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43話 大賢者である私はドワーフに会う

「上手くいったな!」


 ここは人気の無い路地裏。

 2人の子供がいる。

 男の子と女の子共に10歳くらいだろうか。


「はいコレ!」


 そう言って、女の子が男の子に革の袋を手渡す。

 財布としてよく使われている物だ。

 先程、ボーとしていた冒険者から得た戦利品である。

 手口は単純。

 冒険者は財布をウエストポーチにしまっている事が多い。

 冒険に必要なアイテムを直ぐに取り出せる様にする為だ。

 そこで男の子がわざとターゲットに当たり注意を引く。

 その間に背後から女の子が、ウエストポーチ内の財布を抜き取るのだ。


 下手をすると子供とはいえ、ただでは済まない。

 しかし、2人は慎重に人を選んで行っていた。

 ここは冒険者に事欠かない。

 2人は孤児院にいるが育ち盛りの2人には、食事の量が少なかった。

 だから、2人は財布を盗んでいたのだ。


 2人には罪悪感は無かった。

 孤児院に引き取られる前から、生きる為にやっていたことだったから。


「今日のは楽勝だったな」


 男の子が受けとった財布の中身を確認しようとした時、異変が起こった。

 袋が光ったかと思ったら、光の粒子になって消えてしまった。


「なんだ!?消えた!」


「不思議!でも綺麗だった」


「くそ!今日は昼飯抜きかよ!」


 1日に1人。

 これは2人が決めた絶対のルールだった。



===============



 防犯魔法『見守り隊』と『身代わり君』


『見守り隊』は、対象者の身につけている物が盗まれる(第3者が手に取りその場から離れる)と『身代わり君』を発動する魔法。

『身代わり君』はその名の通り、盗まれた物とダミーを入れ替える魔法だ。

 そして入れ替えられた物は、私の『エルオスの無限バッグ』内に入るのだ。


 今回、リッキーにもかけていたけど、本来は私個人専用魔法なのでリッキーの財布も無限バックの中に入ってしまったのだ。


「どうして僕の財布が?」


「さっきぶつかってきた子達に、スられるところだったんだよー」


「ええ?」


「人の多いところでは気をつけないとだね。子供相手でも油断は禁物だよ」


「ミリー有難う。気をつけるよ」


「どういたしまして。それでリッキー、まだ時間あるし、どうする?」


「服も買ったし、アクセサリとかはどうかな?」


「リッキー冴えてるね!是非お願い」


「うん。じゃぁ、行こうか!」


 こうして私達はアクセサリを見て時間を潰したのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーー



「お待たせー!」


 皆は既に集合場所に集まっており、私とリッキーが最後だ。

 ジっちゃんには此処で商売をしている兄がいて、今日は教会へ荷物を届けた後、兄への商談に入るとの事だった。

 場合によっては数日かかるらしい。

 荷馬車で持ち込んだ物を売るのかな。


「へぇ、馬子にも衣装とはよく言ったもんだ」


「ムッツリ、諺しってるんだね。意外意外」


「ムッツリーじゃねー!あと俺は結構博学なの!」


 いつものお約束。

 そしてムッツの意外な一面。


「ミリー様」


 セバっちゃんの目が怪しく光る。


「な、何かな?」


 嫌な予感しかしない。


「そのリボン。似合っていますよ。リッキルト様に買って貰ったものでしょうか?」


 ヒュウ〜♪


 さっきの仕返しとばかりに口笛をふいて茶化すムッツ。

 セバめ!なんて目敏いんだ。


「う、うん。ミリーにスリから守ってもらったから、お礼も兼ねて、服に合わせて白いリボンをね。似合うかなって」


 リッキーがまたもや顔を赤くしながら説明してくれた。


()()()! だった訳ですね。それは楽しゅうございましたな」


 セバー!わざと2人きりにしたのはこうやって誂う為かー!

 悪趣味ジジイめ!


「デ、デートだなんて!そんなだいそれたものでは!」


 リッキーは更に顔を真っ赤にして両手を振って誤魔化そうとしている。


「うん、まぁデートかな。ダンジョン饅頭もおごって貰っちゃった」


「え!」


 固まるリッキー。

 ここは、私も乗っかって、リッキーに犠牲になって貰おう。

 私はそう思いつつも諸悪の元凶セバっちゃんを睨む。


「私の数少ない趣味でして」


 そう言ってセバっちゃんは恭しく一礼した。

 嫌な趣味だ!


「ミリーの信者に気をつけろよー?」


「実力者も多いとかの噂ですからね。リッキー」


「そうそう、あのソードマスター、ブレイドも信者って話だからなー」


「幼馴染が真っ二つなんて勘弁して下さいよ?」


「皆集まったし、ギルドに行こうか!」


 ムッツとレトリーに誂われていたリッキーは、話題を変えたのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーー



「ビフテと違ってこの時間でも賑わってますね」


 レトリーの言うとおりだった。

 流石ダンジョンで栄える都市。

 お昼前にも関わらず、ギルド内は冒険者でごった返していた。


「私、外で待ってていいかな?」


「そうですな、そのスカートでは踏まれて危ないでしょうね」


 セバっちゃんが私の言いたいことを代弁してくれた。

 こういう時は便利なバディである。


「今!私のことをバディと!」


 感激の涙を流すセバっちゃん。

 嘘っぽい、あと思考読むな!


「うん。わかった、少し待っててね」


 リッキー達は中に入っていった。


 この都市では私の顔を見てG様とぬかす変態共はおるまい。

 空を見上げて、ふう、と息とつき、視線を戻した時、一人の男と目が合った。


<げ、げげ!コイツは!いつもの変態!>


 ギルドで診療所を開くと、必ず怪我もしてないのに並んでくる変態だ。

 見た目は中々いい線言ってるのに残念な男。


<何故!何故此処にいる!>


 男はこちらに近づき<来るなー!変態!>、私の前で跪いた。<終わった…>


「G様!いえグレートマム。こんな所においででしたとは。そういえば、さんざんご褒美を頂きながら、自己紹介しておりませんでしたね」


「奇遇ですね。でも自己紹介は不要です。こんなところで不用意に名乗るものではありませんよ?」

(他人行儀モード発動中)


<ご褒美とかキモい!紹介いらんし、とっとと去ね!>


「お心遣い感謝します。これでも有名人ですので大丈夫です。私はブレード Aランクパーティー『G様親衛隊』の一応代表をしています」


<は!? じーさましんえいたい? 何それ?>


 事実に思考がついていけず、頭の中が真っ白になってしまった。


「とりあえず、恥ずかしいので立って下さい…」


 立ち上がる変態(ブレイド)


「変な組織作ってんじゃねー!!」


 気がつけば、思わずいつものようにハイキックをカマしていた。

 ロングスカートでも蹴れるものだね。新たな発見だ。


「はう!見えそうで見えないのがまたイイ!」


 恍惚の表情を浮かべる変態。

 変態の発言は耳がシャットダウンしていたので私には聞こえ無かったけど、どうせ変態発言なので気に留めなくていいよね。

 問題なのはおかげで目立ってしまった事だ。


「あのブレイドが蹴りもらったぞ!」


「G様とか呼んでたな。って噂のG様、グレートマムか?」


「あのちびっ子がか?」


「お前ら!G様に無礼だぞ!」


 頬を腫らした変態が周囲の暴言に怒りをぶつける。


<やめろー!変態!!騒ぎを大きくするなー!!あとG様と呼ぶなー!>


 とりあえず蹴った事実を消すため、即座に回復させよう。


「は、G様!回復の奇跡を下さり、感謝の極みです」


 こちらの向き直り最大角度で頭を下げておじぎする変態。


<余計目立つだろーがー!>


「お主ら!ギルドの入り口で何やっとんじゃ?」


 見れば、樽っ腹の小さなお爺さんがいた。


「ぬ、お主ブレイドじゃないか!」


「む?タルビアか!」


 どうやら2人は知り合いの模様。


「お主、幼女とは言わんが、お子様趣味じゃったのか。こんな白昼堂々と、ほどほどにしろよ?」


 カチーン!


「お子様じゃない!この樽っ腹チビジジィ!」


「なんじゃと!小娘が!わしゃまだ30歳。ヤングマンのドワーフじゃ!!!」

最後にようやくサブタイに追いついた。 ホッ。

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