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カルト疑惑編-4

「赤澤医院の息子の事は何か知らない?」


 栗子はあの後カフェに帰り、みんなにマツダ・ベーカリー知った情報を共有した。といって石田店長は帰り、そのまま仕事に戻ってしまったため、残っているのは幸子、拓也、桃果と栗子だけだが。


「赤澤医院かぁ…」


 拓也はその名前を聞くと、明らかに嫌そうな顔をし始めた。


「なんで? 拓也くんは赤澤医院の事知ってるの?」


 幸子はおっとりと微笑みながら聞いた。やはり美人の笑顔に弱いのか、拓也はちょっと顔を赤らめていた。


「いや、別に詳しく知ってるわけじゃないけど、あそこの医院の評判は悪いよ」

「初耳だわ。そんな評判聞いたことない」


 栗子は驚く。普段全く怪我も病気もしない健康体だ。今でも仕事の締め切り前は徹夜は当たり前だったし、普段赤澤医院の存在などすっかり忘れていた。幸子も健康なので、栗子の意見に頷く。


「あぁ、確かにあそこはヤブ医者っていう噂は聞いた事あるわね。私は病院行くなら総合病院の方行くわ」


 桃果は赤澤医院の悪い噂を知っているようで、コーヒーをゆっくりと啜る。


「どんな悪い噂があるの?」


 栗子はメモ帳をバッグか取り出し、身を乗り出すように聞く。


「なんか必要でもない薬や検査を無理矢理するっていう噂ね。実際どうかは知らないけど、そんな噂を聞くと行きたくないわ」


 桃果がそう言うにもわかる。医者の悪い評判は、ケーキやパン、カフェの評判よりも命に直結する。慎重になる気持ち栗子はよくわかる。


「っていうか、なんか私お昼食べてないからお腹すいてきちゃったわぁ」


 栗子のお腹が鳴り始めた。もう一時過ぎだが、昼を食べていない。


「なんか適当にサンドイッチでも作るわね」

「ありがとう幸子さん」


 幸子が厨房の方へ行ってしまった。


「それで赤澤医院ってどうなの?」


 栗子は再び拓也に聞いた。


「なんか疫病の感染症対策がひどいんだよなぁ、あの医院」

「どういうことよ?」

「総合病院では消毒や検温はやったけど、それとは違うの?」


 桃果も興味があるようで質問する。


「そういう感染症対策はもちろん、発熱している人は医院にくるなって言うんだよ。お袋が前に風邪をひいて赤澤医院に行ったら、熱があるからって門前払い」

「ひどい!」


 おばさん二人は揃って声を上げた。熱がある患者を追い払うなんて本末転倒じゃないか。


「噂ではワクチン打っていない人にも暴言吐いてるらしい。俺は別に反ワクチンとかではないけど、あの医院は行きたくないな〜」


 普段朗らかな拓也がこんなに怒っているので、よっぽどである。話を聞いていると栗子もイライラとしてきてしまう。


「まあまあ栗子さん、サンドイッチでも食べて元気出して」


 ちょうど幸子がやってきて、栗子の前にサンドイッチの皿を置いた。具沢山にハムと卵のサンドイッチで、食べていると少しは怒りが収まってくる。手作りだし、コーヒーとも合うのも嬉しい。あっという間に完食してしまった。


「ところでその赤澤隼人って息子の評判は聞いたことある?」


 幸子もイスのすわり、拓也に聞いたやっぱり幸子に質問されると拓也は嬉しいのか、ペラペラ話し始めた。おばさん二人との露骨に態度の差に栗子は呆れそうになる。香坂今日子の事件の事も思い出し、拓也に惚れている真凛に少し同情してしまう。


「あの息子は作家をやってるっていう噂も聞いたが、引きこもりっぽい。俺はあんまりみたことないな」

「松田さんによると変なカルトに勧誘していたみたいだけど?」

「あ!」


 そういうと幸子が声を上げた。何かを思い出したようだ。


「そういえば私もすごい昔、赤澤医院の息子さんにカルトの勧誘受けた事あったわ。すっかり忘れていたけど」

「幸子さんも?」


 一同驚く。


「ええ。夫が亡くなってすぐの頃。おそらく、気が弱っている時につけ込んだでしょうね。もちろん断ったけど」


 幸子はウンザリしたように言った。普段おっとりと優しい人なのでよっぽどだったのだろう。


「それで恨まれた可能性ってある?今のところ嫌がらせを受けている人の共通点は陽介と赤澤隼人ね」


 栗子はメモ帳にその情報を書き込む。しかしメモ帳に書いても、事件に結びつくかどうかはわからない。この問題は後で亜弓と共有するしかないだろう。

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