04
やっと自分が何をされたか分かったユキは、肩をワナワナと震わせながら「それって犯罪だよね、信じらんない! 勝手に人の頭の中覗く? 普通は聞いてから覗くよね」と大きな声を発する。
エミリーは(あぁやっぱりこうなったかぁ)と思い頭を抱えていた。だが明冬のデリカシーの無さは留まる事を知らない。
「大丈夫だよ。ちゃんと仕事で異能使いますよっていう許可書とかは持ってるし」とズレた事を言い出す。
「そういう事を言ってるんじゃ無いの! もう、何で分からないかなぁ、普通嫌でしょ? プライベートを勝手に覗かれるのは」
だが明冬は、仕舞いには「でもさ、依頼達成には必要な事かなって思うんだけど……。何かゴメン、怒らせてしまって」などと、のたまっている。
だからそういう事じゃないと、ユキはヤキモキして次の言葉を発そうとするが、横からエミリーが「ホントにゴメンね。ウチの社長こんなヤツなのよ。でも仕事はちゃんとするし結果もだす。ウチに依頼して後悔はさせないから」とユキの目を真っすぐ見て真摯に対応する。
ユキとしては怒りや不快感は消えてないが、大人に謝られそこまで言われたら言葉が続けれず、矛を収めざるをえない。
「分かりました、でも次に了承も得ず同じ事をしたら許さないからね!」
「うん、気を付けるよ」と、また頓珍漢な事を言う明冬に呆れながらも、ふつふつと怒りが湧いてきたが、ユキは何も言わなかった。
その後、失踪した前日の父親の様子など聞き取りをしたが、手掛かりらしい手掛かりは無かった。そうしている内に結構な時間が経っており窓の外は真っ暗になっていて今日は解散し、また後日に事務所に来てもらい改めて話を聞くような流れになり、ユキは帰って行った。
「で、何であんな事したの」と非難の声を上げるエミリー。
「まったくもって素ですよ。うーん、あらかじめ了承を得て覗くと頭の中が整理されてるんですよ。まあ、そっちの方が見やすいし良いんですが、今回は失踪する心当たりがないと言うことだったので、無意識に本人が聞いた事や見たものを、見て・観て・視ないといけませんから、ふとしたものが手掛かりになるもんなんです」
毎回だが、エミリーは明冬の『みる』という言葉の違いが分からないのだった。本人からしたら全然違うとの事だったが、エミリーにはやはりピンとこなかった。
「新聞を覧るとかじゃ無く、ダイブするって感じですかね」と言葉を一旦区切り、「例えば、本人が忘れた記憶とかも僕には『観れる』んですよ?」と続ける。
それを聞きエミリーは顔をしかめ「何よ、何か言いたいことでもあるのかしら? ゴメンよ貴方に頭の中を覗かれるのは」踏み込み過ぎだと言わんばかりの口調だった。