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第90話

21.

「はあー……そうだったのですか……我々も今テレビ中継を見て、放送内容がこちらが思っていたこととあまりにかけ離れているので、不思議に感じていたところですよ。


 世界各国に巨大円盤が出現して外出禁止令が出され未だに解かれてはいない状況で、職員は出勤してきておりませんから確認できませんでした。


 そうでしたか……恐らくあの巨大円盤からのメッセージは、巨大円盤に対抗する作戦に参加したもの以外には、聞こえなかったのでしょうね。肉声ではなく頭に直接響いてきましたから……。


 聞こえたのは恐らくA国の超能力者たちと……もしかすると最初に巨大円盤が出現したときに、円盤の保護膜を外させるための攻撃をした戦闘機のパイロットたちは……聞いているかもしれませんがね……。


 それでも世界中でもごく少数の人だけが、巨大円盤のメッセージを受け取ることが出来たのでしょう。円盤下部に表示された星系座標は……メッセージを受け取っていないものにとっては、なぞでしかありませんね。


 解決してから本日までずれ込んだのは……恐らくモスクワ上空に残しておいた1機が、何らかの形で無効化されたということでしょうね。あきらめて飛び立ったのか、それとも南極あたりに着陸したのか……どちらかは分かりませんけどね。


 とりあえず記憶が新しいうちに、受け取ったメッセージを書き取っておきましょう。全員分の内容を精査して、正式レポートを上げる必要性がありますね。」

 白衣の研究員の号令の下、全員で昼間に受け取ったメッセージを便せんに書き写していった。



「はいこれ……あれ、お兄ちゃん……ずいぶん早く提出したと思っていたら……便せん半分もかけていないじゃない。もっといろいろ言っていたでしょ?途中で2つのグループに分かれたとか……今住んでいる星の座標に関しても書かれていないじゃない……。」


 便せん3枚にびっしりと文字を埋めた美愛に対して、夢幻の場合は便せんの半分以下……3行しか書かれていない。


「半分寝てたから夢見心地で……変なこと書いてもまずいだろうから、はっきりしていることだけ書いた。」

 夢幻は悪びれずにそう答えながら、調理場へ入って行った。


「俺も……寝ぼけとったから……。」

「俺もだべ……。」

 夢双も夢三も、ほとんど書けてはいなかった。


「全員聞いたことを集めれば、ちゃんとした文面になりますよ。それにしても宇宙人のことが明らかにされたと喜んでいましたが、ダメだったようですね。このレポートで脅威が去ったことは、恐らく信じていただけるでしょうが、それでも各国政府は違う天体で発生した文明の侵略行為だったとは、明かさないでしょう。」


「えー……やっぱりそうなの?」

 全員が書いたレポートを束にしてまとめている白衣の研究員の言葉に、美愛ががっくりと肩を落とす。



 夜になってから行われた実験では、夢幻も夢三も夢分も眠ることはできたが能力は発動しなかった。夢幻と夢双と夢三の3人は、昨日のゲーム疲れもあるのかそのまま寝ると言い出した。


「えーじゃあ……あたしたちはもう、家へ帰ってもいいことになるわね?」


「まだ1日だけでは分かりませんから、1週間は様子を見ましょう。以前夢幻君の能力が1時的に失われていたことがありますから、念のために……お願いします。


 レポートを提出しますから、おそくとも明後日には巨大円盤の脅威が去ったことが明らかになり、外出禁止令が解除されるでしょう。そうなれば夢三君たちだって、地元の北海道へ戻ることも可能となりますよ。」

 白衣の研究員が、もう1週間は様子を見たほうがいいと提案する。


「あんちゃんは……もともと不登校だったから……こっちへ来て、夢幻さんたちとおんなじ高校さ通えるようなって……よろこんどったんだべ……このまま、こっちへいることはできないんだべか?」

 美樹がちょっと悲しそうな顔をして、白衣の研究員に尋ねる。


「ああそうですね……治療目的ではありましたが、転校までしていただいたのですから、卒業までこちらにいることは構わないと思いますよ。ねっ所長?」


「ああ……夢三君たちは早急な治療が必要と判断して転校してもらったんだが、その理由は明らかにはしていないわけだ、能力に関しては極秘扱いだからね。表向きは君たちはこのNJ事務所に住み込みで働くという理由で、転校してきてたということになっている。


 丁度夢幻君や美愛ちゃん達が、インターンとしてNJ事務所で働き始めたところだったからね。能力がなくなったからこれまでというつもりは毛頭ないから……NJは一応ではあるが商社としての業務は続けていくわけだから、いてくれるのであれば助かるよ。ご両親の同意を得てからにはなると思うが……ね。」


 白衣の研究員に促され、神大寺が真顔で答える。


「それはありがたいべ……あんちゃんもきっと喜ぶべさ……。」

 美樹が嬉しそうに笑顔を浮かべる。


「よかったー……お兄ちゃんの能力がなくなってしまったから、インターンの仕事もなくなってしまうのかと思って、少しドキドキしていたんだけど……あたしたちも続けていいのよね?」


「もちろんだ。美愛君も幸平君も……夢幻君だって今では立派なNjの職員だ。辞めてもらったら、こっちが困るよ。」


 神大寺が今度は笑みを浮かべた。美愛たちとはすでに半年近い付き合いなのだ。


「そうだね……NJのパソコンなどのネットワーク担当者も僕だけになってしまったし、今ではHPの更新迄任されているからね。夢幻と美愛ちゃんだって最近は調理場で日々の賄に忙しそうだし、この仕事で十分食べていけるね……将来安泰だ。」

 幸平も嬉しそうに満面の笑みを見せる。


「ほお……そうでっか……俺たちは大阪で新聞販売店の奨学生をやっとったのですが、こっちへ越してこられまっか?どうせ……テレビ出演が決まった時に、社長ともめてしもうて……変な能力晒して変態扱いされたら、販売店の仕事はでけへん言われてもうて、荷物まとめておん出て来たんですわ。


 今、行くとこがないのんですが……ここで厄介になることはできまっか?ある程度落ち着いたら、弁護士雇って親父たちの遺産のこと明らかにするつもりですから、そうも永いことはかからん思うとります。


 俺は何もできませんが……妹の美見は料理は上手ですし、掃除も洗濯も家事のことならなんでもきちんとこなします。俺も……庭掃除でも雑用や力仕事でも何でもやりますから、働かせてもらえまへんか?


 あともう少しである程度まとまった金がたまりますから……ついでに信頼できる弁護士さんを紹介していただけると、有難いですなあ……。」

 すると今度は夢分が、自分たちも働かせてほしいと言い出した。


「ああ……それは構わないよ。元々ここは職員が10名と自衛隊からの派遣者が5名勤めていたんだが、夢幻君たちがここで寝泊まりするようになってからは、機密保持のために現地採用の事務職員は徐々に解雇する羽目になってしまった。勿論、役場などの公的機関への転職を条件にだがね……。


 だから、まだまだ職員は必要なので、協力してくれるのなら大歓迎だ。NJの真の姿を知っている君たちがいてくれるのは本当にありがたい。


 だが夢分君の場合は、向こうの学校の転校手続きなどしていないだろ?どうだろう、後見人となった親戚の方たちへのご挨拶も必要と思うから、今週末にでも一緒に大阪へ一度帰らないか?もちろん美見君も一緒にね。学校へはこちらから連絡をしておく。」


 神大寺が一度大阪へ帰ることを提案する。


「えー?あんな奴ら親戚でも何でもあらへんのですよ……遺産を横取りしやがって……でもまあ……学校は手続きが必要ですわなあ。わかりました。一緒に帰りまひょ。」


「そうやで……黙ってこっちへ来てもうたから、友達にもお別れできとらんやろが……有難いわ……。」

 美見も深くうなずいた。


「ふうん……おにいも……こっちへ住みてゃぁー言いだすんちゃうやろうかなあ……。」

 美由がぽつりとつぶやいた。



 週末になると、土日の一泊で大阪へ夢分たちを連れて神大寺が出向いていった。


「かばんに入らんくて、捨てよう思うとった荷物まで全て送ることが出来て、ありがとさんでした。関東の高校への転出届もしてもらえたし、勤めとった新聞販売店までも……挨拶してもろうてえらいすいませんでしたね。神大寺さんのような立派な方がおってくれたおかげで、社長にがみがみ言われんで済みましたわ。


 親戚の奴らは……委任状もらうのに連帯保証人に加えて誓約書迄要求しやがるような奴らで……ほんにもう、情けなかったですわ。後見人外されると親父の遺産を好きに使えなくなるから、無理難題押し付けよう言うのが見え見えで……それなのにきちんと対応していただいて、ホンにこのご恩は一生忘れません。」


 大阪でのすべての手続きがすんで新幹線に乗り込むと、夢分が神大寺に向かって深々と頭を下げた。


「兄やんはほんに……おじさんたちのことを嫌っとったからな。あたしは新聞社の社長の息子の方がよっぽど嫌やったけど……学校から帰って着替える時間になると決まって、何の用事もないのに寮の部屋のドアをノックもせずに開けよったから。寮なんて名ばかりで、元倉庫に床張って流し台設置しただけやったからな。


 おじさん夫婦は、結構優しくしてくれとった思うてたけどなあ……。」


「そら……俺たちが一緒に住んでいないと後見人の立場がやばくなりよるからや。騙されとったらあかんで。」

 美見と夢分の周囲に対する意識は、ほぼ真逆のようだ。


 神大寺の見た限りでは、住み込みで奨学金援助を受けて働いていたという新聞販売店の社長も、学生で両親を亡くした夢分たち兄妹を親身に面倒見ようと思っていたようだった……だからこそ、寝ているときの分裂症状などでテレビ出演しようとしたのを知り、見世物になるんじゃないと止めたようだ。


 親戚に関しては……


「はあ?弟夫婦の遺産?そんなもん、あらしまへんわ。弟は子供の時から見栄っ張りでしてな、見かけもいいし明るい性格してましたから学生時代から人気者で、生徒会長やったりして友達もようさんおりました。


 それでも人から持ち上げられるということが当たり前に感じていたのでしょうな……商売を始めても殿様商売やから、一寸もうまくいきまへん。会社立ち上げては潰して……また立ち上げては潰し……の繰り返しで、しまいには投資してくれよった学生時代からの親友連中からも愛想をつかされたようです。


 そしたら今度はわしら親戚連中のとこへ借金しに来て……親父はそれなりに土地とか持って居ったんですが、あいつのためにすべて手放すことになってしまいました。


 うちも数百万貸してましたし、確か妹のとこもかなり通ってましたなあ……それなのに外車乗り回して、月に何度か高級レストランへ行ってよったんですからなあ……誰もあいつのとこへ、金を融通しよういうのがおらんようなりました。


 しまいにやばいところから工面するようなったようで、事故死言うことになっとりますが、うちらは自殺や思うとります。死んで生命保険金でチャラに……とでも思ったのかもしれませんが、なんとまあ、生命保険さえも借金の支払いのために無理やり解約させられとったみたいで、解約払戻金で利息を払うたばかりでした。


 夢分たち子どもにも取り立てる言いはりましたから、お前たちが無理言うて生命保険解約させたから、取れるはずの金が取れへんようなったんやろ?言うて、こっちも弁護士立てて、借金は夢分たちには継がせないことを承諾させました。それでも自動車の保険金からいくばくかは出たようでしたけどね。


 清算した弟の会社の経理資料もありますし、弁護士にも聞いていただいても構いませんよ。


 そんでもまさか……こんなこと夢分たち子どもに言えへんでっしゃろ?夢分がうちらをどういうふうに言っとるか大体わかってますけど、まあ……憎まれ役を買って出とる次第ですわ……。」


 夢分たちの叔父が、口元を引きつらせながら薄笑いを浮かべた。後見人への挨拶をしに来た時に、神大寺にだけにと言って、そっと打ち明けてくれたのだった。


 事前に夢分たちの父親の会社の業績を調査した限り、5年ほど前に起業した化粧品卸しの商社も業績は思わしくなく、最近はほぼ投げ売り状態であったようだし、輸入雑貨商から初めて起業しては潰すの繰り返しということも、すでに調べて明らかになっていたことだ。


 神大寺は優しい叔父たちに深く頭を下げ、夢分たちが学校を卒業して社会へ出ることになってから、この話をしてやろうと決めた。

 


 NJへ戻ってきて、夢分の転校先はもちろん夢幻と同じ高校で、美見の通う中学は美樹と同じ中学へ編入手続きをするための書類作成に入った。相変わらず夢幻たちの能力は発動していない。


 夢双も高校を卒業したらNJで働きながら関東の大学へ通いたいと言い始め、美由も一緒に来4月からこちらへ来ると言い出した。


 神大寺は大歓迎したが、そうなると宿泊する部屋が足りないので、近くにアパートを借りてNJ職員のための寮にすることになった。勿論賄い付きで、夢幻の指導を受けながら美見と美樹が調理場を受け持つことになるだろう。能力は失えたが、NJを担う若い戦力が集結してきた。


 もちろん……近く出現すると伝えられた、宇宙人たちの遺産を扱えるものの出現に備えるために……。



不連続な掲載で長期にわたってしまいましたが、ようやく完結です。長らくのご愛読、ありがとうございました。次回作(あるかどうかも現時点では不明ですが・・・)にご期待ください。

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