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その18 最後の戦い

武久由美、職業・神官

「おお勇者たちよ、死んでしまうとは何事だ!」


 死屍累々としかばねが横たわる中、かろうじて生き残った書道部・武久の声が教室に響き渡り、続いて「ザオ○ク」との掛け声を聞いて、しかばねどもが生き返っていった。


「す、すげえ破壊力だったぜ」


 新聞部・桜田は流れ落ちる汗を拭うと、這々の態の来賀に代わりガベルを叩いた。


「み、みんな……これが、男から女へのマジな告白だ」


 「お、おお……」「すごすぎる……」「ここは天国か?」「尊い」「いいものを見た」「くそう、俺だって……」「うう、私だって……」「佐藤さんがめちゃくちゃ可愛かった」「あの宇賀神がイケメンに見えた」「ちくしょう、俺も放送部に入るぞ」「おにぎり、そうよ、おにぎりの練習しなくちゃ」



「だが、これで終わりではないぞ」


 桜田の言葉に、ざわついていたクラスメイトがびくりと体を震わせた。


「そう、我々はまだ、女から男への告白を見なければならない」

「ま、待て、待つんだ、桜田!」

「いや、待てない。なぜならもう五時を回っている」


 桜田が時計を指差した。


「我々は議論をすると選択した。そして議論は未だ決着していない。やると決めたことは最後までやり抜く、それが我が校の校訓であり、誇りではないか!」

「だ、だが、犠牲が大きすぎる」

「そうかもしれない。だが、見ろ!」


 新聞部・桜田の指差す先、そこには、真っ赤な顔をしながらも幸せそうな顔をして、宇賀神に寄り添う佐藤の姿があった。


「あの、幸せそうな顔、あれが見られただけで、我々の犠牲などちっぽけだと思わないか!」


 あの笑顔を、我がクラスのお姉ちゃん、高橋にも浮かべさせるのだ。

 桜田がそう言うと、突っ伏していた男子が力を振り絞り起き上がった。女子もまた、あがき、もだえるようにして体を起こし、最後の戦いへと臨む決意を示した。


「さあ、友よ、勇者たちよ、最後の戦いに撃って出るぞ!」

「おおっ!」

「ここまできて、逃げるかよ」

「そうよ、私たちも行くわよ!」


 誰もがうなずき合い、手を取り合った。

 そう、この絆こそが我ら二年三組が誇るもの。我らが青春の証にして、一生の宝とするもの。

 我らは負けない、行くぞ、最後の戦いへ。


「佐藤、俺たちもだ」

「うん、宇賀神くん♪」


 しかし、腹が立つものである。

 目の前で、幸せそうにイチャつかれるというのは。


「さあ宇賀神、最後の戦いを!」

「わかった」


 宇賀神が立ち上がった。クラスメイトをぐるりと見回し、静かに笑みを浮かべると、ゆっくりと手を叩き始めた。


お手を拝借♪

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