12話 大賢者である私を出し抜いた聖騎士姫リリエナスタの密会
王子フェルが聖剣の主になった事を祝う豪華な夕食会は、ミリーの爆食で皆を圧倒して終わった。
ミリーがフカフカのベッドで爆睡中の夜中、王女リリエナスタは宿の最上階の最高級スイートルームにいる人物に会っていた。
「お兄様、お忙しいのにご迷惑をおかけしました」
「フェルの危機だったのだ。何はさておき駆けつけるさ。それにフェルの無事も確認出来た。リリーも気に病むな」
「お兄様、ありがとうございます」
「それで、経緯を詳しく教えてくれないか」
「はい」
リリエナスタは一瞬迷ったが真実を話すことにした。
優秀な王太子であり、優しい兄に話すことは、神の御心に沿うだろうと考えたからだ。
「なるほど、本日冒険者登録したてのヒーラーが、呪いを見抜いて弟の呪いを解き、更に呪われた剣の呪いを消した上で聖剣の加護を与えたと」
「聖女様は聖剣の試練だったとフェルに説明して下さり、フェルばかりか私達の心をも救ってくれました。弟は聖剣に選ばれたと喜んでいます。それなのに功績を誇るどころか、神の意志に従っただけと仰るのです」
「聖紋の聖女様か」
「はい、一見そうは見えませんが、優しく、慈愛に満ちており、まさに神の御技を与えられるに相応しいお方です」
「わかった、今は聖女様の御意志通りにして頂こう。しかし、いつでも連絡できるようにはしておきたいな」
「聖女様は目立ちたくないご様子でした。私達が一緒に居るのは目立ってしまうので、その辺りはセバと相談します」
「伝承の聖女様が降臨されたということは、世に大事が起こると言うこと。聖女様に不測の事態が起きないように気をつけて欲しい。また、聖女様が目立ちたくないのは人心を騒がせたくないからだろう。しかし、聖女様の存在は人心を勇気づけるだろうから、その辺りは徐々に地固めをしていこう」
「ふふふ。聖女様は目立ちたくないかもですけど、嫌でも目立っていますわ。それだけの存在感ですから隠し通すのはきっと不可能です」
「ふ、そうか」
王太子は妹の発言に苦笑する。
「近い内にご尊顔を拝したいものだな」
「可愛いお方ですよ」
「それは楽しみだ」
ミリーがこの会話を聞いていたら、きっとこの国から即座に逃げ出すだろう。
しかし残念ながら、現在ミリーは爆睡中だ。
よく食べ、よく寝る、それもまた、ミリーの生き方だった。
ミリーこうしてドツボにはまっていく。




