その1 発議
これは、青春の熱い1ページの物語である。
「んじゃあ、クラス会議始めっぞ」
ツンツンととがった頭のどうみてもヤンキー――こほん、やんちゃ坊主である萩野透が、よく通る声で宣言した。
「てぇわけで、今日の議題は、文化祭の反省会」
「反省することある人」
萩野に続き発言したのが、隣に立っていた木葉咲夜。茶髪にばっちりメイクの、どう見てもギャル――こほん、あー、その、うん、ギャルとしか言えない女の子だ。
ちなみに萩野がクラス副委員長、木葉が委員長である。
見てくれで判断してはいけない、この二人の溢れるカリスマ性がクラスを一つにまとめあげ、文化祭の演劇部門で演劇部すら抑えてトップに立った功労者なのだ。成績がイマイチなことなど、長い人生においてたいしたことではない。
「「「反省することはありません!」」」
クラスメイトの、力強く息のあった返事に、委員長・木葉は満足そうにうなずいた。
以上で、本日のクラス会議の議題は終わりである。
「じゃ、終わろうか」
「委員長、意見具申!」
そんな木葉に対し、真っ直ぐに手を挙げて声をあげたのが、メガネをかけた文化系イケメン、桜田ジョン。こんな名前だが生粋の日本人である。なぜこんな名前なのかというと、歴史学者にして歴史オタクの母が「ジョン万次郎」を崇拝していたからである。ジョンでなければ万次郎だったはずで、どちらがマシな名前かは、いまだに本人の中でも結論が出ていない。
「なんだね、新聞部」
ちなみに桜田は学校新聞部の部員なので、木葉は桜田のことをそう呼ぶ。なぜならこのクラスには、もう一人桜田がいるからだ。
「私はぜひここで議論していただきたいことがある」
新聞部・桜田は、机の中から模造紙を張り合わせた紙を取り出した。
「あいや待たれよ。それはどうしても今議論すべきことであるか?」
そんな桜田を止めたのが、同じ桜田の姓を持つ女子、桜田ラン。こちらは日本人ぽい名前だが、父が日本人、母はフランス人のハーフである。妙な口調なのは、時代劇の大ファンである母方の祖父の影響だそうだ。
ちなみに、新聞部・桜田とは、なんの血縁関係もない。
「そうだとも、マイスール」
「わらわ、お主の姉妹ではない」
「いいじゃないか、お前みたいな可愛い妹、ほしかったんだ」
「可愛いと言ってくれるのはありがたき幸せなれど、本日はこの後、ケーキを食べに行く予定」
「ケーキは明日でも食べられるじゃないか」
フランス人・桜田の抗議を受け流し、新聞部・桜田はつかつかと前へ出た。
「あ、こっち持って」
「おう」
新聞部・桜田に差し出された模造紙の一片を、副委員長・荻野は受け取った。
「私は今、この千載一遇のチャンスを生かし、これを話し合うことを提案する!」
ゆっくり開かれ、ホワイトボードに貼られた模造紙を見て、クラスメイトにどよめきが走った。
議題
和井田健 と 高橋由紀 を恋人同士にする方法を考えよう
何してるんでしょうね、この人たち