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現地の新聞にはこう記されている。
「アフリカの大地で人とAIが寄り添う」
支援AI"キャンディタフト"をフル稼働して検索をかけ、関連深そうなAI関連のニュースを集めたのだ。白黒の小さい写真には、現地の人と肩を組み写る白人が写っていた。
記事の内容は、AIの簡単な説明と運用方法、そして現地人の反応である。その傾向から見るに、これまでの話から浮かび上がったアーノルド氏の人物像と合致すると判断した。
彼はインタビューでこう語っている。
「僕たちは、僕たちそれぞれの視野で知るべき情報を知るために、壁と天井の無い場所で議論や討論をしたいのです」
彼が活動拠点としているのはケニアである。
赴くのは浦安とドン、それとリーシュも同行する事となった。
リナリアは「私は行かない、イワンのアホどもに襲われたばかりだ、なんかあったら噛み付く番犬が必要だろ?」との事だ。イベリスは言わずとも分かるだろう。
3人は直ぐに羽田発、ナイロビ行きのチケットを取得し、航空機に搭乗する。
ドンはひたすら映画を、リーシュは端末を弄っている。リーシュは慣れているだろうが、2人にこの長い航路は流石に堪えるであろう。
浦安は端末を見た。
搭乗時間を待つ中で、山田から送られてきた"手紙"を読んだ。
「不完全な民主主義をアップデートする為にはALMが必要だ、必ず良い方向に導いてくれる。権利無き権利者を尊重し、彼の視野で知るべき情報を知る事が出来る。そのはずだった。僕は1つ間違いを犯した。間違いを犯してしまったんだよ。だから僕は、権力を置き去りに罪を背負い歩き、今度は人の為に生きようと思う。勝手な僕を許してほしい、いや忘れてほしい。虫が良い事なのはわかっている。モーリス、君のことは忘れないでおく、よくたすけてもらったからね、それじゃあ」