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68話 大賢者である私の先見の明が証明されましたね

「その先だよ!」


 ワトルー導かれ、リッキー達は目的地についた。

 視線の先に抜け地の出入り口が有り、ちょうどダンジョンゴブリン達が都市内に入り込んで来るところだった。


 地下道は子供が通れる程度の大きさ。

 しかし、ダンジョンゴブリン(以下Dゴブ)達には問題ない。

 モンスター達の知能は高くはないが、とうとう発見されてしまった。

 

 しかし、ミウリの勘がギリギリの所で内部崩壊の危機を救った形になるだろうか。

 それはリッキー達に掛かっていた。


「リッキー気をつけろ!DゴブレッドはBランク相当だ!」


 ムッツが短剣を抜きながら叫ぶ。

 侵入してきたDゴブは赤茶の肌をしていた。

 緑肌のDのゴブよりも凶暴で強く、通常では6〜8層でないとお目にかかることが出来ないモンスターだった。


「判った! レトリー応援を呼んでくれ!、ミウリとワトルーは下がって!」


 そう言いながら、ロングソードを抜くリッキー。

 リッキーの指示従い、レトリーが警笛を鳴らす。

 近くの警ら隊がやってくるまで、この人数で対処しなければならない。


 早く倒さないと、次々に入り込んでくるかも知れない。

 現在、抜け道から出てきたDゴブレッドは3匹。

 リッキーは迷わずDゴブレッドに向かっていく。

 そのまま剣を振るう。


 リッキーの剣は違うこと無く、Dゴブレッドを斬り伏せた。

 斬られたDウルフゴブレッドが光の粒となって消える。

 呆気なく倒してしまった事にリッキー自身が信じられないでいた。

 しかし、Dゴブレッドから感じるプレッシャーは、ブレイドが稽古をつけてくれた時、ブレイドより放たれた殺気に比べたら全然怖くはない。

 動きも早くないし、なにより向こうのリーチはこちらより短い。 

 慢心せずに冷静に対処すればやれる! そうリッキーは思った。

 

 ムッツは何とかDゴブレッドの攻撃を防ぐのが精一杯だった。

 そこにレトリーがライトの魔法をムッツの頭上少し後方に発動させる。

 Dゴブレッドが怯んだ一瞬にムッツがDゴブレッドの心臓にショートソードを突き立てる。

 その間にリッキーは2体目のDゴブレッドを切り捨てた。


「リッキー強え!」


 自身もいずれ冒険者になりたいワトルーは、造作もなくDゴブレッドを斬ったリッキーに感嘆する。

 リッキーは剣士としての実力ならBランクでも通用するようだ。


 都市内に入り込んだ3匹は倒す事が出来た。

 リッキーは抜け道から新たな敵が出てこないか警戒しながら近づく。

 その時、抜け道の出入り口の闇から何かが飛び出す。


「しまった!」


 それはリッキーをすり抜け、視界に捉えたミウリを目指した。

 

 Dウルフ、10層にいるモンスターだった。

 その小柄だが早い動きにリッキーは対応することが出来なかった。

 

 「逃げろ!」


 ムッツが叫ぶが、ミウリは竦んでしまい、動くことが出来ない。

 そこにワトルーがミウリに覆い被さり庇おうとする。


 ミウリは見た。

 Dウルフが飛びかかったのを。

 口を開き、口から見える牙が自分の喉を食いちぎろうとしているのを。















「キャン!」


 次の瞬間、ミウリはDウルフが何かにぶつかるのを見た。

 無様な悲鳴をあげるDウルフ。

 Dウルフはその何かに跳ね返され、目的を達する事が出来ずに着地する。

 ミウリは自分を中心に、光る膜のドームが現れていることに気づいた。

 その光のドームがDウルフを拒んだのだ。

 ミウリは何故か手元が気になり見れば、指輪が光っていた。

 そして気づいた、この光のドームの正体に。


「お姉ちゃん!」


 この指輪を手に入れた時、ミリーがかけてくれたおまじない。

 そのおまじないの効果がこれだ。


 その光景をリッキー達も見つめてしまった。

 抜け道から追加で出てきたDゴブレッドをリッキーが斬ったが、無意識だった為覚えてもいないだろう。

 

 Dウルフは再びミウリに飛びかかる。

 

 「ギャン!」

   

 Dウルフによる2回目の攻撃を、ミリーによって指輪に付与された条件発動型魔法は弾かなかった。

 だからといって侵入を許した訳ではない。


 ミリーがかけた魔法『守るのは性にあわないので反撃しちゃう♡でもたまには逃げるかも』の思考ルーチンは、反撃が妥当と判断した。

 そしてその判断に従い、非情な反撃を実行に移した。

 ドームから鋭い棘が突き出されDウルフを口から貫いた。

 飛びかかったDウルフに回避する術は無かった。

 Dウルフは光の粒になって消えた。

 同時に危険が無くなった為か、ドームも消えた。


「大丈夫か!」


 ムッツが走ってきた。


 リッキーは冷静に2人の無事を確認すると、抜け道の出口を油断無く見張る。


「うん。お姉ちゃんが守ってくれた」


「今のはミリーの奇跡か」


 ムッツはミウリの一言で、ミリーが指輪におまじないをかけていたのを思い出した。


「ワトルーもありがとうね」


 ミウリにニッコリと御礼を言われ、ワトルーはミウリを抱きしめたままなのを思い出し、ぱっと離れると、顔を赤くしてそっぽを向いた。


「ミウリが居ないと、毎日がつまらなくなるからな」


 とってつけた様な言い訳を言うワトルー。


「ナイト様も大変だな」


 ムッツに誂われ、顔を更に真っ赤にしつつも、ワトルーは内心胸を撫で降ろしたのだった。


<ミリー、有難う>


 その光景を横目に見ていたリッキーはミリーに感謝した。

 まるでこうなることを判っていたかのように、適切な奇跡を指輪に掛けていた事に感謝せずには居られなかった。


 ダンジョンのモンスター達に連携や情報共有という意識は無い。

 だから抜け道を発見した個体のみが入ってくる様だった。

 なだれ込んで来たら対処不能だったが、それならなんとかなりそうだ。

 

 警笛を聞いた他の警らチームが複数やって来た。

 抜け道を塞ぐべく、人手が集められる。

 こうして、ミウリとワトルーの二人の勇気によって、都市内部崩壊の危機を防ぐことができたのだった。

リッキー株、赤丸急上昇中

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