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情報屋と平行して行動を起こす一行。
収穫を期待し、グローバル特区へと足を運んだのだが、なにも得られないでいた。
虚しく走るSUVを運転しているのは浦安だ。
「こんなところに来た意味ねぇな」
「大した収穫は無しっと」
湾岸を沿う有料道路を走るのは爽快だが、背後からの不穏な空気が緊張感を漂わせる。
「鬱陶しいな」
「譲ります?」
「1キロでも落としてみろ、シートごとロケットみたいに飛ばしてやるぞ」
「やめてくださいよ」
「辞めないぜ、ありゃ防弾仕様だ、それに悪趣味な黒塗りのセダンと来たもんだ」
「え?」
如何にもな風貌の怪しい車両がピッタリと後ろに着いている。
今日日、高排気量のマニュアル車など乗る輩は物騒な連中かカーマニアくらいだろう。
短い時間の中で大まかな作戦を決める。
部隊は個性派の集まりで、バラバラなイメージがあるが、不測の事態においても即対応の連携力を発揮すると流石と言わざるを得ない。
ステアリングを握る浦安の手に汗が滲む。
サービスエリアに入り撹乱、本線の後続車に紛れて合流する。
後方を確認するとセダンは遅れを取っていた。
「よくやった!スピード上げな!ステアリングに集中しとけ!」
喜びも束の間、本線の路肩で同種の車両に追跡される。浦安の右足に力が入る、なかなかの馬力があるSUVもこの時ばかりは非力に感じる。
ドンとリナリアは銃を取り出した。
横並びになると連中はアサルトライフルを構えて、一斉射撃を浴びせてきた。
「いきなり撃って来やがった!」
応戦する2人だがハンドガンとアサルトライフルでは部が悪い。
「てめぇ!だれに向かって鉛飛ばしやがった!あぁ⁉︎修理代持ってんだろうなぁ⁉︎」
リナリアは後部座席の割れた窓を肘で叩き落とし、怒鳴り声を散らす。
「ドン!マグナムよこせ!」
「昨日おろしたてなんだがね…」
BERETTA製のPX4とS&Wのピカピカのリボルバーを交換しリナリアは右、ドンは後ろの車両に対応する。
激しいマズルファイアを吹くマグナムは、セダンのボディをぶち破り、射手を仕留めていく。
今度は車体をぶつけてガードレールまで追いやられてしまった。浦安は助けを乞い、涙を流していた。
ドンが後続車のボンネットへ執拗に弾丸を撃ち込むと、煙を上げスピードが落ち、やがて見えなくなった。
「ボンネットも防弾にしとくんだったな」
残りの1台は勢いを付けて車体をぶつけてきた。
ガードレールを擦る激しい音と振動で照準が定まらない。
「冗談じゃねぇ⁉︎おい浦安!」
セダンは1度離れ、再び突進しようとする。
浦安は思いっきりブレーキを踏み回避すると、セダンは単独でぶつかり大破した。
制御を失いコマのようにスピンすると、やがて動きを止め、後は至近距離で的を撃つ簡単な仕事をするだけとなった。SUVもボロボロで煙を吹いていた。この無残な姿を見ると到底直るとは思えない。
項垂れるドンは頭の中で金の計算をしていることだろう。その後、遅れて来た残りの1台を待ち伏せし、捕らえた。
「ロシア人?KGBか?」
「いや、所属は不明だ。だが絡みはあるはずだ。」
「なんでロシアが介入してる?」
「奴らにとっても無視できない案件ってことだな」
「めんどくせぇ山だぜ」
生き残りは尋問の後、リーシュを通して連行された。