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第12話 メリエス様、カムバック

サイレント正月休みを取っていました。

ぼちぼち『最強四天王、ツンデレ魔王を愛でる(イジりもあります)』との同時更新再開しようかと思います。

俺がちょっぴりそんな気分になっていたその時だった。



「あっ! 師匠! 師匠じゃないですかー?」



空気を読まないような呑気な声で一人の女が冒険者の人垣をかき分けて俺の前に現れた。



「おっ、マリーじゃないか? いいとこに来たな」



空気を読んでか読まずか俺に話しかけてきた女の名はマリー。


少し前に知り合った冒険者協会ベーンヘルク支部所属のB級冒険者の双剣の女剣士でとある出来事をきっかけに俺を魔人とも知らずに勝手に弟子入りしてきた中々のクレイジーガールである。


そんな闖入者マリーに出現に周りの冒険者達からは「おいっ、あれって『碧の双剣』じゃないか?」「あの変態、マリーさんの知り合いか?」など驚きの声が上がる。


ちなみに『碧の双剣』というのはマリーの碧の髪と瞳に双剣士という特徴から取った安易すぎる二つ名である。


俺がマリーの知り合いだと分かった冒険者達は俺に対する警戒感は薄れたのかぴたりと罵倒は止み、何人かの冒険者は安心したのか俺達の周りから去って行くのが見えた。



「いつこちらに来られたんですか? 師匠」



「あぁ今さっき着いた所だ」



マリーは今の状況に気付いていないのか周りの冒険者を無視して俺と更に会話を進める。


真面目な性格だが、あまり空気が読めないのがマリーという女なのである。


とはいえ流石に冒険者が集まっているこの状況がおかしいのに気付いたのかマリーはキョロキョロと周囲の冒険者を見回した後、俺の隣にいるメリエス様をジロジロと見た。



「ところでそちらの女の子は?」



まぁ当然といえば当然の疑問ではあるが——。



「これを見て分からないか?」



俺はそう言って、放心状態のメリエス様と俺が繋いでいる手をマリーに見せつける。


マリーは俺とメリエス様の顔を交互に見つめた後、死んだゴブリンのような目を向けて俺に呟いた。



「……師匠。……遂に妄想を抑え慣れなくなって美少女攫いを。正気に戻ってください。メリエスなんて女の子は存在しないのですよ。今からでも遅くないので自首してください」



どうやら俺がマリーに常日頃から語っていたメリエス様は空想上の生き物だと思われていたようである。


まぁ確かに「地上に降り立った女神」やら「神々が作り出した美の化身」など空想チックなことを言い続けて、本物のメリエス様に会わせていなかった俺にも責任がなくはない気もするが、それにしてもひどい話である。



「待て、マリー。この方は正真正銘のメリエス様だ」



「……分かりました。話は詰め所で聞きます」



「いや、分かってないだろう」



完全に状況は逆戻りになっていた。


先程までは安心そうに聞いていた冒険者諸君の表情も険しいものになり、むしろ先程よりも数が増えているくらいである。



(あぁ、めんどくさい、やっぱり今からでも爆破してしまおうか。うん。そうしよう)



と俺が全てを諦めようとしたその時だった。



「はっ! 勇者は!」



息を吹き返したメリエス様がそんな事を言って、キョロキョロと周りの冒険者を見回すと、今度はなんとか意識を保つことに成功したのか俺に耳打ちした。



「おいっ、勇者はどいつじゃ? こうなったらやっちゃるわ。人間共に魔王の力を見せてやる」



やけくそモードに入ったメリエス様は意外と強気になるのである。


可愛いのは実に結構な事だが、今取るべき手段は魔王の力を人間共に見せつける事ではない。



「おーい、マリー。改めて紹介しよう。こちらは俺が仕えている貴族の令嬢メリエス様だ」



すると、戦る気満々だったメリエス様も俺に釣られてかぎこちなくだがマリーに挨拶した。



「おぉ? そうだ。私はメリエス。よろしくしてやろう。マリーとやら」



「えっ? 本物のメリエス様?」



まさか! 本当に実在したの!? みたいな雰囲気のマリーだったが流石に本人からそうだと言われては信じる他ないだろう。


師匠師匠と普段は慕ってくるくせに全然信じようとしなかったマリーにイライラしつつも結果オーライということで許してやる事にした。


メリエス様の言葉もあってようやく俺の疑いが晴れ、周囲の冒険者は何事もなかったように普段の生活へと戻って行く。



そして、周囲から冒険者が去ると、マリーは俺の傍まで駆け寄ってきたかと思ったら笑顔で言った。



「私は信じていましたよ! 師匠!」



うん。分かった。俺、お前の事は信じない。


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