフェに行った時、他に客がいないのを身はからって言ったのだった。


「え? 栗子さんちに? 本当に良いの?」

「一人でなにかと辛いでしょう」


 栗子が優しく言うと、幸子はポロポロと泣いて頷いた。


 こうして幸子もメゾン・ヤモメの住人になる。まあ、シェアハウスといっても住人が集まらずむしろ困っていたのは大家の桃果の方であるが、こうして一緒に住むことができて嬉しかった。


「あの時、栗子さん達にシェアハウス誘ってくれて本当に嬉しかったです」


 幸子はお好み焼きを食べながら、昔のことを思い出して呟く。


 栗子や桃果も登場の事を思い出してしんみりとした気分に浸かる。


「でも、まだ夏まで時間があるでしょう。こうしてまた、お好み焼きやってもいいし、いい思い出作りましょうよ」


 亜弓がつとめて明るく言った。


「そうね。寂しくなるけど、お好み焼きは毎日でも良いわね」

「ちょっとシーちゃん、毎日お好み焼きはさすがに太るでしょ」

「はは、そうね」


 幸子と石田店長の事はおめでたい事と同時に少し切ないが、今はとにかくこのお好み焼きを楽しもう。


 栗子はお好みソースと鰹節の香りががだようお好み焼きを頬張った。


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