42話 大賢者である私は都市観光する
いやー賑やかな都市だね。
決して大都市ではない。
でもダンジョンよりもたらされる宝の恩恵か、ダンジョン目当てで冒険者が集まる為か、その両方か、何にせよ活気があるのだ。
私達はジっちゃんを教会に無事送り届け、今回の依頼を達成した。
新ポーションの件もここでなら、あっという間に広まるだろう、むふふ。
あとは時間を潰して帰るだけなんだけど、ジっちゃんはこちらでまた商品を満載にして帰るとの事だから厳密には依頼の半分を完了したというところだね。
それはそれとして、折角はるばるウノユまでやって来たんだし、やっぱここは観光だよねー。
事前調査によると、ここの名物はダンジョン饅頭らしい。
(調査はオトプレちゃんが呆れながらやってくれた。)
それと、それに此処にたどり着くまでにボロボロになってしまった服も新調したい。
てっきりキョロキョロしまくっていた3人の様子から観光するものと思っていたら期待が外れた。
「僕たちはギルドに行こう!」
リッキーは意気揚々とそんな事を言い出したのだ。
まぁさ、リッキーはロングソードを手に入れたから、颯爽とギルドに顔出したいのかもだけど。
「そーだなー。なんかここなら美味しい依頼あるかもだな」
「ええ、ジっちゃんとの相談になりますが、帰りまで余裕があるならダンジョンにも行きたいですね」
まったく 3バカがー!
乙女心を全くわかってない。
実にケシカラン連中だ。
「ねぇ、リッキー」
「ミリーどうしたの?」
「私、服探したいな。ちょっと恥ずかしくて」
恥ずかしそうに顔を赤らめて見せる。
女優顔負けの私の演技にリッキーは顔を真っ赤にした。
こんな事言わせるな! まったく。
実は、このボロボロの服。
今回の依頼に合わせて新調したばかりの冒険者に人気のブランド「ユニシロ」だった。
お手頃価格で3倍タフなのが人気のブランドだ。
しかし今回あまりにハードモードな旅に、私のミニスカートは破れてスリットが入っている状態。
何故ミニスカかって?
ハイキックするために決まってるじゃん。
魔法で元通りにすることは出来る。
そもそも、状態保存付与をして、傷つかない様にすることもできたが、それを敢えてしなかったんだよね。
金銭に余裕のある私の今の楽しみは、ショッピングと食事なのだ。
ということで、この都市で服を買いたかった。
「ユニシロ」の次は「自ー由」ブランドの服にしようかな。
それもできればイケメンのエスコートでね。
ナンパしちゃおうかしらん。
そして私がギルドに行くのに消極的な最大の理由。
忘れてはいけない!ギルドにはそう!ヤツがいる!
「ええ、おりますとも。マイバディ」
でたー!
出るだろうという予感があったがやっぱ出た!
突然現れ、思考を読む異能者っぷりは到底人間とは思えない。
実は悪魔だね、きっと。
「セバっちゃんも来てたんだー!やーびっくり!奇遇だねー」
「白々しいですな。前もって伝えてあるでしょう。一向にギルドに見えられないのでこちらから出向きました」
「へー そうなんだ。よくここがわかったね」
セバっちゃんは広場の時計塔を指差した。
いや時計塔の屋根か。
あの上で私達を探したの?
セバっちゃん、ホントアンタ何者?
ナントカ教団の暗殺者でも悪魔でも驚かないよ、もう。
「あと、私は人間でございます」
嘘っぽい。
ホント思考を読むのはカンベンね。
「セバさん。少し待ってもらってもいいですか?」
お?
リッキーが改心した?
「待つも何も皆様と合流できれば問題ございません」
「それなら折角ウノユに来たんだし、やっぱり先に自由行動にしようかなって」
「おう!折角きたし、俺も弓見てこようか」
「魔道士協会にいってみます。いいスクロールがあるかも知れないですからね」
「じゃあ2時間後、ここ集合にしよう」
こうして、暫し自由タイムとなったのだ。
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リッキーと2人で歩いている。
ホワイ?
そしてセバっちゃんは居ない。
自由行動タイムになった後、自然とリッキーが横におる。
そんなリッキーの様子を見たセバっちゃんは、
「青春とはいいものですなぁ」
と遠いところを眺めて何処かに消えたのだった。
「リッキー付き合わせてゴメンネ」
「いや、こっちこそ気付かないでごめん」
リッキーはそう言って何故か顔を赤くした。
かわゆいのう。
「リッキーも武器屋とか、行きたい所があるんじゃないの?」
「運良くロングソードも手に入ったし、次は防具と言いたいところだけど予算がないから見るだけになっちゃうよ」
「まぁ、服と違って防具はね」
「うん、狙ってるハードレザーブレストでも銀貨2枚するから」
「2万Gもするんだね」
私のギルド口座にはフェルたんを救った報酬100万Gに加え、治療の報酬の取り分が12万G以上ある。
あの小さい街で短期間に2000人以上治療した計算だ。
因みに治療費100Gは銅貨1枚ね。(取り分は1人当たり60G)
リッキーに防具くらい買ってあげることは容易い。
でもリッキーのプライドを傷つけるだろう。
きっと表面上は兎も角、心から喜んではくれない。
男のプライドを傷つける女ってどうよ?
だから応援するよ。
頑張れリッキー。
あ、『自ー由』に着いた。
「さて、服新調しちゃうね」
「うん、僕もシャツ買おうかな」
「よーし、突入!」
ーーーーーーーーーーーーーーー
「じゃーん!」
試着室から出たきた私。
思い切って普段グレー系が多い私のイメージを変えるべく、今回は純白です。
そうです白です。
驚きの白さです。
そしてロングスカートなのです。
故に清楚です。
おしとやかなお嬢様ですよっと。
聖なるオーラも出しまくりです。
イケメンにナンパされてしまいそう。
そして、脂ギッシュなオッサンにナンパされた悪夢な記憶を上書きして下さい。(切に願う)
ヒーラー = 白
安直ではある。
しかし、世界がそれを求めて止まないのであれば、その期待に答えるのも美少女たる私の宿命と言うやつなのだ。
出てきた私を見たリッキーは顔を赤くして、ただただ無言だった。
「どう?」
「う、うん。…いい。凄くいいよ!」
「リッキーがいいって言ってくれるならコレにしようかな」
既に何着か決定した服あり、この服で打ち止めの予定。
とは言え白は汚れやすいから魔法でコーティングしよ。
リッキーも興奮して絶賛してくれたしね。
(あっさりポリシー変更)
リッキーもシャツを買っていたけど、サイズが判っているからと試着もせず、しかも地味なのを買っていた。
たまには赤とか似合うと思うんだどね。
会計は冒険者タグを見せるだけ。
しっかりしたお店はこれで冒険者口座から引き落とし決済してくれるのだ。
(マイナス決済はギルドから鬼の催促が来る。借金回収なんて依頼もあるのよ)
一応財布も持ってるけどね。
今回の会計が1200Gくらい、リッキーは厚手のシャツ3枚で150Gだ。
こうして考えると治療費100Gって割と高いのね。
お店を出てきた私達だけど、時間はまだ1時間もある。
私は純白清楚なお嬢様になってる。
この服で少し歩いたら目立って仕方がない。
皆が私を見ていくのだ。(ちと恥ずい)
リッキーはずっと顔が赤い。
さっきからリンゴのように顔を赤くしてばかりだね。
熱でも出たんじゃないかしら。
「あ、プラドAがある!」
500年前にもあった高級ブランド店だ。
敷居が高いので入りはしないけど、店頭のショーウィンドウに展示された服はカッコよかった。
しかし。
「う、6万G!」
リッキーがその価格に固まった。
まあ、そうだろうね。
昔の私が『エルオスの無限バック』に支払った、ブランド使用料の価格教えたら、きっとリッキーは泡を吹いて倒れるに違いない。
はっきり言えば買える。
でもそれをするとパーティーで浮く。
だから今は「ユニシロ」や「自ー由」でお手軽ファッションをするのだ。
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「高いねー!ま、行こうよ」
ミリーはそう言ってこの場を去ろうとした。
「うん」
でもこのお店の名前を呼んだ時の嬉しそうな声。
服を見た時の憧れの目。
ミリーはきっと欲しいんだと思う。
<いつか、ミリーにこれくらい買ってあげれる男になりたいな>
ドン!
何かにぶつかった。
みれば少年だった。
10歳くらいだろうか。
「痛てーな!オッサン!ボーっと歩いてんなよ!」
「あ、ああゴメン!」
少年は去っていった。
「リッキー」
ミリーがのんびりと声をかけてきた。
「どうしたの?」
「ハイこれ」
と言ってミリーが手渡して来たのは僕の財布だった。
タイトルに反し
観光… してないですね。




