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殺人事件編-2

 その後、亜弓と桃果はメゾン・ヤモメに戻り、栗子のために入荷準備をして病院に持っていき、再びメゾン・ヤモメに戻った時には夜になっていた。


 メゾン・ヤモメのリビングで幸子は飼い猫のルカの背中撫でながら落ち込んでいた。


「まさかこんな事になるなんて。私のせいだわ」


 今にも泣きそうな顔で亜弓も桃果も胸が痛かった。


「幸子さんのせいじゃないよ。お腹減ってるから変な事考えるんじゃない? 何か適当にご飯作るからまってなよ」


 桃果はそう言い、キッチンの方へ行ってしまった。


「あの後カフェはどうなった? 栗子さん達は大丈夫だったけど…」

「うん、警察が来て色々調べていったの。うちの店が原因かも。食中毒かもしれないし、警察が調べるから営業もできない」

「そんな…」


 亜弓は言葉を失った。


 これはまるで栗子の好きなコージーミステリみたいではないか。飲食店経営者のヒロインが作ったものを被害者が食べて、ヒロインが警察に疑われる描写はよく見た。酷い場合は、ヒロインの店は営業停止になってしまうのだ。まあ、その隙にヒロインは事件の調査を始めるのだが。


「栗子さん達はファンからのプレゼントに毒が入ってって決めつけたけど…」

「わからない。警察のまだ調べている段階で、紙コップや栗子さん達のプレゼントを全部持っていってしまったのよ。明日は私の店の厨房も調べるとか…」


 と言うことは警察が、プレゼントも疑っているし、幸子も疑っているということか。まだ何もわかっていないが、幸子が犯人である事は絶対にないだろう。疑われて心身参っている幸子を思うと胸が痛い。栗子では無いが、ここで自分も捜査しても良いと思いはじめた。栗子では無いが、せっかく頑張って準備を進めてきたイベントにケチをつけられた上、栗子達も傷つけられたと言うととても許し難い。自然と亜弓の眉間の皺が深くなる。


 亜弓と幸子の間に重い空気が立ち込めた時、桃果がお盆を持ってやってきた。お盆の上にはノリが巻かれたおにぎりと味噌汁、唐揚げがのっていた。味噌汁のいい匂いで思わず亜弓の眉が下がった。


「今日はみんな疲れたでしょ。これでも食べて元気出そう」


 一瞬桃果が実家の母親に見えてしまうぐらい、亜弓はこのは配慮に嬉しくなった。


「うわぁ、味噌汁いい匂い。こういう時に出汁の香りを嗅ぐとホッとするわ…」


 幸子は目を細めて味噌汁をすする。亜弓も同じく味噌汁をすすると、心底ホッとした気持ちになった。理屈では説明できないぐらい味噌汁は、日本人の心をホッとさせる威力があるのかもしれない。点滴の食事になってしまった栗子を思うとちょっとかわいそうだが、おにぎりも頬張る。おにぎりの海苔の匂いも、こういうときとてもホッとした。


「唐揚げは冷凍食品なんだけどね。まあ、ミチルのところよりは美味しいでしょ」


 桃果は美味しそうにおにぎりを食べる二人にちょっと恥ずかしそうだった。


「でも本当にホッとしたわ。ありがとう、桃果さん」


 幸子もこの食事をとってだいぶホッとしていた。落ち込んでいる幸子を見てどうなる事かと思ったが、亜弓は幸子の様子を見て安心してきた。


「ま、とりあえず今日は何も考えずに寝た方がいいよ。どうせシーちゃんも入院中で何もできないんだから」


 最後に桃果は、いちごを出した。みずみずしい真っ赤ないちごに練乳をつけて三人で食べた。亜弓は甘いいちごを食べしばし今の状況を忘れた。


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