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第8話 社交界デビュー前日

前回の投稿からだいぶ間が空いてしまいました。


不定期更新ですが、これからも宜しくお願いします。

 

 昨日は日が暮れるまで訓練に明け暮れていたためか、余程に疲れていたのか食事もそこそこに早くに就寝した。




 それから数日の間は職業を身体に馴染ませる為に、適度に訓練を日に何度かして空いた時間に王都の街中を見て回った。


 ミュースも時折ふらっと何処かへと消えていたので、誰か知り合いか友人にでも会いに行ったのだろうか。


 いや、もしくは時折やって来る剣士ギルドの使者から逃げているだけか。




 特に特質すべき事も無く、日々が過ぎていったある日の夕食の席でオトマールはアドノスに告げる。



「そうそう。明後日のお前の誕生日は内々にやるのでは無くて、多数の招待客を招いての誕生日会にするぞ。そろそろアドノスも社交界デビューしないとな。明日は服を用意させているので、それをイザベラと受け取りに行きなさい。その後はイザベラと少し王都観光をしたらいい」


 ここ数日アドノスは暇だったが、父のオトマールと母のイザベラの二人は忙しく動き回っていた。


 それにいつのまにか採寸したのだろうか?


 そう言えばラドフィード領を出る前に、採寸されたな。


 もうすぐ誕生日が近いから、その為に新しい服を用意する。とは聞いてはいたがこの為だとはな。



(それにしても上手く行くか?この口の悪さは治らないと思うが。ああ、そう言えば両親二人の前では丁寧な口調になるな。ならどちらかが、居れば問題は無いな)



「わかりました。明後日を楽しみにしています」



「明日もでしょ?アーちゃん?」


「そうでしたね。母様」


「ふふ。何処に行こうかしら。王都に来るのは久しぶりだから、色々と見て回りたいわ。あの店のお菓子は美味しいのよね。それともあの店にしようかしら。ああ!今から楽しみでしょうがないわ!早く明日にならないかしら」


「そんなに急いても時間は変わらないよ、イザベラ。それに明日なんてすぐだよ。今日は早く寝て朝早くに出掛ければ、沢山の店を回れるさ」


「それもそうね!アーちゃんも明日は早起きしてね」


「わかりました、母様」


 実はアドノスは家族の中で誰よりも早起きで、朝から鍛錬をしているのだが、その事を両親の二人は知らない。



 要らない心配を掛けたくないので、アドノスが使用人達に口止めしているからだ。



 それにしてもイザベラは本当に楽しそうにしている。


 何だが少しだけアドノスも楽しみになって来た。




 翌日いつも通りの時間帯に起きる。


 今日は母様と出掛けるので、鍛錬は出来そうに無いな。


 ベッドから起きたタイミングでコンコンコンと扉がノックされる。


「何だ?」


「失礼します。おはようございますアドノス様。奥様より起こしに向かう様に言われましたので、もう起きていらっしゃいましたか」


 どうやら俺を起こしに来た様である。


「見ての通りだ。母様ももう御起床されているのか?」


「はい。つい先程起きました。ではお着替えをお手伝いさせていただきます」


 アドノスの服の手伝いを申し出る。


 いつのもの如くそれを受け入れて、着替えさせられる。


 今日は母様と出掛けるので、フォーマルな服装に着替え食堂に向かう。



 食堂で暫く待っていると、母のイザベラと父のオトマールがやって来た。


「おはようございます」


「ああ、おはよう」


「おはよう。アーちゃんは早起きね」


「いえ、そんな事は無いですよ。今日は僕も楽しみだったので早く起きれたのですよ」


「まあ、嬉しいわ!」


 花が咲く様な笑顔をして、イザベラは思わずといった感じでアドノスに抱き着く。


 まだまだ若々しいイザベラに抱きつかれたら、ドキッとはするが、母親なので純粋に嬉しい思いが込み上げて来るが、やはり少しばかり恥ずかしくも感じる。



「そろそろ離してあげなさい。食事にしよう」


 オトマールの言葉で不承不承と言った感じで漸くアドノスは解放される。


「では、いただこうか」

 オトマールの言葉で食事を始める。


 気のせいかいつもよりイザベラの食べる速度が速く感じる。


 それをオトマールは苦笑しながら、しょうがない人だな。と言った感じで見ている。


 アドノスもイザベラからの無言の圧力を感じていつもよりは速く食事を食べる。



 食事を食べ終えると、早速とばかりに馬車に乗り込む。


 最初に行くのは仕立て屋である。そこで出来上がったアドノスの披露宴用の服を受け取るのである。


 まだ朝早い時間帯にも関わらず、既に外には動き回っている人々がいた。


「こんなに朝早くから働き出している人が居るのですね」と感心した様にアドノスが呟くとイザベラがそれに相槌を打つ。


「ええ、その通りよ。良いアーちゃん?私達貴族は彼ら平民に支えられている事を忘れては駄目よ?彼らが私達を支えてくれる代わりに、私達貴族は彼らを庇護しなければならないのよ?」


「わかりました。母様の言葉この胸にしかと刻みます」


「良い子ね」


 そう言ってイザベラはアドノスを抱き寄せて頭を撫でる。


 ふわりとラベンダーの香りがしたので、今日の香水の匂いだろう。


 イザベラの腕の中にいると安心感があり、ついつい居眠りしてしまった。


 優しく揺すられて目を覚ますと、どうやら目的地に到着した様である。


「ふふ、気持ち良さそうに眠っていたわね」


「すいません母様。とても心地良くてつい」と素直に理由を言うと、イザベラは嬉しそうに微笑み「嬉しいわ。今夜は一緒に寝ましょうね」と言ってきた。


「わかりました」と少し恥ずかしいが了承の返事をする。


 馬車から降りると服飾店の店の前で、従業員一同がお出迎えしてくれた。



「お待ちしておりました。ようこそおいで下さいました」と綺麗に一礼してくれる。


「もう出来てるかしら?」


「はい。既にご用意しています」


 店内へと案内される。


 その途中アドノスは店内の服飾を見て『やはり中世っぽいなぁ』と思った。



 店の奥には、今回夜会で着るタキシードの様な服が置いてあった。


 其処で最後の確認をされて、問題は無かったので服を受け取る。


「さて、次は何処に行こうかしら?」とイザベラが問うて来る。



 特に生きたい所は思い浮かばない。


 一応何回か王都へは来たことはあるが(主人公として)あまりゲームでは、王都はそこまで重視されておらず、物資の補給や時々あるイベント時に立ち寄る程度で、王都の隅々まで知っている訳ではない。



「母様と一緒ならどこでも良いですよ」と無難に答える。


「まあ、嬉しいことを言ってくれるわね」


 まるで満開の花が咲いた様な笑顔で、イザベラが嬉しそうに言う。


「なら、私のオススメスポットをアーちゃんに教えてあげるわ」



 それから日が暮れるまで、イザベラに王都中を案内された。


 昼は高級店で好きなものを食べ、イザベラオススメの店に何軒か寄ったりと王都を満喫した。



 そして明日はいよいよ社交界デビューである。

読んで下さりありがとうございます。

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