59話 大賢者である私と受け継がれていく想い
サブタイ変更しました。
現在落下中〜!という事はない。
私が使った
集団転移魔法『世界をつなぐ落とし穴』は
せいぜい落下高さ2m程、一瞬の出来事だ。
怪我をされてもメンドイので、着地地点はクッション付という親切設計。
そしてちょっと楽しい仕掛けが施されている。
ちなみに転移ポイントはウノユの都市の近く。
例によって都市の中ではメンドウな事になりかねないので都市の外に転移した。
私は仕掛けた本人なので華麗に着地する。
リリー先輩、カリスも転ぶことも無くきちんと着地した。
流石に2人は体幹がしっかりしてるね。
サファたんの護衛の団長さんも事もなげに着地。
ミルファもよろけながらも転ぶ事は無かった。
へー、意外だ。
しかし、クーンと不意をつかれたサファたんは、着地時のクッションの感触が予想外だったのか尻もちをついてしまった。
二人のお尻から
「ぷ〜」、「ぷぴ〜」
可愛らしい音が同時に鳴った。
数秒の沈黙。
事態を飲み込めていない皆。
ふ! この状況を理解出来ているのは私だけさ。
やがて徐々に顔を真っ赤にしていく二人。
「あらカワイらしい」
わざとらしく言ってみる。
「な、ななな、なにこれ!!」
「こ、これは私じゃありません!」
フッ!
フフ……フフフ……フハハハハハハハ!
やった!
ついに、ついにかかったぞー!
私は表情こそ平静を装っているが内心は狂喜乱舞だ。
お気づきの方もいるかもしれないが、この転移魔法に組み込んだクッション機能はお尻での着地を感知すると、なんと!
大きな可愛らしい音を鳴らすのだー!!!
決して誤魔化す事が出来ない音質と音量を私は研究を重ね生み出したのだ!
我ながら悪趣味なイタズラだと思うけど、このイタズラを仕込む為だけに落とし穴で転移というメンドクサイ仕様で作られた魔法。
それが、集団転移魔法『世界をつなぐ落とし穴』なのだ。
だから普通に集団転移魔法させるより消費魔力が大きかったりする。
だがしかし、私に悔いはない。
作り出して良かったと思う。
私はかつて私が味わった屈辱を思い出していた。
勇者アヤメは〝イタズラ好き〟というお茶目な一面を持っていた。
そして私はアヤメが仕掛けたおならの音が鳴るクッションというトラップに掛かった。
「あら可愛らしい」
アヤメのしれっとしたセリフに顔を真っ赤にして抗議したのは、今でも悔しい思い出なのだ。
私は仕返しの為にこの魔法を作った。
しかし、虚を突いた落とし穴にアヤメがかかる事は無く、逆に判っていたはずなのにうまく着地できず、自分が音を鳴らす結果になった。
その時のアヤメの表情を今でも思い浮かべることが出来るし、思い出すと顔が赤くなるのだ。
この魔法は一生忘れる事ができない屈辱の魔法でもあった。
しかし、今生での私はバリッバリの武闘派。
体幹もしっかりしており、3回転ひねりして着地なんて芸当も魔法を使わずに出来るのだ。
そして、今日只今、私の心は晴れやかになった。
今だから判る。
アヤメもきっとその昔に悔しい想いをしたに違いない。
そう、クーンとサファたんもこの悔しい想いをきっと次の人に伝えていくのだろう。
こうして、この想いは脈々と受け継がれていくに違いないのだ。
人類が滅びるその日まで。
「ミリー、貴女。なんだが憑き物が落ちたように清々しい表情をしているわ」
リリー先輩がどことなく呆れた表情している。
ま、気づいていても、そうで無くてもどちらでもいいけどね。
「うん、聖女様の聖なる音に心が洗われたよ」
「!! ミリー様!」
真っ赤な顔を更に涙目にしたサファたん。
ちょっと可哀想かな。
アヤメもこんな風に罪悪感を持ったのだろうか?
この切ない気持ちもきっと受け継がれていくのだろう。
コレが罪と罰というヤツ?
カワイイ音の先にこんな哲学が広がっているとは人生何が起こるか判らないものだねぃ。
たとえ万人が悪鬼だの鬼畜だのと批難したとしても、私は満ち足りた。
人はこの様な醜い想いを持っているものなの。
私は聖女でも聖人君主でも無い。
ミリーシアタという名の15歳の女の子なのだ。
人よりほんのちょこっと不思議な力が使えるだけ。
これが等身大の私なのだ。
『オトプレちゃん』
『マスターお呼び?』
『うん、〝世界につながる落とし穴〟は永久封印ね。あと〝妹の方〟に載ってるのも封印しておいて』
『満足したのね。了解したわ』
うん満足した。
こんなメンドウな転移魔法を使わなくても普通の集団転移魔法持ってるし。
この魔法の役目はたった今終わった。
『そうそう、その私の妹〝写本〟だけど、そろそろ自我を持つわよ』
『あ、そうなんだ。3重詠唱が出来る日も近いね。写本の写本が必要かしらん』
『自我を持つのにあと2年、実用LVになるのに更に3年はかかりそうね』
『じゃ、今は考えなくてもいいよ。それよりもオトプレちゃんに頼んでいた例の件』
『転生の準備の件ね』
『あれ、中止ね。魔王殺っておかないと未来ないわ』
『まぁそうね。戦闘モードに移行する?』
『うん。制限をまた幾つか解除するよ。2重詠唱出来るようにしておいて』
『なるほど、ね』
『理解が早くて助かるよ。今日から札作りするからね』
『あれやるのね。何枚作るつもり?』
『出来る枚数』
『了解。相変わらず人使いが荒いマスターだわ』
『生き残るためだよー』
『そうね、マスターが消えたら私も消滅する。微力を尽くすわ』
『謙遜しちゃって。まあオトプレちゃんだけこの世に残す訳にいかないでしょ。ある意味魔王より危険だし』
『自覚あるわ。だけど私の新たなマスターはもうこの世界には生まれそうも無いわね』
『うーん、この世界の今の有り様も魔王の陰謀かな?』
『そう考えた方がいいわね』
『手段はわからないけど人類の弱体化を図った』
『たやすく支配する為にね』
『気の長い作戦だね』
『時間の感覚が違うのでしょ』
『なるほどね。じゃ、後でよろしく〜』
「ミリー、難しい顔してどうしたの?」
リリー先輩が心配そうに私を見ていた。
「あ、何でも無いよ。都市に入ろうか。セバっちゃんも待ってるでしょ」
私達は気を取り直して、ウノユの冒険者ギルドに向かうのだった。
補足
サファの侍女メルや他の一行は
事情が事情なので王都で待機中である。
また、事情を知っているのはメルだけだ。
それにしても
ロゼシアスタって相等の暇人だね。




