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38話 大賢者である私をいろんな意味で狙っている姫騎士の陰謀

 いつの間にか朝。

 どうやら、いつの間にか寝てしまったみたい。


「ここは?」


 私、リリエナスタはベッドの上で目を覚ました。

 何処かの部屋?

 隣には…誰もいない。

 服に乱れもない。

 ふう、スキャンダルなんてことは無いようで一安心。


 部屋を改めて見回したところ、ビフテの高級宿の私の部屋のようね。

 昨日、ミリー達と飲んでミリーといい感じに話をして…そこから記憶が無い…ね。

 私どうやって帰ってきたのかしら?


「ミリー…」


 はぁ、とため息がでる。

 ベッドに横になったまま、ミリーのことを考える。

 最近はミリーのことばかり考えてしまう。

 ミリーの行動は常識が通用しない。

 そんな彼女にドキドキしワクワクする。

 私は、彼女が何をしでかすのか、私達の行動にどういう反応を示すのか、それが楽しみで仕方がない。

 ミリーは一見、怒って見えても、大抵は怒ったフリ。

 どんな状況下でも、どこか楽しそうだった。


 私は遊びあえる友達がいなかった。

 私は遊び相手を求めているのかも知れない。

 そう、これは私とミリーの遊び。

 聖女にさせようとする私と逃げるミリーの鬼ごっこだ。

 そんな私達の動きも含め、神様の手の平の上。

 きっとね。


 それにしても、昨日のミリーのタジタジっぷりは面白かった。

 私、本当はノーマルだから、ちょっとしたイタズラだから安心してね。


 と言い切れないことに昨日気づいてしまった。


<ミリー、可愛いかった>


 思い出してドキドキしている。

 昨日のあれは本気だったのかなぁ。

 うーん、私ってそっちもイケる模様。

 不思議とそうなっても後悔は無い。


「ミリー、責任取ってね。ふ、うふふふふ」


 言ってみて、笑ってしまった。

 それを言われたミリーの表情を想像してしまったのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーー



 さて、ミルファに連絡を取らないと。

 ミリーとフェルが海に行った件のついてフェルへの聞き取りをお願いするのだ。

 ミルファならきっと上手に聞いてくれる。

 宿屋で朝食を済ませた後、私はギルドへ。

 わざと遅めの時間に向かう。

 ミリーに会ったら気まずいわよね。

 というのも、今、私はミリー包囲網を構築するための手がかりを探るべく、情報集めをしている。

 冒険者になったミリーの行動範囲は徐々に広くなっていくはず。

 昨日も北の都市『ウノユ』に行く話が出ていたわね。

 今はセバが付いているけど、それも何時までもという訳にもいかない。(よね?たぶん)

 なので、それまでにミリーの行動を監視する情報網の構築が必要なの。




「おはよう。ナルカラ」


 遅めに行っただけあり、すでに冒険者はまばらだ。

 ミリーが『G様謁見所』につめていたら行列ができるので、ミリーがいないのはわかってる。


「おはようございます。リリー様。今日はどの様なご用件でしょうか?」


「ナルカラに会いにきたのよ」


「え、私ですか?私というかミリーさん絡みですよね?」


「鋭いわね。ミリーの事で貴女に聞きたいことがあるのよ」


 にっこり笑ってナルカラに返す。

 さて、彼女は話してくれないわよね。


「リリー様。勘弁してください。規則に触れてしまいます」


 他パーティーの動きをギルドが教える事があってはいけない。

 ナルカラは真面目だわね。

 安心安心。

 ナルカラをつい誂いたくなっただけなの。

 ごめんね。


「ミリーが依頼でお出かけ中なのは見てわかるわ。あの娘、ああ見えて真面目だからパーティーでの依頼が無かったら此処にいるわよね」


「あ、そういえばそうですね。パーティーで依頼受けてないときは、必ず『謁見所』にいますね」


 何気ない会話だけど、ちょっとした疑問を思い出したので聞いてみることに。


「そう言えば、その謁見所に並んでいる人をミリーが蹴っている事があるわよね。なにかミリーを怒らせる事でもあるのかしら?」


「ああ、あれは一種の親睦というか儀式というか、G様愛ですね」


「愛?ハイキックが?」


 なにか、聞いてはいけないことを聞いた気分になる。


「謁見所とセバ様が名付けましたが、実際は診療所ですから、並んでいるのは怪我人か病人ですよね。ホントは並ばせるのは心苦しいのですが」


「まあ、それはそうね。重症の人や急患はどうしてるの?」


「G様の凄いところは、容態の悪い人を直ぐに見分けて、私達に急患枠に入れるよう依頼がくるのです」


<ミリーの本質は慈悲にあるのね。フェルに授けられた聖剣、あれもきっと頑張ったフェルに対するご褒美>


「でも、怪我もしてないのに並ぶ人達がいるのです」


「え!?、まさか」


「はい、そんな人がG様の前に来た時、『怪我もしてないのに並ぶんじゃねー!』とハイキックが炸裂します。そしてハイキックを受けた人はその治療の為に並び直すのです」


「…理解不能よ。なんなのその人たち。結構の数いるわよね」


「G様の信者達ですね。G様は律儀にハイキックしますから、ハイキックされたくて並んでいるとの事ですね」


<ミリーの信者達。これは使えるかも>


 私はこのドM信者達に可能性を見てしまった。


「G様の1番の信者ってわかる?」


「うーん、これは漏らしてセーフなのか難しいところです」


「ナルカラ。ギルドのネット見せて頂戴!」


「え、ダメですよ」


「此処からは冒険者リリーとしてのお願いではありません。王女リリエナスタとしてのお願いです。後でセバの許可も貰いますからお願いできませんか?」


「リリエナスタ様ずるいです。セバ様の許可があるなら私は何も言えません」


「有難うございます。ナルカラ」


 私はそういうとギルド奥に入って行く。


「王女様モードで見つめられるのは反則ですぅ」


 ナルカラの呟きが聞こえてきたが、今は先を急ぎたい。

 ギルドの魔導ネット端末である水晶に手の平を当てる。


 まず最初に私の脳内に飛び込んできた情報は、北方の都市『ウノユ』近郊の地震についてだった。

 地震は4回。結構な規模の揺れとのことだった。


<ダンジョンでなにか起きたのかしら?そちらも調査が必要かも知れないわね>


 私はお目当ての情報を探す。

 ナルカラの躊躇する様子から、もしかしてと思い、登録パーティー名の一覧をみている。

 登録が若い順で調べたら、異彩を放つ登録名が直ぐに目についた。


<あった!本当にあるとは!>


 お目当てのパーティー『G様親衛隊』。

 名前の通り、信者でしかありえないパーティー名だ。

 パーティー登録者数107名。

 何コレ!もはやクランじゃない。

 だが、彼等を味方にできれば大きな戦力になるだろう。

 G様情報の共有化で話を持ちかければ、彼等にもメリットがある。

 パーティーリーダーは誰かな?


<は?ブレイド!?ブレイドってあの『ソードマスター』ブレイド?マジで!?『剣武』解散の噂は本当だったのね>


 あのストイックな堅物で有名なブレイドがミリーの信者にねぇ。

 ミリー絡みでこんなモンスターパーティーが誕生していたならナルカラの躊躇も頷けるわね。

 呆れつつも、私の思惑は上手くいきそうで思わず笑みがこぼれてしまう。


「ミリー、貴女の人気。利用させて貰うわね。これも人気者の宿命よ」

リリーとミリーのじゃれ合いは国家レベルの規模に発展していく!

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