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その12 本題・告白の方法 ~ 加賀の異議

逆転!?

「異議あり!!」


 ちくしょう言われちまった、とクラスのみんなが地団駄踏んだ。


 そんな、クラスの誰もが発したかった言葉を叫んだのは加賀(かが)理恵(りえ)。帰宅部の河合とはクラスで双璧をなすゲーム好きで、しかし見た目は楚々たる美少女なのでそのギャップに誰もが驚く。

 ちなみに青春の大半を電脳世界で過ごしているので、成績は推して知るべし状態である。


「裁判長!」

「……議長だよ」


 来賀と加賀、二人合わせてレディー・賀賀、などと一時期言われていたが、定着せずに終わった。最大の敗因はこの二人が特に仲がいいわけではないことだった、とは提唱者である芸人見習い・田島の反省である。


「あ、失礼。議長、発言よろしいですか?」

「どうぞ」


 もう立ってるじゃないかとは、大人な来賀は言わないことにした。


「松井の意見はもっともです。おそらく安パイです。確実を期すという点では間違いない方法だと思います」


 ん、異議ではないのか、と皆が思った時、「ですが!」と加賀が机を叩いた。


「告白は、男からすべきです!」



 ──加賀の異議。


 だって女は愛されたいんです。

 好きな人に全力で口説かれて、愛されてるって実感が欲しいんです。

 女から告白なんて、私は許せません。

 何楽してるんですか、そんなだからこのクラスの男子のほとんどに彼女がいないんですよ!


 (※ここで十名近い男子が泣きそうな顔になる)


 いいですか、古来恋愛というのは、男から告白するものと決まっているんです。

 古事記を知らないんですか?

 イザナミから告白したら失敗して、イザナギが告白したら成功してるんですよ!

 平安時代の恋のやり取りなんて、男が和歌を送るところから始まるんですよ!

 それが日本の伝統なんです、あるべき告白の仕方なんです!


 男女平等? くそくらえです!

 恋愛において男女平等なんかありえない、徹底的に女尊男卑です!

 男は女の心つかむために走り回って頭抱えて地べたを這いずり回りやがれ!

 そこまでしてくれるから、女も腹くくって体任せるんです!


 わかったか、男子ども!


 ──加賀の異議、終わり。



 一気にまくし立て、肩で息をする加賀。その迫力に押されて誰もが口を閉ざし、ちらちらと隣の席の人と目配せを交わした。


「どしたん加賀っち。なんかあったん?」


 委員長・木葉が恐る恐る尋ねると、加賀がキッと木葉をにらみつけた。


「女に告白させるなんて邪道、そう思っただけです!」

「……咲ちゃん、咲ちゃん」


 加賀の剣幕にのけぞった木葉に、加賀のゲーム仲間、河合が耳打ちする。


「加賀ちゃん、この前新作の乙女ゲーム買ったんだけどさ……そのシナリオがエグくて。加賀ちゃんのタイプのキャラ、こっちから告白すると弄ばれた上に妊娠してポイッてされるというひどいシナリオでさぁ」


 おい、と突っ込みたい気分を必死で抑え、木葉は頭を抱えた。


「ちなみに、向こうが告白してくるとお姫様のようにちやほやしてくれるというハッピーエンド。そのルートにたどり着くまでが、まさに鬼畜のごとき選択なんだけどね」

「そのシナリオライター、ここへ連れてこいや」


 しかしその極悪にして鬼畜なストーリーが大受けし、そのゲームは異例の大ヒットとなっているそうだ。

 大丈夫かこの国は、とさらに頭を抱えたところで、木葉ははたと気づく。


「そのえぐいシナリオって、もしかして十八禁ゲームじゃないの?」


 なぜそのゲームを買っている、十七歳。

 その問いに対しては、河合も加賀も、そっぽを向いて口笛を吹くだけだった。


令和18年生は0歳にしてにR18です。

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