表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/83

81話 大賢者である私は世を謀る。そして旅立ち

 「アラバスタル王国、第28代国王アレクシスの名においてミリーシアタはアラバスタル王国の大聖女であると宣言する!」


 あーあ、とうとうなっちまったよ。

 その宣言を聞きながら私はそんな事を思った。

 本格的に聖女として世を謀る事になってしまったなぁ。

 本当は大賢者なんだけどね。

 

 私はあの戦いの後こっそりウノユを抜け出そうとした。

 お偉いさんに囲まれるなど、真っ平御免だ。

 が、セバっちゃんが許してくれなかった。


 熾烈な戦いだった。

 千手先を読み合う攻防がそこにはあった。(はず) 

 そして戦いが始まり3秒後、私はセバっちゃんに簀巻きにされて運ばれていた。


<くそう、どうして逃げられぬ>


 転移で逃げてもよかったけど、どうしてもセバっちゃんに勝ちたかったのだ。

 敗れたけどね。


 ウノユでは戦勝パーティーが3日3晩続き、私は常に色々な人に囲まれていた。

 それは勇者となったリリー先輩も同じで3日間は二人セットで拘束されっぱなしだったね。

 戦勝の報は各地に届き、各都市のお偉いさん達がこぞって続々とウノユにやって来たのだ。


 最後の日、少し外の空気を吸いたいと言って、リリー先輩とパーティー会場を抜け出した時にリッキーと会った。

 私から話す事はもう無い。

 私が黙っていると、リッキーが話しかけてきた。


「追いつくよ。必ず追いつくから」


 まじまじとリッキーを見つめてしまった。

 リッキーの瞳からは強い決意が感じられた。


「そっか。待ってるよ」


 私はそれだけ返した。

 リリー先輩には「いいわねー。羨ましいわ」と誂われた。

 強く、超絶イケメンになって戻って来てね、リッキー。

  

 パーティーが終わると私達は直ぐに集団転移でにビフテに戻って来た。

 クーンとサファたんは普通に転移できる事に驚き、涙目でマジ怒りされた。

 そんな事もあったなぁ、てへ。

 

 しかし余りに眠かったので、リリー先輩に勧められるままに高級宿屋で寝てしまったのが不味かった。

 目が覚めた時、私は王宮のベッドに移されていたのだった。

 またもふかふかのベッドに釣られてしまったのである。


 この時、オトプレちゃんもまた、今回の戦いで魔法を行使し過ぎた為、眠りについてた。

 魔力の出どころは私なのだけど、魔力を消費する行為自体がオトプレちゃんの存在を摩耗させるのかもね。

 魔導書なのにねぇ。 


 その後もピッタリとセバっちゃんに張り付かれ、現在に至る。

 最後の最後にまんまとリリー先輩に嵌められてしまったのだった。


 今回の大騒動でアレク王太子への譲位が急遽行われることになった。

 その最初の仕事は国民の前で王位に就いたと宣言する事なのだけど、その宣言の場で私の聖女認定と、リリーの勇者認定も同時に宣言しやがったのだ。


 割れんばかりの大歓声。

 はぁ、やれやれだ。


 控室に戻ってきた私をフェルたんが出迎えてくれた。


「ミリーってやっぱ凄かったんだ!」


 フェルたんは素直に喜んでいた。

 

「私よりリリーの方が凄いよ。なんて言っても2代目勇者様だよ?」


「でもそれを認定したのはミリーだよ」


 ま、そうなんだけどね。


「僕も直ぐに強くなって合流するよ!」


 力強い口調にフェルたんの決意が感じられた。


「わかった。待ってるよ」


 私はニヤッと笑って小指を差し出す。

 私とフェルたんは指切りで約束を交わしたのだった。



 宣言の後、私達はアラバスタル王国から旅立った。

 先ずはサンムーン聖王国を目指す。

 これはサファたんの護衛も兼ねているけど、勇者はサンムーン聖王国でも勇者の認定と宣言を受ける必要があるのだ。

 それだけで各国の対応が変わってくるので、結構重要である。

 認定を下すのは聖王国の聖女のサファたんだ。

 だから認定の宣言をする段取りがもうできている。


 今回の魔王討伐パーティーの初期メンバーは結構大所帯となった。

 私、勇者リリー、魔道士クーン、レンジャー兼スカウトのカリス、暗殺者?セバっちゃん、筋肉担当のマッスル、魔道士マジックの7人だ。

 こうして改めて見ると、乙女とジジイという変なパーティーになった。


 このメンバーだけあって資金に困ることはなさそうだ。 

 前回は私とアヤメの2人からのスタートだったからそれと比べれば賑やかなものである。


「マッスルとマジックも奇特だねー」


「また冒険したくなったんじゃよ」


「まったく持って暇になりましたからな」


 やれやれ、この二人は頑固だからなぁ。

 なんだかんだでこのパーティーに潜り込んできた。

 二人の面倒を頼みに来た時のアレク王の申し訳なさそうな表情を思い出した。

 また無理押ししたんだろうね。


「セバっちゃんはギルドの方はよかったの?」


「心配御無用です。もともと業務は担っておりませんので。マイバディを放っておける訳在りませんな」


「ぐふぅ。よろしくバデー」


 私は精神ダメージを受けながら、まだまたセバっちゃんとの戦いが続くのね、と思った。


 そう言えば今回ミルファたんはパーティーから外れた。

 実はミルファたんもカードの秘術を自身の物にしつつあり、現代では十分聖女に値する実力を持つ。

 しかしミルファたんはアレク王の強い要請を受け、王室の特別待遇で新設された王国主席ヒーラーの任に就いた。


 私とサファたん、青薔薇の戦乙女の面々によるガールズトークでもこの話題で一花咲いた。


 実はミルファたんを聖女に認定する話もあったらしい。

 それに頑なに反対したのはアレク王太子だと言う。(即位前の話ね)

 そして、王国主席ヒーラーというポストを新設してまで手元に残した。

 これはどういうことか?

 つまりはそういうことだ。

 いやー、ドラマチックー。

 二人はいつからそんな関係に?

 旅が終わって戻ったら、王妃になってたりして。

 ほんでもってお世継ぎも誕生してるかもー。


「ミリー楽しそうね」


 私が皆を見ながらニヤニヤしていると、リリー先輩が話しかけてきた。


「まぁ、大所帯だからねー。それよりリリー先輩、勇者の導き手としてバシバシ鍛えるから覚悟してね」


「冒険者の先輩に向かってまぁ。ふふふ、お手柔らかにね」


 リリー先輩はわざとらしく目を見開いて驚いた表情をした後、とてもいい笑顔で笑った。


 うんうん、勇者に必要なのはその笑顔。

 この旅の行方がどうなるかなんて、出たとこ勝負。

 でも、私にとっては2回目だから、1回目よりは上手くやるよ。

 なんてたって私は大賢者で大聖女だからね。

次回、最終回なのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ