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匂い  作者: 原田 朱里
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車は中央自動車道を北に走る。聞いていたラジオはエリア圏外になったようだ。先ほどの軽快な音楽から一転すっかり無音になった車内でカーナビの案内音声だけが時折流れている。

ハンドルを持つ力を緩める。少し休憩が欲しい時間帯になってきた。ラジオのチャンネルを変えるためにも少し休憩を取ろうか。

カーナビの画面は次のSAまで残り2㎞と指していた。


左のウインカーを出しハンドルを切る。

交通量の少ない時間帯でもあり抵抗なく車線を変えることが出来た。少しハンドルを持つ力を強めて気を引き締める。


SAまであと1㎞だ。


平日のSAは大型トラックが多数停まっているものの乗用車のエリアは比較的空いていたので楽々停車させる。少し一息入れようか。サイドブレーキをかけたことを確認して足元を緩める。エンジンを切ることはやめておこう。少し北には進んだものの外では激しい蝉の声が聞こえている。


仮眠を取るか、コーヒーでも飲んで早々に出発するか迷ったあげく、時間に少し余裕がありそうだったので仮眠を取ることにした。座席を少し後ろに倒す。荷物は後部座席に置いていたが運転席の背面を倒すことには支障がない。


あまり長居は出来ないが少し目を閉じることは出来るだろう。


予定していた通り15分ほど経って目を開ける。15分ぶりに光を得た目は始め色彩感覚を失っていたが次第に光量を調節出来るようになり元通りの世界に戻ってくる。さて、少し外の空気を吸いに行こう。

流石にキーを戻し、エンジンを切ることにした。戻る頃には灼熱になるが、流石に車から離れるのにエンジンを着けたままにするのは気が引けた。


一歩踏み出すとやはり太陽の光が皮膚をピリピリと刺激した。そして乾いたアスファルトの匂いと排気ガスの匂いが鼻にまとわりつく。


SAは平成の始めの頃に建てられたのだろう。年季が入り始めた看板が目についた。時刻はお昼を過ぎていたが昼食をまだ取っていなかったことに気付き、食堂に向かうことにした。

食堂にはお昼時を過ぎているにも関わらずちらほらと利用客が目立ったが混むほどではない。

券売機にはご当地名物の文字が並ぶ。正直通過点であるSAのご当地名物がなんであるは興味が無いが、日本人にはご当地という言葉に弱い。何がご当地なのか分からなかったがカレーうどんを注文することにした。食べ始めて余裕、麺の太さに驚いた。きっとこの麺がご当地名物なのだろう。


お昼を食べたことで眠気に襲われることに警戒し、トイレを済ました後、自動販売機のコーヒーだけ買って戻る。そういえば、SAにあるコーヒーの自動販売機は街中ではあまり見かけない。なぜなのだろうと考えて車に戻っていると、車に引かれそうになった。幸いコーヒーは手元に溢れることはなかった。


エンジンをかけすっかりサウナ状態になった車内でコーヒーを飲む。外から見るとやはり建物には年季が目立つ。SAは比較的綺麗なイメージがあったがどうやらここは忘れられているらしい。

錆びれ始めた建物も気になったが、SAの端にはアスレチックがあるらしい。残念ながら平日のこの日には子供達はおるまい。からんとした遊具が目に見えるようだ。


氷が半分ほどの量になってしまった。うどんなんて食べてしまったがために体は中から熱を持っている。外から幾らか冷たくしても、体が落ち着くのにはしばらく時間を要するであろう。


思いの外、SAで時間を使ってしまった。

座面を起こして足元を整える。目的地まではまだ少しある。

ハンドルを握り、また車は中央自動車道を北に向かう。

地元のFMラジオは懐メロを流し始めた。


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