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69話 大賢者である私が遂に満を持して(ひっそりと)登場

 あれー?

 なんでこんな事になってるの?

 不思議だ。


 颯爽と皆の元に登場し、爽やかに『えせ魔力エリクサー』(以降えせ薬)を渡して寝坊を有耶無耶にする筈だったのだけど。


『その格好が良くないのじゃないかしら』


 オトプレちゃんは私の格好が良くないという。

 私も薄々、本当に薄々は怪しいんじゃないかなーと、思っていたんだけど、でもアヤメはコレが正装と言っていたし。


 私は『ほっかむり』なるものを頭に被り、『風呂敷』に包んだえせ薬を背負って歩いていた。 


 『ほっかむり』と『風呂敷』は同じ模様でお揃いになっている。

 緑地に白色で蔦のような模様が書かれている。

 アヤメはこの模様を『唐草模様』と呼んでいったっけ。

 重要なのは『ほっかむり』は顎で結ぶのではなく、鼻の下で結ぶ事らしい。

 アヤメの教えに従って100%完璧に身につけた筈である。


 急ぎ、サファたん達の元に向かっていたら、そこを警ら中の都市警備隊の人に見つかり、職務質問を受けた。

 私は、自身はヒーラーで大事な届け物を輸送中と説明するも信じてもらえず、警備隊の人に拘束されてしまったのだった。

 うーん、この格好はそんなにヤバいだろうか?

 警備隊の人たちに「そんな怪しいヒーラーがいるか!」と言われてしまった。

 

 ここにいるじゃないの。


 私は取調室に連れて行かれた。

 そこでEランクの冒険者タグを見せて、セバっちゃんの元に連れて行く様に強い口調で言う。

 この薬がないと、戦いに勝てないとも。

 緊急事態中ではあるが、本当だった場合の事を考え、兎も角セバっちゃんの元に連れて行ってくれる事になったのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「なんですか?その怪しい格好は」


 セバっちゃんの第一声はそれだった。

 セバっちゃんは出入り口を守っている最中だった様だけど、ギルド職員が呼んできてくれた。

 今、私は回復班の皆のところにいる。

 左右の腕を警備隊の人に掴まれているけどね。


「背負ってる薬を運ぶための正装だよ。この格好じゃないとダメらしいのよ」


私は事実?だけを答える。


「格好は兎も角、ポーションというのは?」


「説明するから、拘束解いてよ。このままじゃ勝てなくなるよ」


「ミリー様!そのポーションがあれば勝てるのですか?」


「戦いに絶対は無いよ。でもそーだね。初戦は90%いけるんじゃないかなあ。なんと言っても魔力エリクサーだからね」


「魔力エリクサーですと!」


 いつも無表情のセバっちゃんが驚きの表情をちょっとだけした。

 眉がピクリ動いただけだけど。

 さすがエリクサーだ霊験あらたかだね。


「うん。でも神様の力で作った擬似的なものだから、もう作れ無いよ」


 セバっちゃんは頷くと、警備隊の人に拘束を解くように指示してくれた。


「この方はグレートマムこと聖女ミリー様です。此処までの護衛ご苦労様でした。持ち場に戻って宜しい」


セバっちゃんの言葉に驚く警備隊の人達。


「「これは大変失礼しました!!」」


「怒ってないよー。お努めご苦労様」


 私がニコヤカに返事をすると、警備隊の人は頭を深々と下げ警らに戻っていった。

 

「セバっちゃん有難う。助かったよ」


 聖女と説明されたけど、この際不問としよう。

 今回は都合が良かったし。


「礼には及びません。それよりも早くお願いします」


「おっけー。じゃ、オトプレちゃん始めてー」


 私の合図に光の精霊姿のオトプレちゃんが出現する。

 サファたんや他のヒーラーさん達は回復に追われ、私達の姿も目に入ってないようだ。

 

 オトブレちゃんは、門の近くに行くと、光線を発し地面に何かを書き始める。

 流石にその光景はヒーラーさん達の目にもとまるし、

 周囲がざわつきだす。

 オトプレちゃんが書き終えた時、石畳には2つの魔法陣が彫り込まれていた。


 「じゃ、サファたん、ヒーラーさん達、ちょっと祈りを止めてコチラに注目!」


 手を叩き注目を集める。


「ミリー様!今まで一体どこに!」


「ちょっと準備してた物があってねー」


 私は背負っていた風呂敷を降ろし広げると、えせ薬を1本づつサファたんとヒーラーさんに渡す。


「これは?」


 皆の疑問を代表するかのように、サファたんが疑問の声をあげる。


「これは、神様から授かった魔力ポーションとでも思って。2時間だけ魔力を授けてくれるよ」


「魔力を授ける…」


「ま、聞いてよ。でもそれだけでは不足なんだ。だから回復チームを再編するね。まずはサファたん以外で5人づつの2チームを作って。急いでね」


 その場に立っていた立位置で右から5人と残り5人でチームが作られた。


「次に…」


 説明しようしたとこで、回復を中断させられた負傷者の内の一人が声を荒げた。


「何時まで待たせるんだ!防陣が保てなくなるだろうが!」


 説明を遮られ、ちょこっと、ほんのちょこっとイラっとする。

 イラッとしたので何も考えずに広範囲回復を掛けてしまう。

 その場にいた負傷者全員が一気に回復した。


「ハイ!回復させたよ。危機なんだから早く持ち場に戻って!」


「あ、あぁ」


「すげー、いきなり全快したぞ」


「何者だ?」


「あのお方がG様だ」


「あれがグレートマムか」


 口々に何かを言いながら、全快に回復した戦士たちが門を出ていく。


「ミリー様!凄い!これがミリー様の実力」


「相変わらず派手ですな」


サファたんは驚き、セバっちゃんも無表情に呆れているご様子。

他のヒーラーさん達も私を見る目が変わった。


 やりすぎちゃったかな? てへッ

 

「ま、ミラ様はもっと大人数いけるらしいよ。あとオトプレちゃん、準備出来るまで回復の相手しておいて」


 ミラの話は本当。

 ミラは同時に1000人はいける。

 そこまで行くと回復変態である。


 また不満が出ないようにオトプレちゃんに暫く回復を担ってもらい、その間に準備してしまおう。


「さて説明に戻るけど、右チームは手前に描かれた聖紋、左チームは奥の聖紋を受け持ってもらうね。試しに聖紋に向かって回復の祈りを捧げてみて」


 言われたとおりにヒーラーさん達が祈りを捧げると、2つの魔法陣は白と金に輝き出す。


「うんうん、おっけー。白は回復陣で金は強化陣だよ。負傷者にこの2つの陣の上を歩かせて。通らせるだけでいいから」


「え、ええ。それで私は?」


「サファたんはこの陣で治らなかった重症者を直接回復して」


「わかりました」


「じゃ、渡したポーションを飲んで。大丈夫!『オクレ兄さん』とは叫ばないから」


 私の説明が悪かったのだろうか?

 ヒーラーさん達が飲もうとしない。


「意味は分かりませんが私は飲みます!」


 意を決したサファたんが、えせ薬をグビグビ一気に飲む。


 10秒後。


「これは!凄い…魔力が、使い切れない位の魔力を感じます!」


「ぬふふー。飲んでもらったのは魔力エリクサー同等品だからねー。2時間だけチートモード突入だよ」


 サファたんの言葉を聞いて、皆一斉にポーションをのむ。

 うう、信頼値が違うのね。

 ま、いいけどさー。

 とにかく一安心だ。

 試作品は完成品と同じ性能だけど何故か『オクレ兄さん!』と叫んでしまうからね。

 全員完成品を飲んだようで一安心。

 1本だけ試作品が混ざっていたと思ったんだけど。

 まあ500年前の記憶だからね。

 記憶違いなのかなー。

 

 ま、いっか。


「ここは防衛の心臓だから、じゃんじゃん戦士を送り出して。そして2時間でケリつけちゃおう!じゃあ治療再開してー」


「「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」」


 こうして治療が再開された。

 陣の上を通過するだけという画期的な治療法により、治療待ちが一分以内になるという驚異的回復ローテーションが開始されたのだ。

 やっぱ流石としか言い様がないよね私。

 しかも強化陣も通過させるので全ステータス1.3倍、戦意昂揚が追加されてしまう。

 私の経験上で割り出した数値だけど、長期戦では1.3倍までに留めないと体の負荷が大きすぎる。

 短期で5分以内なら人によるけど、鍛えた人で3倍までは可能だと思う。

 ちなみにアヤメが1分限定で10倍まで強化できた。

 凄いよね。今の私でも5倍はきついだろうね。


 私は暫く様子を見ていたが回復班の方は大丈夫のようだ。

 順調に回っている。

 

 さて、戦況を把握しておくか。

 私は外壁の上に移動することにする。

 

 では軽やかに反撃を開始しちゃうぞー!

なお、当たりの1本を受け取ったのはクーンさんなのでした。

この後、戦場に響く「オクレ兄さん!」をミリーは聞くことになる。

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