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55話 大賢者である私の真面目モード1と、リリー達の戦い

1万ユニーク突破しました。

この場を借りて御礼申し上げます


 ダンジョンに戻って来た私。

 先行したオトプレはリリー達を見つけたかしら?

 私がダンジョンに入ろうとした時、ダンジョンを閉鎖していたギルド職員が話掛けてきた。

 私達は魔法陣から急に現れた訳だけど、セバが一緒にいるのでそこまで警戒していないようだ。


「セバ様、コレは一体?」


「緊急事態です。貴方がたは直ぐに退避を。事態Xの恐れありと直ぐにギルドに伝えるのです」


「X! それは本当ですか?」


「本当です。急ぎなさい。時間が勿体ない」


「了解であります!」


 事態Xとはスタンピードを指すのだろう。

 ギルド職員達は青い顔で急ぎ都市へ戻って行った。

 私達がダンジョンに入り暫く進んだ所でオトプレから報告が入った。


『マスター、発見したわ。第3層のボスの間よ』


『判ったわ。位置を教えて。貴女はそのままサポートを』


『イエス、マスター』


「リリー達を発見したわ」


 私は魔法陣を出す。魔法陣の中にはリリー達がボスと戦っている様子が写し出される。


「このダンジョンは何層まであるの?」


「最奥とされていたのは10層ですな」


「3層のボスで悪魔が出る事は?」


「聞いたこともありません。あれが悪魔ですか」


「ええ、レッサーデビルよ。これは急がないとね」


 レッサーデビルはインプなどの小鬼を召喚してくる狡猾で割と面倒な相手だ。


「先程の様に飛べないのですか?」


「これはオトブレが見ている光景を映しただけよ。私自身が行った事がない場所には飛べないの」


「急ぎましょう」


「待って、急ぐの意味が違うわ。少し時間を頂戴」


「判りました」


 私は先に進もうとするセバを引き止め、私達の位置とリリー達の位置の方向、距離の計算を始めるのだった。



===============


「なんなのコイツ?」


 リリー達は見たことも無いボスに苦戦していた。

 人型で緑の肌にコウモリのような顔、下半身には黒い毛生え、脚は羊の様な蹄、背中にはコウモリの羽が生えている。

 目は白目も黒目も無く真っ赤であり、額に2本の短い角が突き出していた。

 また、額には角の他にもう一つ、第3の目がある様だが今は閉じられている。


 そのリリー達にとって初見のボスの周りに数多くの黒い球が出現する。

 黒い球はやがて形を作り、子鬼(インプ)となった。

 召喚された子鬼達は一斉に飛びかかって来た。



「また、子鬼共を召喚してきた! クーン頼む!」


 カリスの短剣はボスを捉えた筈なのに攻撃が素通りする。


「くそ! 虚像か!」


「カリス屈んで!」


 ミルファの声にカリスが屈むと、頭上に鋭い爪が突き出された。

 ミルファにはボスのまやかしが通じない。

 かつてミリーの変装も見破ったのだ。

 それはミルファが『真実の目』の奇跡を使っているからだが、残念な事にミルファは仲間にその奇跡をかけることが出来ない。


「うわ!危な!」


 屈んで攻撃を躱したカリスはそのまま横に転がり、追撃を避ける。

 そこにリリーの突きがボスに繰り出されるが、身軽なバックステップで躱されてしまった。


「ミルファ! 手伝って!」


 クーンが無数の無属性攻撃魔法『光弾』を飛ばし、子鬼達を撃退している。

 未知の敵には無属性魔法がセオリーだが威力は落ちる。

 それに子鬼も 火属性魔法『小火球』を飛ばし反撃してくるのだ。

 飛んでくる火球の数が多く、クーンが如何に優秀な魔道士とは言え、火球や小鬼の攻撃を避けながらでは捌ききれなかった。

 ミルファのメイス攻撃が加わり、なんとか子鬼達を撃退する。


「どうやら聖属性が有効みたい」


 ミルファのメイスは聖属性が付与されたダンジョン産だった。

 掠っただけでダメージが入る様子からの判断だ。


「皆、ミルファを守るわよ!」


 聖属性が有効となれば、ミルファの奇跡が切り札となる。

 ボスはリリー達から距離を取ると再び子鬼群を召喚。

 今度は距離を取り、小火球魔法による遠距離攻撃メインでくる様だ。

 聖属性武器持ちがいると判明し、距離をとって弾幕を張ることにしたのだろう。

 リリーにミルファのメイスが渡されたら厄介である。


「くそ! 何回目だよ!」


 カリスが何度も何度も召喚される子鬼に毒づく。


「アンデッド以外の3悪属性なんて初めてね。大当たりなのかしら」


 リリーも毒づく、まさか3層目でこんなにも苦戦するとは。

 ダンジョンの異変に関係有るかも知れない。


 クーンは敵の属性が判明したことで、敵に関し思い当たる事があったが確信は持てない。

 だから発言は控えた。

 皆を徒に不安にさせることもないだろうから。


 ミルファが『退魔』の奇跡を使うべく、祈りを開始する。

 聖属性が有効だとすれば、子鬼の属性は闇・邪・魔のどれかという事になる。

(先程、リリーの発言にもあったが、その3つの属性をまとめて3悪属性と呼ぶ。)

 その子鬼を召喚出来る存在となれば、ボスの属性も恐らく同じだ。

 クーンはそう考え、使用魔法を上位風系魔法『風爆』に切り替えた。

 クーンは光・聖の属性魔法は持たない。

 光・聖属性の魔法は現代に伝わっておらず、魔法が存在している事も知らなかったのだ。

 3悪属性に適した属性はではないが、風系は無属性よりはダメージが通るだろう。

 それに風系魔法はそもそも視認し難い。

 そこが付け入る隙だ。

 そしてクーンの魔力をかなり削る、切り札の一つでもあった。

 上位魔法を多数使えるクーンは当代稀有の魔道士だといっていいだろう。


 クーンの呪文詠唱からその意図に気づいたカリスが武器を弓に持ち変えた。

 エルフの里を出る以前より愛用している聖樹の枝で作られた小弓だ。

 それに気づいたリリーも一人前面に出て子鬼達の遠距離攻撃を耐える。


「スキル『聖騎士の盾』発動」


 これはリリーの防御系スキルでクーンとカリスが必殺の技を放つ時、目くらましとして敵視を集める為に使うリリーのとっておきだ。

 このスキルを使われると、敵の攻撃は強制的にリリーに集められてしまう。


 リリーの剣はダンジョン産だが残念ながら属性付与の無い剣だった。

 だから、リリー自身は有効打を決めれないだろう。


 しかしその剣は鑑定しても判らない謎の金属だった。

 白く輝き、ミスリルよりも軽い。

 錆びず、刃こぼれせず、切れ味が落ちなかった。

 鑑定で判ったことはSSSレアという事と、目が飛び出るほどの鑑定価格だったという事だ。

 見た目が聖騎士を連想させる剣と拵(刀装)であった為、リリーは愛用していた。


 盾もまた『聖なる盾』だ。

 リリーは聖騎士になる為に聖王国まで出向き、正式に聖王国の教会にて儀式を受けた。

 リリーが他国とは言え友好国の王女であった為、リリーの為に贈られたのが聖なる盾だ。

(政治的意図が合ったことも否めない)

 その盾はミスリル製で古の聖者の祝福を受けている。

 貴重なものだが、聖王国の教会はその様な祝福された盾を多数所有していた。


 因みにその祝福を授けたのは、ミリーの前世では実姉である聖王国王女だったが、今の世にはそこまで伝わっていない。


 リリーは盾を全面に押し出し、子鬼達が放つ小火球の猛攻に耐える。

 じわじわHPが削られていく。

 リリーの苦悶の表情をボスは歪な笑みを浮かべて眺めている。

 猛攻に耐えきれなくなって、なす術なく、人間どもの作戦が崩れて行く様を見たくて傍観しているのだ。


<見てなさい! その油断が命取りよ!>


「聖なる光よ邪悪なる者を退け給え!」


 ミルファの声と同時にリリー達とボス達の中間で眩い光が弾けた!

 強い光だがこの聖なる光は3悪属性の者だけに効果を発揮し、リリー達には不思議と眩しくないのだ。

 逆に、ボスは眩しい光にダメージを受ける。

 ボスのまやかしもまた光に消え、ボスの位置がリリー達にははっきりと確認できた。


 子鬼達は光に焼かれ、やがて飲まれて消えた。

 光が収束する前にリリー達は仕掛ける。

 リリーがスキルを解き、しゃがむ。

 今までリリーがボスの視覚を塞いでいたが、リリーの背後にはカリスが居て弓を構えていた。

 矢はミスリルの矢。

 カリスのとっておきだ。

 カリスの矢は一直線にボスに胸に飛んでいく。

 光が収まる前に放たれた矢をボスは躱す事が出来なかった。

 光に邪魔され体が動かないからだ。

 ボスの胸に突き刺さる矢。

 刹那、ボスの胸がボコンと凹み

 その周囲は無数の風の刃に斬り刻まれる。

 カリスの矢はクーンの上位魔法『風爆』を纏っていたのだ。

 そのダメージに流石のボスも堪らず額の第3の目を見開いてしまった。

 矢が放たれたと同時に盾を捨てたリリーが飛び出していた。

 リリーは瞬時にあの目は弱点だと思った。

 光は収まったと同時に間近に接近しているリリーの剣にボスは成す術が無かった。

 矢の攻撃により体はボロボロで反応出来ない。

 そしてリリーの剣はボスの第3の目を貫いた。

 ボスは言葉を発することもなく黒き闇となって消えた。



「やった・・・・・かな」


 全員その場にへたりこむ。

 まさか3層目で総力戦を行う事になるとは思わなかった。


「これ以上は無理だわ。少し回復させて」


 クーンが戦闘できる量の魔力がもう無いことを告げる。

 手持ちのMPポーションもこの戦闘で使い果たしていた。

 何とか倒したものの、皆傷や火傷を負っている。

 特に一身に攻撃を受けたリリーのダメージは軽くはない。

 戦闘が終わり平静になると、受けたダメージがじわじわとリリーを苦しめる。

 苦しそうなリリーを助け起こしたカリスが肩を貸してミルファの元に連れて行く。


「ミルファ、リリーを頼む」


 そのミルファもまた先の『退魔』の奇跡により多くの力を費やし、立てないでいた。


「はい、直ぐに」


 ミルファも手持ち最後のMPポーションを飲み、気力を振り絞って立ち上がる。

 一箇所に集まったメンバーはミルファ以外、皆座りこんでいる。

 特にリリーは喋れない程にダメージを受けていた。


 激しい戦闘から生き延びた事でリリー達は重要な事に気づかなかった。

 ここはダンジョンで階層ボスを倒したならば、宝箱が出現する筈だ。

 しかし今、この場に宝箱は出現していない。

 そしてボスの間の入り口と出口の扉が閉まったままの事に。


「リリー、こんなになって…有難う」


 ミルファが感謝の言葉を伝え、回復の祈りを始めたその時、ボスの居たところから禍々しい気配がした。

 ミルファが振り返った時、そこには誰もいなかった。

 しかし、確実に何かがいる。

 先程のボスより強大で禍々しい何かが。

 よく見ると床にボスの影だけが何故か残っていた。

 その影が盛り上がり、やがて人の形になった。

 青い肌をした人間のように見えるが、顔はヤギと人間の顔を足して2で割った感じで瞳孔はヤギの様に横に長い。

 頭からはヤギの角が生え、下半身はそれこそ影だった。


「頑張りましたねぇ。とてもよく戦っていらした」


 その声はのんびりとした口調でありながらとても恐ろしかった。


<コイツには万全であったとしても勝てない>


 そんな気配を感じ取り、絶望する一同。


「いいですねえ、実にイイ!生還の安堵から絶対死の絶望!それを見たいから頑張ってもらったんですよー。貴女方は実にイイ魂の叫びを発する」


「…………」


 恐怖と絶望で何も発する気力もなくなった。


「おやおや、折角話かけているのに無視でですか?寂しいですねぇ。貴女方が戦っていたのは実は私が召喚した手下でしてね」


 そう言ってパチンと指を鳴らすと、先程苦戦したボスが複数出現した。

 更なる絶望の表情に満足した真のボス。


「という訳で真のボスはこの私だったんですよー。貴女達があまりに必死で私は影で笑いをこらえるのに必死でしたよ」


「……もういいでしょう。止めをさしなさい……」


 気力を振り絞ってミルファが声を絞り出す。


「ぷぷぷ!そんな弱々しい声でなんと気丈な言葉を。あまりに滑稽で嬉しくなりますね。このまま遊ぶのも一興ですが実は時間が余り無いんですよ。この後もっと楽しいお祭りが開催されるものですから。貴女がたと違って、抵抗も出来ないか弱き者達の断末魔をいっぱい聞けるんですよ。ゾクゾクしますね」


「何を!」


 その言葉に反応したのはリリーだが声は弱々しい。

 そんなリリーの声に耳を貸すこともなく男は続ける。


「貴女方はお祭のセレモニーとして生贄になって下さい」


 そう言うと男は手の平を突き出す。

 男がブツブツ呟くと、巨大な火の玉が出現した。

 コレが放たれればリリー達はひとたまりもない。

 4つの焼死体の出来上がりである。


 焼け焦げているであろう冒険者タグよりリリー達であることは判るだろうが、男が言う祭りが開催されれば それを確認出来る冒険者はやって来る事はない。


 自分たちの命を奪う巨大な火球を絶望の目で見つめるリリー達。


「では、お疲れ様。さようなら」


 男のねぎらいの言葉と同時に火球が放たれたのだった。

いいのか! こんな真面目な展開で?


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