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その3 続・趣旨説明

どうやって調べたんでしょうね

 高橋由紀。

 言わずと知れた、クラスで一番、いや、学校全体で見ても一番モテる女子である。

 なぜモテるのか。

 それが謎である。

 確かに可愛いのだが、テレビで見るアイドルに比べればごく平凡。クラスで目立つ女の子かといえばそうでもない。ゲームや漫画が結構好きで、どちらかというとオタクっぽい。

 なのに、モテるのである。実に不思議である。まるで「光の速度は秒速三十万キロ」と決まっているのと同じように、疑問を挟む余地などなくモテるのである。


「わが新聞部が調べたところ、彼女に恋心を抱いている生徒は、実に百五十四名!」


 全校生徒は六百八十名、うち男子は三百十二名。男子に限れば、実に二分の一である。


「なお、これには女子も含まれる!」


 新聞部・桜田の言葉にまたざわめきが起き、数名の女子がそっと目を逸らした。


「だが、そんな彼女が、一人の男子に恋をした。それが和井田健だ!」


 クラスがどよめいた。

 「え、やっぱそうなん?」「最近仲良いよね」「てかあれでしょ、コッペリア」「あー、あれね、あんなん見たらね」「あれはすごかったよねえ」


 そう、それはこのクラスが文化祭の出し物でやった「コッペリア」の演劇がきっかけだった。

 主人公の青年が恋をしてしまう人形、コッペリア。その人形を、和井田健が高橋由紀をモデルに作ったのだが、これがもはや芸術作品の域に達していた。


「全身全霊を込めました」


 そのまま倒れてしまうんじゃないか、てぐらい精魂尽き果てた和井田健。モデルになることを恥ずかしがっていた高橋由紀だが、人形のあまりの完成度に呆然として、「こんなのすごすぎ」と感動のあまり泣き出していた。

 それ以来、高橋由紀はしょっちゅう和井田健と一緒にいるようになったのだ。


 「いやしかし、自分そっくりの人形とかどうよ?」「ちょっとキモい」「てかあいつ、なんであんなの作れるわけ?」「家が人形作ってるんじゃなかった?」「え、まさかラブドール?」「え、ちょ、それやばいやつじゃない?」「まさか高橋そっくりの人形で?」「きゃー、言わないでー」


「はいはいはい、騒がない、騒がない」


 木葉がパンパンと手を叩き、ざわめいていた女子がおしゃべりをやめた。


「で、高橋さんが和井田くんに恋をした。そこまではオーケー、わかった」


 だけどさ、と木葉は続ける。


「なぜに私たちがあの二人をくっつけるのに知恵を絞らにゃならんの?」

「わからんか?」

「わからない」


 木葉がそう言うと、女子の大半がうなずいた。


 「ほっときゃくっつく、て」「外野が騒いでもねえ」「本人の気持ち次第でしょ」「余計なことしたらこじれない?」「てか、和井田に高橋さん、もったいない」「だねー」


「それはだ!」


 新聞部・桜田がビシリと手を伸ばし、メガネをクイっと持ち上げた。


「毎日毎日目の前でイチャコラされてヘコまされたあげく、付き合ってるのか、て聞いたら『いやー、高橋さんが僕なんか相手にしないでしょ』なんてほざきおる和井田を見て……」


 新聞部・桜田はそこで一度言葉を区切り、だん、と机を叩く。


「ええいうっとおしい、さっさとくっつけよこのバカップル、て思ったんだよ!」


ああ……ご愁傷様です

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