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63話 大賢者である私が深淵で微睡んでいる最中、戦いは始まった

 ウノユに今日も朝がやって来た。

 しかし今、都市は臨戦態勢の最中だった。

 原因は都市内に鳴り響いた鐘の音である。

 鐘の音5回。

 それを繰り返す。

 それは緊急事態の警報。

 つまり今回で言えば、スタンピードの発生意味する合図だ。

 いよいよウノユのダンジョンが大量のモンスター達を吐き出し、モンスター達が一斉にウノユの目指して侵攻し始めたのだ。


 ウノユを囲う防壁は石造りで高さもある。

 日の出直前、防壁上に設置された見張り台にいた見張りが、ダンジョンの方角の暗闇から蠢く気配を感じ取った。

 日の出前なので目視は難しいが、大量の鳥が飛び立ち、スタンピードの規模がかなり大きい事が伺い知れた。


 鐘を鳴らす見張り。

 その知らせを受けて、都市中の警報班が一斉に警鐘を鳴らす。

 あちらこちらで鐘が鳴り響く中、将軍が見張り台にやって来た。


 朝日が登り、将軍は朝日を浴びたモンスターの大群を見て絶句する。

 予想以上の大群だった。

 ウノユの防衛戦力は冒険者と他都市からの援軍混成軍700、精鋭騎士団300、都市警備100となっていたが、モンスターの大群は数万はいるだろう。

 大群すぎて把握しきれない。

 ざっと数十倍の敵だ。

 しかし、籠城は考えない。

 連携しないただのモンスターだったら、数の差を連携で埋めることが出来る筈だ。

 将軍は作戦通り打って出る決断を下した。

 そして、すぐさま騎士隊300の元に向かう。


 こうしてウノユ防衛戦が開始された。

 だが、将軍は知らなかった。

 スタンピードの恐ろしさを。


 防衛軍の作戦はこうだ。

 冒険者、他都市の援軍の混成部隊700名を2つに分け、

 精鋭騎士300と合わせて3部隊を編成。

 精鋭騎士隊を中央軍とし、将軍が指揮を取る。

 左軍は王自らが、右軍はリリー王女がそれぞれ指揮を取る事になっていた。

 そしてダンジョン方面の門を開き、討って出る。


 籠城は出来ない。

 都市の防壁は高く、モンスター達をやり過ごす事が出来るかも知れない。

 しかしその場合、モンスター達は何処に向かうのか?

 別の町や村に向かってしまうかも知れない。

 それではここに戦力を集結させた意味がない。

 モンスター達は此処で殲滅しなければならないのだ。


 門を開くのにも意味がある。

 かつて、アラバスタル王国プニョン領でもスタンピードが起きたことがある。

 その防衛戦でセバは『プニョンの鮫』という異名がつくようになったのだが、その戦いでモンスターは兎に角都市の内部に侵攻しようとする習性があることが判っている。


 だから都市の門 1っ箇所を敢えて開けることで、その門にモンスター達を引きつける事が出来る。

 後は門を囲むように3部隊で死守すればいい。

 

 突破されれば、モンスターに直ぐに都市内になだれ込み

 蹂躙され尽くすだろう。

 非戦闘員は教会など幾つかの拠点に避難することになっているが、生き残ることはないと思われる。


 背水の陣であるが、同時にモンスターを勝手に引き寄せる事が出来、防衛戦力を分散させずに済むメリットがある。

 敵の数は多く、怪我人も出るだろう。

 だから都市城門近くに治療班を配位し、負傷者を治療し

 再び戦場に送るというローテーション戦法も取れるのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーー


 モンスターの大群がいよいよ目前に迫ってきた。

 敵の先頭はダンジョンゴブリンやスケルトンが多い様だ。

 さほど強くは無いが兎も角数が多い。

 もうすぐ戦端が開かれるだろうという距離までモンスター共が迫ってきた時、将軍が声を張り上げた。


「近衛騎士達よ!この一戦に国家の存亡が掛かっていると心得よ!絶対にモンスターを抜かせるな。いいか我々は無敵だ!」


「「「「「「オオー!」」」」」」


 騎士達がその声に応で答える。


「盾隊構え!絶対に押されるなよ!」


 ガシャン!


 一斉に盾を構える音が起こる。

 流石に精鋭騎士達だ。士気も高く、統制が取れてる。

 集の強さなら3部隊の中では一番だろう。


「いくぞ!」


 中央部隊とモンスター群が最初に接触した。 


 ーーーーーーーーーーーーーーー


「皆!来るぞぃ!目にもの見せてやれ!」


 国王はオリハルコンのナックルを嵌めて、敵の中に飛び込んでいった。


「王よ!無謀が過ぎますぞ!」


 宰相が組まれた防陣の中で王を嗜める。


「なに大丈夫じゃ、この筋肉は鋼以上だわい」


 王はポーズを取る。

 王はただ無謀に突っ込んだけでは無かった。

 スタンピードのモンスターの習性を知っていたからの行動である。

 モンスター達は人間の生命を奪おうとする習性と、都市に目指す習性がある。

 ただし都市を目指す習性の方が強い。

 だから視界に入らない人間には目もくれないで都市を目指す。

 集団で連携することもない。

 だから囲まれていても王はさして驚異を感じないのだ。


 ーーーーーーーーーーーーーーー


「防陣は絶対に崩さないで! 交代する隙は私達が作るわ!」


 リリー王女達『青薔薇の戦乙女』+プレゼも防陣の外に討って出ていた。

 プレゼは両手持ちの棘付きの金棒を持っている。

『鬼のプレゼ』復活である。


「金砕棒の威力!とくと味わいな!」


 金棒を振り回し敵を粉砕していく。

 一撃で十分なほど致命傷を与える攻撃に、Dのゴブやスケルトンは光の粒になって消える。

 ダンジョンのモンスターだけに死体は残らない。

 足場を確保できるので戦い易いのも、スタンピードの防衛戦の特徴だった。

 

「プレゼと並んで戦うのも久しぶりね」


「まだまだ遅れを取らないよ!」


 彼女達の周囲には空間が出来る。

 序盤は押せていると言えよう。

 今は低い階層のモンスターが多いが、だんだんと下層のモンスターが出るだろうし、各層のボスも出てくるだろう。

 10層以下の敵が出始めた時どうなるのか。

 徐々に強くなっていく敵の大群にどこまで対抗できるのかはやってみないと判らないし、やらなくてはならない。


 リリー達はミルファとクーンを守るように戦っているが、その二人だってDゴブやスケルトンでは肉弾戦で遅れを取る事はない。

 魔力の消耗を抑えるため、二人も最小限にしか魔法や奇跡を使わない。


 一方派手にやっているのは宰相だ。

 宰相は遠方に向かって派手に最大級の火球を飛ばしている。

 着弾地点でこれまた派手に火柱が上がり、火球群を周囲に飛び散ちらさせる。

 そして、飛び散った火球がモンスター達に襲いかかった。

 効率よく効果の高い魔法を選択し、味方の被害を考えないで良いモンスターの密集地点を爆撃していくのは流石であった。

 宰相一人で遠方の敵を100体は屠っただろう。

 しかし、モンスター達は全く怯むこと無く都市を目指す。

 戦いは始まったばかりだ。

 スタンピードへの緊張や、雰囲気、喧騒に呑まれ、誰一人としてミリーが居ない事に気付かないのだった。

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