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20話 大賢者である私と集結するヤローども

 Aランク 冒険者チーム「剣武」は、リーダーのブレイドを筆頭に剣士で構成された討伐専門の変わったチームである。

 ブレイド自身、「ソードマスター」と称えらる剣の達者だ。


 その剣武だが先日、唯一の ヒーラーであった仲間が他チームに引き抜かれてしまった。

 報酬の分配で揉めたのがキッカケだった。


 ブレイドは直接体を張る剣士達と、後方にいるヒーラーで報酬に差を付けていた。

 そこに生じたヒーラーの不満に、他のパーティーがつけこんだのだった。

 ヒーラーが居なくなり剣武は、長時間の戦闘力の維持が難しくなってしまった。

 他のヒーラーを引き抜こうにも剣武はヒーラーへの待遇が悪いと噂が広まり、上手くいかなかった。


 本来ならパーティーの情報は、外に漏らさないのが鉄則である。

 その為には内部から不満を出さないこともリーダーの重要な仕事だったのだが、ブレイドはその管理に失敗した。


 今回の新人ヒーラー争奪オーディションは、困り果てたブレイドにとって突如降って湧いたチャンスだ。


 剣武に対する先入観なく見てくれるだろうし、Aランクの実力者である自分たちなら、他のパーティーよりいい条件を提示出来る。

 説明会にも参加した。

 ちびっ子ではあるが、肝も座ってる。

 それに可愛いかった。

 プニョンの鮫と呼ばれた

 伝説の実力者セバもついてくる。

 実際のミリーを見ているだけに世間を騒がしている「グレートマム」の噂は可笑しかった。


 どうみても15歳以上には見えないが、登録できた以上は15才なのだろう。

 そのお子様の相手をしなければならなくなるのは面倒なものの、その分御し易いかもしれない。

 ともかく新生剣武を立ち上げる為に、まずはこのオーディションは勝たねばならぬ。


 町の外に急ピッチて整備されたオーディション会場は、参加者、見物客、立ち並ぶ露天、警備の兵士とすごい賑わいをみせている。


 これだけのイベントを一週間という短期間で実行すると言うセバの無茶振りにアレク王子は応えてみせた。

 彼の有能さが伺える。


「見たところ、ライバルと言える奴らは…」


 ブレイドは集まっている冒険者達を見渡す。

 小粒ばかりだ。

 酷いものでは 爺さん2人組なんてのもいた。


「これはいただきだな」


 ブレイドは呟く。


「そう簡単に考えてもらっちゃ困る。ソードマスター殿よ」


 背後からの釘をさしてきた声には聞き覚えがある。


「なんだ、ドラゴンスレイヤー殿じゃないか。お前ら龍殺もヒーラー喪失か?」


「お前んところと同じに考えるんじゃないぞ。俺らのところは引退だからな」


 Aランク冒険者パーティー「龍殺」

 その名の通り、ドラゴンバスターを達成したチームである。

 元のチーム名は「電光石火」と言った。


 ドラゴンバスターを達成するのは容易ではない。

 最も弱いとされるグリーンドラゴンにでさえ、数多の冒険者達が壊滅させられている。


 トドメを刺したリーダーのルキメデは、ドラゴンスレイヤーの称号を国から授かり一躍有名になった。

 その際パーティー名を龍殺に変えたが、その名前もギルドのお墨付きがついている。

 実力者パーティーの中でSランクに最も近いと言われていた。


「ふん、お前らのところに新人ヒーラーは酷すぎだろう」


「んにゃ、Gはそんな軟弱じゃないさ。一目でわかった、あれは本物だ」


 今やミリーは冒険者内ではグレートマムを略されて『G』と呼ばれていた。

 幸いなことにミリーは高級宿に篭っていた為、その事を知らない。


「あそこに居るのは、『一矢百中』!奴らもか」


 Aランク冒険者チーム 「一矢百中」

 リーダーが弓の達人であり、その腕前は100m先の頭上に置いたリンゴを100連続で射抜ける程だ。


「見たところ、強敵は、お前ら龍殺と百中だけだな」


「そう願いたいものだな」


「そろそろ時間だ。仲間のところに戻るさ」


「そうだな、お互い偵察はここまでだな」


 二人はお互いに正々堂々と勝負する事を誓い合い、自らの仲間達の元に戻っていった。



ーーーーーーーーーーーーーーー



 Eランクパーティ「ビフテの星」は、ビフテの町の出身者のみで構成されたパーティーである。

 そのリーダー、リッキルトは一番最初にミリーをパーティな誘った若者である。

 彼もまた、参加者達を確認する為メンバー達と離れ、会場をウロついていた。


 会場は広い。

 参加者や観客を入れてもまだまだスペースがあった。

 参加者は正直、格上ばかりで望みはうすい。


「凄い人数だ!」


 リッキルトが呟いた時、彼は背中に龍殺と書かれた鎧を着込む男を発見してまう。


「龍殺!凄い!あの人達と争うなんて!」


 Aランクのパーティは王国に『青薔薇の戦乙女』、『剣武』、『一矢百中』など10チーム程いる。

 現在Sランクチームはいないが、Sランクに最も近いと言われている龍殺が参加していると知り、リッキーはほんの僅かな可能性も無いと知らされた。


 ミリーの事が諦めきれず、こんな大騒ぎになっても参加してみたが、どう考えても自分達には場違いに思えた。

 リッキルトはもう皆を説得して帰りたくなった。


 そんな時、リッキルトの隣に立った人物がとんでも無いことを言った。


「背中に龍殺って、しょうもな。カッコいいつもりなのかな?」


「彼らはAランク。そんな事言っちゃダメだよ」


 隣を見れば、フードを目深に被って顔は見えないが背が低い女の子のようだ。


「Aランクねぇ。尚更しょうもな。背中に文字書いたってモンスターには伝わらないし、人間相手にわざわざ威圧する小物だよ」


<本当になんて事言うんだ>


「本当にそんなにこと言っちゃダメだよ。彼らに聞こえたらタダじゃ済まないよ!」


「聞かれたって大丈夫だよ。大した連中じゃない。それより私はミリミリ。武闘家だよ。ミミって呼んで。君の名前は?」


「僕はリッキルト。皆にはリッキーと呼ばれてる」


「リッキーね。お互いがんばろー!」


 そういうとミリミリはリッキルトの背中をバンバン叩いた。

 その瞬間、彼の運命が変わったのだが、リッキルトが気づくことは無いだろう。

 ミリミリは満足して去っていった。


「う、うん、ミミお互い頑張ろう」


 終始武闘家ミリミリに振り回されたリッキーは、冷や汗をかきながらそう言うのが精一杯だった。



ーーーーーーーーーーーーーーー



 会場にセバが現れた。

 会場がどよめく、セバは1人であり、隣にミリーの姿は無かった。

 セバが会場に設置された指揮台の上に立つ。

 手には拡声魔道具を持っていた。


「皆さま、長らくお待たせしました。これよりFランクヒーラー、ミリー嬢争奪!大オーディション大会を開催致します!」


 どよめきはさらに広がる。

 当の本人が見当たらないのだ、当然だろう。


「皆様はミリー嬢が不在と思われておられる様ですが、ミリー嬢、いえグレートマムはいらっしゃっております」


 その時、どこからともなく大声が響く。


「グレートマムじゃない!今度グレートマムと呼んだらセバっちゃんでも潰す!」


「おお!Gだ!Gが降臨したぞ!どこだ!?」


 途端に大歓声が上がる。


「ヤロー共!Gって略すな!私はゴキブリか!地獄を見る覚悟はあるんだろうね!!」


「やっぱあんた最高だ! G!!」


「おお!G ! G! G! G! G!」


 むしろ盛り上がる会場。

 巻き起こるGコール!


「マゾどもめ!いい覚悟してるな!!地獄を見せてやる!!」


「お聞きの通り、Gはこの会場にいらっしゃっておりますのでご安心を。では、早速これより内容の説明に入りますのでご静粛に!」


 セバの有無を言わせないオーラに会場は飲まれ、静まり返る。


「オーディション第一種目」


 ゴクリ! 会場の皆の喉が鳴る。

 数秒の静寂。


「パン食い競争!!」


 セバにより競技の内容が告げらた。

 パン食い競争に勝つ!それは冒険者にもっとも必要な能力とどこかの偉い人が言ったとか言わないとか。

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