始まりの音色
初めてその音を聞いたのはいつだったか。
ただ遠い遠い昔に聞いたその不思議な音色は、いつまでも心に残っている。
まるで世界に溢れる笑い声を片っ端から拾って来て、それを結晶に収めたような、
それでいて、何時までも無くならない世の全ての醜い争いを嘲笑うかのような、
そんな音。
頭の片隅で、ふと気づけばいつもその音が鳴っていた。
その小さな身体を名一杯震わせて、僕はここだと叫ばんばかりに、
チリンチリン
と。
その音色はあまりにも儚く、しかし強く心に響く。
その音色を聞くと、幸せなのに、不安になる。
憂鬱なのに、希望が見える。
世界の片鱗でしかなかった自分の眠りを、そっと、優しく醒ましてくれる。
まるで運命を決める神様の笑い声のように。