表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LIBERTY DOG ~卵運びの荷馬車は落ちる~  作者: 鰐澤作智
彷徨う思念
9/20

3

老人は目の前にいるリナリアを決して見ることは無かった。まるで自分以外が空間に存在していないように俯いて騙る。面会時間が過ぎ、看守に連れられる際も何も言わずにゆったりと扉の奥へ消えて行った。

外へ出ると、浦安が運転するSUV車両が停めてあった。乗り込んだリナリアに「お疲れ様です」と声をかけると簡単な返事をした。

脳内を回る老人の調べ、その意味など知る由も無いが、解釈に至るまで泳がせてみた。

彼の言っていた原始的な目とは看守の事や、受刑者を管理するシステムの事だろう。生身の人間が各々の眼で罪人を見続けなくてはいけないのだから、そこにテクノロジーは介入していない。だから原始的ななどという表現を用いたのか。となると箱庭は刑務所内の事であろう。ヒントになりそうな物は無かったので溜息と共に吐き出した。

「そういえばイベリスさんが見てた映像に、山田さんが映っててびっくりしましたよ」

唐突に浦安が話題を振ってきたが、心底どうでも良さそうな表情をしている。

「S区駅前の漫画喫茶に入っていったんですが、イベリスさんが悪戯心でその映像を山田さんに送ってたんですよ。そしたら、仕事の関係で早朝現地に居なくてはならないらしく、近場の適当な漫画喫茶で寝てたんですって。いやぁ情報屋って大変なんですねぇ」

聞いてみてもつまらないものだった。せめて女とホテルに入ったくらいの情報掴めよと言いたいものである。この社会では、寝泊まりする場所までいちいち見られてしまう程、機械的な目というのは隙が無い。「この調子だと浦安が何処ぞのハニトラ女と泊まったホテルの部屋番号から回数まで探られ、部隊(私ら)の情報を垂れ流しにする哀れな姿をみんなで見ながらサヨナラをしなければいけなくなるぜ。まっ、せいぜいヤリたきゃ雲の上でヤリな」というジョークを言いそうになったがやめておいた。

会話の内容から気になる事が見つかったのだ。

すぐに端末を取り出し、イベリスへ電話をかける。

「おいイベ、監視映像に奴が家に帰る姿は見られないのか?」

「見ないわよ、それも探したけどね。近くのホテルに泊まってる姿すら無い」

「死角に潜んでるから映らないんだ、無数の目を掻い潜れる死角だ」

「それも探したけど地下ですら難しいわよ」

「なら上だ、監視カメラは空に向けるもんじゃ無い」

「なに、飛んでいってるとでも?空を飛べる技を修行で会得したとか言わないでね」

「残したのは足跡だけじゃないかもしれないぜ」

相手は適合者であり、神器使いである。

常識に囚われては何も掴めないまま時間だけが経過する事となる。

それは適合者であるリナリアが一番良く解っているのかもしれない。

大袈裟に言えば空を飛ぶ事だってあり得るとまで想定しないと、この部隊では命取りになる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ