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沈黙の春

世の中にはキラキラと輝いていて、周りを惹きつける才能を持った人がいる。

それと同時に世の中には人と上手く関われず、友達ができない人もいる。


高橋肇たかはしはじめは残念ながら後者の人種だ。

高校2年生になった5月、クラス替えがあり最初は浮き足立っていた教室の雰囲気も1ヶ月経って落ち着き、それぞれのグループが完成されつつあった。


クラスの中心的存在が集まって華やかなグループ、

容姿が整った人が多く属していて

「今年も文化祭楽しみ〜!」

「放課後カラオケ行こうぜ!!」 などと必要以上の声量でお喋りして笑っている。なんだかんだ教師達からも気に入られていて、肇はそれもまた気に食わない。


運動部の集団、奴らは授業中は基本的に寝ているが体育の授業だけはやたらと張り切る。運動部になんて入る奴らの気が知れないと肇は思っている。

どうして強制されてもいないのに運動なんかする必要があるんだ。くだらない。


中堅的なグループ、そこまで明るくもないが、かと言って暗いわけでもない。特に特徴のない人たちが集まっている。こいつらと仲良くしても何にも楽しくはなさそうだと肇は思っている。


あとは、アニメの話とかを楽しんでいる所謂陰キャラという奴らの集まりがある。

肇は放課後することがないから家に帰ってなんとなくアニメやラノベを見ているが、そいつらと一緒になって教室でサブカルチャーの話がしたいわけではない。


肇には学校で話す友達がいなかった。

休み時間にはスマホでTwitterを欠かさずチェックしている。

Twitterだけが自分の言いたいことを話せる場所だった。

「またクラスの五月蝿い奴らがギャーギャー騒いでる。地獄やんけ」真顔で投稿する。

投稿して5秒後には、いいねがどんどん付き始める。

好きなアニメの女の子のキャラクターをアイコンにして、自分のはじめという名前をもじってFirstという名前でTwitterをやっている。

フォロワーは9800人。学校では話せる友達なんて1人もいないけど、Twitterには自分の話を聞いて反応してくれる人がこんなにもいる。

アニメの感想、過激な意見、クラスの人間の愚痴、取り留めのない日常の話。

Twitterでは何を言ってもいいねがたくさん付き、肇は自分が認められている実感が湧く。

肇というのは仮の姿で本当はFirstとして生きているのかもしれない。

そう思うくらいにTwitterは自分の生活においては切っても切れないものになっていた。




キーンコーンカーンコーン。

放課後を告げるチャイムが鳴ると、肇はすぐにカバンを持ち教室を出て行く。

「やっと授業終わったー!」

「遊び行こうぜ!」

クラスの人が口々にそんな話をしているのを背中で感じながら。


急いで帰ったところでやることもないけど、残っていたところでやることもない。

「そういえば、あのアニメが今日の夜から放送だったな……」と最近見ている美少女アイドルアニメのことを思い出す。

今夜もTwitterのトレンド入りするだろうし、トレンドに乗っかれるようにネタを考えておかないとな。

あと200人フォロワーが増えれば夢のフォロワー10000人だから頑張ろう。

肇はそう思い、家に帰った。

今日も結局、誰とも話さない1日だった。



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