プロローグ
なんてことない日常をなんとなく過ごしてきた中学校生活。そんな生活とももうおさらばだ。明日は卒業式。だが、なんの思い出もないこの学校を卒業したところで通過点に過ぎない。
一ヶ月後には期待と希望を膨らませている高校生活が始まる。なにが1番不安って? そんなの友人ができるかどうかに決まってる。
なぜなら俺は今まで友人は出来たことはあるが全てこの残念な性格のせいですぐその友人も俺の前から姿を消した。
そんなこんなで中学校生活最後の日。卒業式を迎えるわけだが…
ジリリリリリリリリッ
狭い部屋に響き渡る騒音。とてもではないがこのまま寝続けるのは不可能だ。
「ん、んん!!朝か・・・・・・」
心の中は残念という概念だけが残る。朝になったことよりも卒業という実感が湧かないことのほうが大きい。
学校の準備をしながら歯を磨き、顔を洗い、
朝食を済ませると一目散に玄関へと向かう。
靴を履くと急ぐように玄関を後にした。
「行ってきまーす!! 」
キーン コーン カーン コーン
学校のチャイムが外まで聞こえてくる。
「おいおい!初めての遅刻が卒業式とかついてないぜまったく・・・・・・」
学校に着くなりすぐに体育館へ走って向かった。
体育館では校歌斉唱をしている最中で、
誰も遅刻した者が入ってくるなんて想像も付かないだろう。体育館の入り口をゆっくり辺りを見回すと、とてもではないが紛れ込める状況ではない事に気付いた。なぜなら、卒業生は1番前に座っているからだ。
「これは、詰んだな・・・・・・」
がっかりした表情をして体育館前に座っていると、なにやら視界に影らしきものが映る。
振り返ってみるとそこには肩にまでつかないが、やや長めのショートカットで表情は凛としているのにどこかあどけなさが残っている。
少女はこちらを見つめてくる。
「あの、もしかして君も遅刻したの? 」
静かに頷くと、またこちらを見つめてくる。
「俺の顔なんか付いてる? 」
少女は首を横に振ると少しずつ口を開く。
「ごめんなさい。じっと顔を見たりして」
そう言い残すと彼女は体育館の中ではなく
校舎の方へと姿を消した。
そして気づけば卒業式は終わっていた。
今はそんなことよりもあの少女の事だけが
気になって仕方なかった。