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32話 大賢者である私の秘密会議

 よし! 出来た。

 テーブルに置いてある2つの袋を見ながら、私は満足げにほくそ笑む。

 袋の中には調合済の粉末薬草が入っている。

 調合の為の器具はエルオスの無限バッグに既にしまった。

 まあ薬草を粉末にする工程は魔法でやったけどね。

 明日の朝一でコイツを渡せば……


<ムフフ。この勝負もらったな>


 さて、コイツの方はいいとして、私はこの世界について感じている違和感について考察する。

 500年後の世界、この世界はオカシイ。

 異常なヒーラー不足。

 その対策も全く取られていない。

 どうも、どの国でも同じ状況のようだし。

 技術も500年前と比べて同じくらいで、なんの進歩もない様に感じる。

 魔法関連なんか、著しく劣化している。

 元Sランクの魔道士マジックが使った魔法は中級だったね。

 手加減だったかも知れないけど、もしあれが最大の魔法だった場合、あまりの衰退っぷりに目も当てられない。

 是非手加減であってほしい。

 ポーションに関してもいつの間にか薬草Aのみで作るポーションが主流になってしまったようだ。

 何故、誰も発展させようとしなくなったのか?

 何故、新しい何かを開発する者がいなかったのか?

 何故、問題を解決しようとしないのか?

 何故のオンパレードである。

 国王のマッスル爺さんも何の違和感も感じてない様だった。


「フーム」


 私は最悪の想定をしておかねばならない様だ。

 ()()を出すのは正直気が進まない。


 私は『エルオスの無限バック』からそれを取り出す。

 私の魔導書。

 以前取り出した魔導書は写本である。

 普段ならそれで事足りる。

 正直写本だけで済ませたかった。

 今から取り出すのは私の真なる魔導書『真なる乙女の花園αEXプレミアム』、通称『オトプレ』ちゃんだ。


 本を取り出した瞬間、手から本が消えた。

 やっぱり、そうなるか。

 代わりに私の目の前に絶世の美女が現れた。(半透明ではあるが)


 ロゼシアスタ。

 かつての私そっくりなソイツはオトプレちゃんだ。

 ふぅ。かつての私のナイスバディなことよ。

 それに比べて……

 いやいかん!

 私には未来がある!


「あら、随分と可愛らしくなったのね。マスター」


 オトプレちゃんはいわば、私の半身。

 写本に移せないヤバい魔法も全て載っている力ある魔導書。

 擬人化できる程に力を持っているのだ。

 ただし人格、容姿は当時の私、ロゼシアスタベースになっている。

 どうにもかつての私と会話している気分になるね。


「お陰様でね。オトプレちゃんが私のグラマー要素を持っていっちゃってるんじゃないの?」


「だとしたら、マスターは一生ヒンニューなのかしら。ご愁傷さま」


「ぐ!、グラマー要素は返してもらっていい?」


「私にはどうにも出来ないわ。マスターの力になれなくて大変残念ね」


「胸返せー!」


 オトプレちゃんに飛びかかる私。

 オトプレちゃんの胸にタッチ!

 出来なかった。

 素通りしたからである。

 壁に鼻を強打して転げまわる。


「マスター… すこしおバカさんになった?私に実体が無いの忘れちゃったのかな?」


 そう言いつつも私に『ヒールによく似た何か』をかけてくれた。

 そうなのである。

 性格はあれだけど、コイツがいると魔法を使ってくれる。

(消費する魔力は私の魔力ストックから消費する)

 二重詠唱(デュエット)も可能になるけど流石にそこまでの魔法を使うことはそうそうないだろう。


<くそう!ご指摘の通り、忘れてたよ!>


「治してもらっておいてなんだけど、ふつう主に向かってバカと言う?」


「ご不満な点についてはマスターの作った魔法のネーミングセンスが原因かしらね。私自身に自我が在る訳では無いもの」


「ぐ!、ぐぐ!センスいいもん!」(涙目)


「そうね。そういう事にしましょうか。じゃれ合いはこれくらいにしましょう。そろそろ本題に入らない?」


「ふん、まぁイイよ。オトプレちゃんはこの世界に出てみて何か感じる?」


「無茶言うわね。たった今出てきたばかりよ?でも、少し待ってね」


 そう言うとオトプレちゃんは目を瞑り、暫し黙り込んだ。

 やがてゆっくりと目を開けた。


「冒険者ギルドの魔導ネットに入ってみたけど、500年前と変わって無いわ。そのままの技術で止まってる感じね。魔法技術もかなり廃れたようね」


「うん、原因わかる?」


「それが、はっきりとした原因は無いわ。じわじわ衰退してきているようね」


「そっかー。 世界が病気にかかったしまったのかな。病人ならまともに考えられないよね」


「マスター随分と詩的ね」


「もっと褒めてー」


「マスター、私はスパルタで育てる主義なの」


「く!捻くれ者め!まぁイイ。この世界はオカシイ。だから万が一の用意をしておいて。制限を一部解除しておく」


 オトプレちゃんが間違って世界を滅ぼさない様に、いくつもの制限をかけている。今回、お目当ての魔法を使用できる様、一部制限を解除した。


「あら、わかったわ」


「それと幽霊状態(半透明)のオトプレちゃんを見られるとメンドイから形態変わってくれる?」


「どんなのがお好みかしら?」


「光の精霊っぽく、光の玉で」


「わかったわ」


 オトプレちゃんは光の玉に姿を変えた。


「わかっているとは思うけど」


「大丈夫よ。呼ばれるまでは姿を消しているわ」


「一応纏う気はそこはかとなく感じる聖気でお願い」


「注文が多いわね。わかったわ」


 そう言うとオトプレちゃんは姿を消した。

 そして、そこはかとない聖気を醸し出している。

 これはリリーやミルファに出会った時の対策である。


「うん。完璧!ありがとね」


「どういたしまして、呼ばれるまでは例の準備進めるわ。1年はかかると思って」


「うん。大丈夫判ってる」


 私の返事を聞いたからか、オトプレちゃんは静かになった。


 さて少し早いけど寝るか。

 明日は早いぞ!

ミリーを手玉にとる下僕、オトプレちゃん登場

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