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17話 大賢者である私のバディになったセバのお話

「凄い娘が現れたな!」


「俺、ファンになったよ!」


 などなど、この場に集った冒険者達の反応は、ほぼほぼミリーに好感触だ。


「あれで、目立ちたくない。ね」


 アレクは苦笑する。

 これでミリーは有名人だろう。


「兄さんこれから忙しくなっちゃうね」


「セバに任せてしまったからな。まさか祭りを開催してしまうとは」


 セバの突拍子の無さは相変わらずだ。

 この一大イベントの為にこちらも警備強化などの行政業務が増加するだろう。

 観客も多くなるだろうし、商売するものも出よう。

 王都からの兵士増員も考えなければならない。

 どれだけの規模のイベントになるのか考えるだけで頭が痛い。


「凄いとしか言えないわ」


「ミリーは呆れるくらいに肝が太いな!」


 呆れ顔のクーンとカリス。


「さすがはミリー様です。等しく愛を届けておりました」


 ミルファは感動しているようだ。


「その解釈はどうかと思うよ?」


 青薔薇の面々の会話のミルファの発言にフェル王子が突っ込む。

 とはいえ、フェルもまたミリーの図太さに感銘を受けていた。


<僕もあんな風に人前で話せたらな>


 フェルは人見知りだ。

 グイグイと懐に入っていくミリーに憧れを抱く。

 ミリーと一緒にいたら僕だってああなれるかな。

 ミリーともっと一緒に居たいな。

 それが恋心なのかは10才の子供には判らない。


 ====================


「お疲れ様、正直呆れたわ。目立ちたくないって言ってなかった?」


「これはご丁寧にありがとうございます、リリー先輩。目立ちたくないのは本当だけど、目立つように引っ張り出したのはセバっちゃん達だからねー」


 裏で糸を引いているであろうリリーに含みのある返事をしておく。


「まぁ、それはそうだけど」


「ところでさ。セバっちゃんって業界では有名人?」


「そうよ」


「セバ様は現在、冒険者ギルドの特別顧問であらせられますが、現役時代はギルドマスターであり、Sランク冒険者であり、王国執事長であり、王室武術師範であられた方です」


「へぇ、肩書凄いね。どうやったらそれらを全て成り立たせられるんだろう?」


 ナルカラっちの説明に私は呆れた。


「それは私にも分からないわね。子供の頃から知ってるけど、基本王宮に居たわよね」


 リリーもセバのことは不思議だった様だ。

 ナルっちの説明は続く。


「セバ様は〝プニョンの鮫〟と呼ばれた英雄でもあらせられます」


 ん? プニョンは知ってるぞ。


「プニョン領ってたしか内陸だったよね」


「ええそうよ」


 リリーが答える。


「なんで鮫なのさ?」


「私も知らないわね。正直セバについてはいちいち突っ込みきれないのよ」


「それは、私にもわかりかねます。直接お聞き下さい」


 二人ともセバっちゃんには振り回されているんだろうな。

 セバが指揮台からおりてこちらに来た。


「私は受付業務に向かいますのでこれで失礼します」


「ナルっち、ありがとね」


 ナルっちは赤面しながらこちらに一礼すると、即席受付カウンターにに向かって走り出した。

 いつの間につくったんだろ?

 気づかなかった。


「お疲れ様でございました。リリー様。ミリー様」


「セバっちゃんもご苦労さまでした」


「セバっちゃんさぁ、私これじゃあオーディション開催まで身動きとれないでしょ」


「左様でございますな」


 いつもの無表情で答えるセバっちゃん。


「その間、私生活できないんだけど?今回の報酬だって時間かかるでしょ」


「今日完了手続きを取って頂いても、2週間ほどお待ち頂くことになろうかと。何せ大金ですので。現金手渡しでお渡しするのも危険ですのでギルド内口座預かりにする場合は更にもう1週間はかかりますな」


「やっぱりー!私、餓死しちゃうよ」


「暫くは、このセバがお世話いたしましょうか?バディの危機とあっては見過ごす訳には参りません」


「いえ、ミリーのお世話は王家で保証します」


「ん?リリー急にどうしたのさ?」


「ミリーに大金すぎる金額を提示し、ミリーの生活の事を考えなかったのは私達の落ち度。この度の報酬がミリーに渡るまでは、こちらで責任をもつわ。それだけの恩が貴女にはあるもの」


 私はリリーとセバっちゃんを天秤にかける。

 ぶっちぎりでリリーが勝った。

 考えるまでもない。


「じゃあ、リリーの世話になるよ。お礼は言わないけどね」


「ええ、気にしないで」


「それでは私もこれで」


 セバっちゃんが一礼する。


「ちょい待ち、セバっちゃん」


 私はセバっちゃんにどうしても聞きたいことがあったので、呼び止めた。


「どうなさいました?」


「なぜコンビ組んだの?お目付にしても他にやりようがあったんじゃ?」


 リリーの、いえ、王家の依頼で動いていることはわかるけど、別に張り付く必要は無いはず。

 セバっちゃんが有名人なら尚更だ。

 お目付ならもっとそうと判りにくく、かつ腕の経つ人選でいいよね。


「はて、お目付?何のことですかな?」


 しらばっくれるセバっちゃん。


「ちょっとリリー外してくれない?」


「え、ええ。わかったわ」


 リリーが場から外れたところで再び問う。


「お目付はともかく、何故コンビに?」


「ミリー様には敵いませんな。では正直に申し上げましょう。貴方様が正直恐ろしい。からでございます」


「えーこんなに可愛いのに恐ろしいだなんて」


 今度は私がとぼけて見せた。


「貴女様は私以上の修羅でいらっしゃる。その気配は強大すぎて、皆は判らないレベルです。その若さでどういう人生を歩まれたのか分りませぬが、その修羅っぷりに私は」


「わかった、ストップ!!それ以上は路線が変わっちゃうからさ。私、そういうのダメなんだよね。殺るならサクッといくよ」


「恐ろしい方ですな。冗談に聞こえません」


「真に受けないでよ。私はただのヒーラーだし、そんな実力は無いからね」


「了解いたしました。ではこのセバがお守りいたしましょう」


「いや、それもいいかな」


「つれないですな。では今度こそ失礼致します」


 受付の方に向かうセバっちゃん。

 やれやれ、私の魔力の気配に気付くとはね。

 クーンも気づいていないのに。

 私が魔法を使うときは魔法陣を用い、周囲の魔力を取り込むので私自身の魔力の動きは軽微である。

 そのため私の魔力は低く見られがちなのだけど、本当はMAX容量が大きすぎて感知出来ないだけ。

 セバっちゃんはそこに気づいていた。

 Aランクの実力に疑問を抱いたため、現代人の実力を甘く見ていたようである。

 侮れないね。

 Sランクともなると、ひと味違うようだ。

 血が騒ぐと本当に路線が変わってしまうので、落ち着きましょうっと。

 会話が終わったのでリリーがやってきた。


「話は済んだの?」


「うん、ところでお腹空いたよね」


「まだ…食べたいんだ?」


「食事中で連れてこられたんだよ?当たり前じゃないの」


「はぁ わかった。いいお店があるからそこに行きましょうか」


「もちろんリリーの奢りよね」


「ハイハイ。王女に二言はありません。まずは皆に合流しましょう。ついてきて」


「ヤター! リリー先輩宜しくねー」


 こうして、私は朝食の続きを堪能したのだった。

ミリーは改めてヨーグルトを堪能したらしい。

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