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第三編〜第五編

第三編 試練の時




私達の生はなぜ悲惨でなければならないのだろう。

自然の諸要求に突き動かされながら

果たしもなく駆り立てられていくばかり。

そのため一人行く小暗い道筋はいよいよ荒れるしかない。


いつの日に救済はもたらされるのだろうか?

いつの日にこの屈従は終わるのだろうか?

それとも、私たちは自らの身を投げて差し出すことでしか

無辺の没落をまぬがれる方法はないのだろうか?


だが絶望してはなるまい。苦しみを受けてこそ

神の試練は完成するのだから。

そして、私達が神性への希求をやめない限り

絶望の淵で炎は再び強く燃え上がるものなのだから





第四編 転生





人間がそのたどたどしい歩みを始めるとき

そもそもその営為は一体何のためなのだろうか?

歴史の巨大な渦巻きの中で恐らく

私たちはもがきながら波間に消え行くしかあるまい。


私達の歩みがあまりにも遅すぎるとき

なぜ、神の許しと助力が与えられないのか?

私達がほのかな生存の中にやすらってあるとき

なぜそこにとどまり続けてはいけないのだろう。


いや、そういした生の姿は虚妄の飲料でしかなく、

私達がいかに渇しても飲み干すことは出来まい。

至福の地は決して見つからないだろう。

そして、人はなお、希望という飲料を渇望するしかないだろう。





第五編  青春



ほのかに光っていた

あの時は何処へ逝ってしまったのだろう。

私達は幼く、あの人が誰とも知らなかった。

人々のまなざしも今ほど険しくなく

運命の鉄槌もその強権を真綿にくるんでいた頃

母もその嬰児も赤い頬をしてまどろんでいた。


だがいつのことか、むごい宿命は

たちまち私達の上に炎と氷を雨降らすのだ。

母は傷心してうつろな思いで佇み

嬰児は墓の下で虚しく朽ちていく

野はたちまち緑を失い怒りと叫びがこだまする

天と地は共鳴して人の耳を聾するばかり。


朗らかさを取り戻すことは二度とないだろう。

希望の葉末が失われたのだから。

そして青春が過ぎ去ったものにとって

残されているのは追慕しかないということを

切ない思いに駆られて、かっての影をすら求めようとも

そこに安らげるこずえはえられはしないということを







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