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犯人逮捕大作戦編-3

 栗子は文花に送られてメゾン・ヤモメに帰ったが、どうしたら良いのかわからない。


 ICレコーダーには、貝塚が勧誘と脅していた証拠はあるが、どうすればいいのかわからず、結局文花に渡したままである。


「大丈夫よ、栗子さん。そんな悪い事している奴等なんていつか報いを受けるわ」


 文花がそう励まして、かえっていったが、栗子はショックでリビングのソファで呆然としていた。


 想像以上の巨悪である。夕子が病んでしまう気持ちもわかるが、自分もどうしたら良いのかわからない。


 食欲もなく、桃果、幸子、夕子にも心配されたものだが、貝塚に言われた事が頭の中でぐるぐるとしている。


「栗子先生!」

「栗子先生、お久しぶりです!」


 そこに亜弓が帰ってきた。コージーミステリの担当編集者である常盤もやってきていた。


 常盤とは直接あった事は一度しかないが、テレビ通話で何回か打ち合わせしていた。人の良いカワウソのような顔が印象的な男だ。


 常盤も亜弓も全て事情を知っているようだった。


「すみません、先生。貝塚が変な事言ったみたいですが、そんなコージーミステリの新作を没にする事はないですから」


 常盤は少し汗を流しながら必死に栗子に言った。


「本当?」

「ええ、こんな事言ったらアレですが香坂今日子先生がなくなって、田辺先生の本のシリーズ化が急に決まったりして出版スケジュールもちょっと乱れているんです。本当は、先生が書いてくれて助かっています!」


 常盤に必死にそう言われたら、少し希望が持ててきた。しかし貝塚が編集長をしている少女小説の方はどうだろう。書いている時は辛かったが、ヒーローの牧師が素晴らしいと亜弓に褒められていた。ここで出版できないのは、亜弓に対しても申し訳ない。


「本当、大丈夫ですよ!先生!」


 いつになく亜弓も必死だった。


「確かに貝塚は先生の作品を没にするように工作しはじめましたが、絶対そんな事はさせません! パワハラじゃないですか!」


 いつも冷静な亜弓とは信じられないぐらい怒っていた。まさにこの女のほうが狼のようだ。


「あんなかっこいい牧師さんのヒーローを描けるのは栗子先生だけです!絶対に貝塚の思い通りになんてさせないんだから!」


 栗子も常盤も怒りはじねた亜弓に驚いていた。


「絶対貝塚を捕まえてやるんだから!」

「でもどうやって? 私達には証拠がないのよ?」

「明日陽介さんと農薬入手先かもしれない農家に行こうかと」

「本当?」


 確かに確証があるとは言えないが、何か手がかりを掴めるかもしれない?


「私も行きたいな」


 話を聞いていると栗子も行きたくなった。


「先生、ダメですよ。原稿やってください。書き直してもらうところ結構あるんですよ」


 常盤がちょっと困った顔で言う。


「そうですよ! 犯人は私が捕まえます! それに少女小説の方も訂正箇所多いんですから。先生は明日は仕事していてください!」


 珍しく怒っている亜弓に栗子はタジタジになり、何も言えずに頷いた。事件調査に行くならと言われても、こうして仕事をしろと二人の担当編集者に言われれば、貝塚の事を心配しても仕方ない気がする。

 栗子が二人ににっこりと笑って言った。羊のようなとても優しい笑顔だった。


「ええ、わかったわ。明日は仕事する」

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