06
「で、どうしたのかな?」と廊下に移動して、明冬はユキに尋ねる。
「昨日はさ、何か中途半端で終わっちゃって今後はどう動くのかなって気になってね」
「そうか、実はね僕の知り合いのトコでも同じような失踪事件が起きているらしく、今日はその知り合いのお店に行って話を聞こうと思ってたんだ」
それを聞いたユキは「その……私もついて行って良いかな? 依頼はしたけど、そのまま待つ事なんて出来ないの。居ても立っても居られないの、落ち着かなくて私も何か手伝える事があるかも知れないし、ダメかな?」と言う。
明冬は少し考える素振りを見せるが暫くすると「分かった。でもさ、今日行くトコはちょっと特殊なトコだから制服では行けないよ、一度家に帰って普段着に着替えてストレンジ・グルーヴに集合しよう」
「特殊なところ……? 何か明冬君が言うと、とんでもないところって感じがして不安になってきたわ」
ユキは両手を胸の前に持っていき恐怖に肩をすくめている。
「無理してついて来なくてもいいよ?」
心配そうにユキの顔を窺う明冬だが「いや、お父さんのためだもん私頑張るわ!」とユキは決意したかのように鼻息荒くして、明冬のブレザーの襟を掴み、顔を近づけて宣言する。
「わ、分かったから、高木さんちょっと顔が近いよ」
するとユキはハッとした様子で顔を赤らめながら離れる。モジモジしながらスカートの裾を弄りながら上目遣いで見る。
「ゴメン、勢い余っちゃって……。でも何で私だけが恥ずかしがってるの」
「いや、実際やられたらこんなリアクションだと思うよ?」
自分だけ意識してしまい、明冬は何も感じてないようで何故か負けた気がしたユキだった。
昼休みの終了を告げるチャイムが鳴る。
「ヤバっ、次は移動教室だった。と、とりあえず私服でストレンジ・グルーヴね! 置いて行かないでね!」
教室に戻ると「明冬ってユキちゃんと仲良かったっけ?」そう言いながらムスッとした表情で秋穂が問いかけてくる。
「どんな事を話してたの? 気になって仕方ないんだけど」
「仲良いって訳じゃないよ、仕事の依頼人だから話してたんだ……って何で怒ってんの?」
「べぇーつぅーにぃー、怒って無いもん。……そう、依頼人なんだ。じゃ聞かない方が良いね、手に負えない案件だったらシードである私が手伝ってあげるから」
「エミリーさんや幸さんも居るし、大丈夫だよ」秋穂は、二人の名前を聞くと、あからさまに嫌な顔をする。
「私、あの人達嫌い、だって明冬の事を嫌ってるんだもん。特に幸っていう人。明冬に、あんな事しておいてさぁ」俯き、握りすぎて僅かに両手が震えている。
「私、あの人を絶対に許せない」
「うーん、僕は気にしてないけどなぁ」と頬をかく。
そう言う明冬を秋穂はとても悲しそうに微笑を浮かべて「そっか……、明冬はそうだったよね」と呟いた。