26話 大賢者である私と勝敗の行方
セバっちゃんの合図と共に皆一斉に身構える。
龍殺3名vsBランク連合3名vsお爺さん2名vsリッキーvs私という構図を私の挑発により、私vsリッキーvsその他に変える。
私は声に魔力を乗せており、私の挑発はリッキーを含む9名に覿面に効いた様だ。
「さぁ いよいよ始まりました。まずは皆様子見でしょうか?」
「ミリーの挑発により、ミリーに敵視が集まっていますが、他よりの妨害を恐れている感じですね」
「おっと、G様の更なる挑発か?手を頭の後ろに組んで余裕のポーズ!」
「その挑発、買ったぞい!」
私の挑発に1番最初にのってきたのは筋肉爺さんだ。
飛び出す筋肉爺さん。
速いね。
「飛び出したのは『マッスル&マジック』のマッスル氏だ!速い!ぐんぐん距離が詰まる!」
「マジックからの強化魔法も入ってますね。ミリー!危ない!」
リリー、私情がはいってるよ。
さて、目にもの見せてやるか。
見れば、筋肉爺さんの筋肉が膨れ上がっている。
やれやれ見苦しい。
「行くぞい小娘!」
筋肉爺さんは渾身の右ストレートを繰り出してくる。
空気が震えているよ。一撃必殺狙いだね。
セバっちゃんに殺さないように言われてるの忘れてない?
「何!」
爺さんの目には私が消えた様に見えるだろう。
じゃーね、お爺さん。
またねー!
「なんと!」
「気付くの遅い!」
ジャンピングアッパー、宙を舞う私。
私の拳は筋肉爺さんの顎を捉えた。
顎へインパクトが伝わる瞬間、魔力による衝撃波を同時に脳天に突き抜けさせる!
筋肉爺さんは顎を天に向けたまま意識を失い、ゆっくりと仰向けにひっくり返った。
静まりかえる会場。
他の参加者も動けずにいる。
数秒の静寂。
「うおーーーー! すげーーーー! G様!!」
誰かが叫んだ。
一斉に沸き起こるG様コール!(やれやれだ)
「割れんばかりの歓声!いきなりの対決を制したのはG様だー!!G様が華麗に舞ったとおもったらマッスル氏が倒れたー!!しかし一体何が起きたのでしょうか?」
「ミリーのジャンピングアッパーがマッスルの顎を捉え、脳震盪を起こしたのです。ミリーはヒーラーの筈ですが、どこで武術を覚えたのでしょう?」
「実力を見誤ると痛い目見るって忠告そっくりそのままお返しするね」
もう聞こえて無いだろうけど一応言っておく。
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「ミリー凄い!華麗だった!」
フェル王子は大興奮だ。
「えー!? ミリーはヒーラーだろ?どう見ても達人級の武闘家の動きだった!」
驚くカリス。
「ええ、能力強化などの奇跡をつかっていないようです。体術だけであんなに強いの?」
ミルファも信じられない様だ。
「ミリーに稽古つけてもらったけど、ミリーは強いよ結局1本も取れなかったんだ」
「ミリーは孤児院出身でしたよね?」
「確かそう言ってたな」
「うん、ミリーの体術は孤児院仕込みって言ってたよ」
「あ! この町の神官どっかで見たなって
思ってたんだけど」
「確かに…まさか!」
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「その動き、まさか貴女は孤児院出身ですかな?」
「魔術師のお爺さん、よくわかったねー。私の武術は孤児院のいんちょー仕込みだよ」
「G様はビフテの町の孤児院出身ですね…あっと、そうです 孤児院の院長といえばあの人だ!」
「そうでした。すっかり丸くなりましたがこの町の神官であり孤児院の院長は、元Sランクパーティー『毎日が大暴れ!』の鉄拳神官コンゴー!」
実況さん解説さんどうもご丁寧にありがとー。
「ぬふふ、ネタばれしちゃったね。孤児院出身者は皆いんちょーの武術を徹底的に叩き込まれるのよ。社会の荒波に負けないようにね。中でも私は筋がいいんだってさー。だから、いんちょーの弟子として全て受け継いだよ」
「やはり、コンゴー直伝の拳でしたか。マッスル様は油断しましたが、このマジック相手にその体術通じますかな」
「そだねー。じゃあ試してみよっか」
「おっと、戦いはG様vsマジック氏に移行かー!他は動かない」
「マジックとミリーに気圧されて動けないのです。私でもこの中に割り込むのは厳しいわ」
今度は私から行ってみようか。
「速い!ですが」
マジックが何か呪文を呟く。あれは中級雷土だね。私の頭上から雷が襲う。これ直撃したら死ぬやつじゃん。コイツラ手加減する気なしだ。
「っち!中々やりますな。では次々いきますぞ」
「凄い! G様が雷を躱したー!」
「雷を躱すには落ちる前に着地点を見切る必要があります」
「これは凄まじい攻撃です次々に雷が降り注ぐ。さすがSランク魔道士!しかしG様全て走りながら躱していくー!」
「これだけの雷を落とし続けられるのはこの術のみに専念しているから。魔力もMPも桁違いですがこれでは他の術は唱えられません」
リリーそれ正解!
このお爺さんは高速詠唱で雷を落とした後は同じ魔法をショートカット起動している。
ショートカットは直前の魔法を連続して使うスキルだ。
私の知る限りはショートカットは複数持てない。
この距離から、別の魔法に切り替えるのは難しい。
自身も傷つく覚悟なら私が尤も接近した所で雷を落とすだろう。
では、私もとっておきを披露しましょうか。
「な!消えた!……ぐう!」
膝から崩れる魔術師のお爺さん。
私が意識を刈り取ったからね。
またも沸き起こる大歓声とG様コール。
もう諦めたよ。好きに呼ぶがいいさ。
「何が起きたのでしょう?G様が消えたと思ったら、マジック氏の背後に現れ首筋に手刀一閃」
「驚きました。あれは縮地と呼ばれる武術の技です。魔法ではなく、瞬発力で瞬時に距離を縮めるのです」
「リリーは物知りだね。縮地を知ってるとは」
私は次の獲物を定める。
最初から狙っていた奴だ。
「龍殺のリーダーさんいくよー!」
「なんと!G様、次の標的にルキメデ氏を指名!G様やっぱ速いぞ!一気に距離を詰める!」
「舐めるなよ!」
今頃武器を振り上げてもね。
遅い!遅いよ!
「また消えた!」
私の双掌底が獲物の腹を捉える。
さっきと同じくインパクトが伝わる瞬間に魔力の衝撃派を放つ。
「Aランク冒険者のルキメデ氏が吹き飛とんでー… 場外だー!強い!強すぎるG様!あの重装備のルキメデ氏を簡単に吹き飛ばすこの威力!」
「速さと攻撃の重さ両方持ってますね。スタミナはわかりませんが、あと6人なら余裕でしょう」
ぬふふ、そう思うだろうね。
でも私、飽きちゃったー。
大物は潰しておいたからね。
「じゃあ、後は宜しくねーリッキー」
私は手の平をひらひらさせながら
大歓声の中、光の防壁の外に出ていった。




