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66話 大賢者である私の出番はまだらしい

 リッキー達『ビフテの星』の3人は、都市内の警ら中だった。

 この非常時に火事場泥棒がいるとは思えないが、これも必要なことではある。

 なので、彼らには臨時の拘束権が与えられている。

 これらはセバのお墨付きがあったからこそであったが、リッキー達に知る由もない。

 

「おーい!リッキー!」


 名前を呼ばれたリッキー達は、ワトルーとミウリに気づいた。

 3人もまたミウリの絶対勘の凄さを知っている。

 血相を変えた2人の様子に、ただ事では無い事態を感じ取った。 


「何があった!?」


 ムッツも余計なことは聞かない。

 ただ要件をだけを問う。


「この都市の外壁には抜け道があるんだ。そこからモンスターが入ってくるかも知れない!」


 息を切らしながらもワトルーが答える。


「案内してくれ!」


 リッキーはワトルーの叫びに即座に呼応した。


「わかった、こっちだ!」


 ワトルーを先頭に5人は抜け道に急ぐのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


 治療チームでの方では10人のヒーラーと聖女サファが必死に回復の奇跡を行っているが、人手が足りない状況だった。

 サファの回復の奇跡はミリーから授かったカードのサポートがあり、格段に早く回復の効果を発揮する。

 他のヒーラーはその速さに驚いたが、サファ自身も驚いていた。


<この感覚!まだはっきりしないけど、この感覚を自分のものにしたらカード無しでもこの速さを維持できそうだわ>


 サファはいかに自分の祈りに無駄が多かったのかをカードを通じて解らされた。

 速さだけでなく、効果や消費魔力についても同じことが言えた。


<ミラ様の回復の奇跡がこれだと言うなら、いったい500年の間にどれほど祈りが歪められてしまったのでしょう?ともかくこのカードはミリー様を通じてミラ様から授かった聖王国の至宝!必ず生きて持ち帰らなければ>


 サファはその思考の中でミリーの名が出ていたにも関わらず、その当人がいないことに気づかない。

 それだけ、カードの効果に舞い上がっていたのだった。

 しかし、それでも怪我人が増え対応しきれなくなっていた。

 サファは手渡されたMPポーションを素早く飲んだ。

 もし、この光景を護衛の騎士団長や侍女のメルが見たらさぞ慌てた事だろう。

 毒味もなく、誰が用意したかも判らないポーションを飲ませるなど、あってはならない事だった。

 尤も騎士団長は客将として将軍麾下の精鋭部隊に参入しているし、メルは王都で待機中だったが。

 しかし、サファはそんな些事に構っていられなかった。

 怪我人の列は長くなっていく一方なのだ。


<大聖女ミラ様!私に力を貸して下さい!>


 サファは心の中でミラに縋っていた。



「ポーションの方はこっちです!」 


 回復の奇跡が間に合っていない。

 それにヒーラー達も休みなしで奇跡を使い続けており、疲労していた。

 その為、本来はまだ投入するのは早かったが、冒険者ギルドや、商工ギルド等、各ギルドから提供されたポーションの配布を開始する決断を都市長が下した。


 しかし、このペースで配布したら新ポーションといえど、数が足りなくなるだろう。

 現在進行形でポーションの調合も行われているが焼け石に水といったところだった。

 防壁の上で都市内外の状況を見守る都市長もまた、最悪の事態の覚悟をした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー


 回復班の混乱以上に戦場は混乱していた。

遂に防陣のローテーションが機能しなくなり、押し留めるのがやっとになっていた。


「下がるな! 押返せ!」


将軍の叱咤にかろうじて騎士達が踏みとどまっている。

リリー王女達や国王も再び前線に戻っていた。


 クーンの放つ竜巻が敵を上空に吸い上げ放り出す。

 落下したモンスターが地面や他のモンスターに当たり、当たったモンスター共々光の粒になって消える。

 もう魔力を温存している場合では無い。

 クーンも出し惜しみ無く大魔法を放っていた。


 リリーはミルファの回復の奇跡の性能が上がった事を知り、

防陣の中にミルファを残した、防陣の崩れそうな所に奇跡を使ってもらう為である。

 ミルファもまた、カードの恩恵を実感すると共に、サファと同じく自身の祈りに無駄が多い事を実感させられていた。

 その点に気づくと回復のみならず他の奇跡の祈りにもまた無駄が多いことに気づいた。

 ミルファの奇跡は格段に早くなり、防陣の崩壊を防いでいた。

 サファが自身より能力が上と評した通り、前線が崩壊しないのはミルファの奇跡のお陰だった。


 リリー、カリス、プレゼ3人でクーンを守るように戦う。

先程、リリーはクーンの元に光の精霊がやって来て何かポーションを渡して行くのを見ていた。

 ミリーの光の精霊であることは間違いないが、それ以降クーンは魔法を出し惜しみしなくなった。

 ということはあのポーションはミリーの秘策だろう、とリリーは考えた。

 同時に、ミリーが動き出した事が判った。

 聖紋の使い手である大聖女ミリー。

 彼女の存在がリリーの戦意を支えていた。

 その思いは、カリスやプレゼも同様の様だった。



 その時、リリーは見た。

 

 しまった!と思ったが時既に遅い。


 突如立ち上がったそれらは他のモンスターよりも大きい。

 いままで伏せていたとでもいうのだろうか。

 それは2体の牛男だった。

 10層のボス『牛男ブラザース』が遂に出現した。

 確かに現在戦っているのはDウルフや、ダークスケルトンソルジャー、魔人形、イビルプラントなど10層の敵が多い。

 同時に残存敵の多さから10層がダンジョンの終わりではなかった事を示していた。


 牛男ブラザーズは至近距離から突進!

多くの者が仲間のモンスター共々中央の精鋭騎士達をを弾き飛ばしたのを目撃したのだった。

進撃の牛男

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