03
「ただいまーって、お客さん? いらっしゃい」
事務所のドアが開きベルの鐘と共に一人の女性が入ってきた。
明冬は慣れているのか普通だったが、ユキは入ってきた女性を見てギョッとした、その女性の身なりなのだが、とてもド派手だったのだ。
ネオンブルーのジャケットとスーツ、ジャケットの下はノーインナーで肌の露出面積が多く、胸の谷間に視線が吸い込まれてしまう。
ネオンピンクの長い髪を三つ編みにし一つに纏めて左肩から前に流している。
鼻は高く、目は切れ長。スカイブルーの瞳はまるで宝石のように綺麗だった。一目見たら外国の出身だと分かる。
「お帰りなさい、エミリーさん。依頼はどうでした?」
「うん、『ギルド』にちょっかいを出してたヤツは、牧島さんに引き渡してきたわよ。」そう言うとエミリーはため息をつく。
「最近、町の大物達にちょっかいを出すの流行ってるのかしら? そうだとしたら正気の沙汰じゃないわ」
『ギルド』とは、この町にある能力者集団の一つである。
いわゆるストリートギャングというやつで、メンバーが襲撃に会い深手を負ったらしく襲撃者を探していた。ギルドのリーダーである牧島と知り合いという繋がりで、ストレンジ・グルーヴに依頼がきた。
結果から言うと襲撃犯は特定でき、ギルドに引き渡した。明冬達はその後、襲撃者がどうなるかは知らない。正確に言うと、知る必要は無く知らなくて良い。依頼を受け報酬を頂く。その後のゴタゴタに巻き込まれるのは御免だった。
「そういえば幸さんはどうしたんですか? 一緒だったはずでしょ」
「ああ、依頼の帰りにヂヂさんから連絡がきて、話を聞きたいから店に来て欲しいって言われたから、ちょっと寄ってきたんだけど……。俺は行かねぇ! とか言い始めちゃって別行動になったのよ」苦笑いをしながら頬をかく。
「なるほど、幸さんはヂヂさんの事が苦手ですもんね」
話が一区切りついたのか、二人はユキの方を見る。そしてまた見合うとエミリーは明冬に尋ねる。
「で、どこまで見えたの? 見たんでしょ? さっき握手していたでしょ」
「あんまり期待していた情報はありませんでした、仕方無いですよね。 だからウチに来たんだし」
ユキは何の事を言ってるのか分からず、という風で首を傾げている。エミリーはその仕草を見てギョッとした。
「ちょっと! 伝えてなかったの? 信じられない。ごめんねぇウチの社長おかしいのよ」
エミリーは焦った様子でユキに誤り、明冬の頭を無理やり下げさせる。まだユキは状況を理解できてないが、明冬が何やらやらかした事は分かった。
明冬は明冬で、なんでそんなに怒っているか分からないといった様子で「えっと僕ね、精神感応能力を持ってるんだ。だから君の頭の中を見させてもらったよ」
頭を抱えるエミリー。なんて事もないように言う明冬に、やっと状況を理解できたユキは他人から勝手に心を覗かれる不快感と、怒りがこみ上げてきていた。