沈黙の春2
家に帰ると珍しく母親が部屋に来て話しかけられた。
「肇、あんた最近ずっとスマホばかりで勉強はしてるの?もう二年生なんだからそろそろ進路のこととかも考えないといけないんじゃないの?」
母親にこういった話をされるのが肇は嫌いだった。
勉強はしていない、成績もあまり良いわけじゃなくて、進路も決まっていない。
自分が将来やりたいことなんか全くなくて大学に行く自分や仕事に就く自分なんか全く想像できない。
「まだ二年生になったばかりじゃないか。ほっといてくれよ」
母親に強めの口調で言い返す。
「あんたねぇ、その言い方は何!誰があんたのことを面倒見てると思ってるの!」
「面倒見てなんか頼んでねぇよ!」
「あぁ、そう。そう言うならいつも使ってる自分のスマホの使用料金くらいは自分で払いなさい。そうじゃないならスマホは解約するから」
やってしまった、肇は自分の感情的な軽率な発言を反省した。
スマホの使用料金を自分で払う?
そんなお金なんかない。
どうする。今ならまだ謝れば許してもらえるかもしれない……
母親は肇が逡巡しているうちに部屋を出ていった。
肇はTwitterを開き、ファーストとして発言する。
「【急募】お金を稼ぐ方法! このままじゃTwitterができなくなる可能性ががが」
投稿して2分後、いくつかリプライが来ていた。
レッドブルー「カラダを売ろう」
生卵太郎「自販機の下を探す旅に出るのはどう?」
ダメだ、Twitterの連中はふざけてる……
こっちは本気なんだが……
リサ「ファーストさん、フォロワーたくさんいるのでライブ配信やってスパチャを貰うのを狙うのはどうでしょうか?」
お、これはアリかもしれない。
ファーストはフォロワーが9800人いるし、フォロワーをライブ配信に誘導して支援してもらえばスマホの使用料金くらい簡単に払えそうだ。
「リサさんありがとう!今夜やってみようかな」と肇は返事を返した。
さて、問題はライブ配信の内容だ。
どういう感じにやればスパチャを投げてもらえるんだろう。
お金の問題が何とかなりそうで肇は安堵感を覚えた。