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秀秋君、ロックで元和偃武は出来ないよ?

作者: 秋鷽亭

「何処だ此処わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


刻は、西暦1600年、徳川家康が天下に向け、豊臣家の切り崩しを図り、石田三成の挙兵を誘い、発生した関ヶ原の戦い。

その関ヶ原の松尾山に陣を張る、小早川秀秋が叫び声を上げた処から、物語は進みだす。


「殿、どうなされました!」

「殿だぁ~?」


秀秋に声をかけたのは、稲葉正成という人物。元々、豊臣秀吉に仕え、命を受け、秀秋に仕えることになった。ちょっと、残念な秀秋を支えるべく、平岡頼勝と共に、小早川家を支えていた。

しかし、この二人の態度に、元々、小早川家に仕えていた家臣は面白くなく、軋轢を産み出していたが、この二人、気にせず家内を差配していたので、秀秋とは違った意味で残念な人物であった。

正成と頼勝は、徳川家と陰で交渉をしており、石田三成の西軍にとっては、獅子身中の虫であり、秀秋にとってみれば、使い勝手のよい者たちであった。


「ちょっと、待て!今、整理する!」

「はっ」


(おかしい、オレは、コンサートをしている最中だったはず、朝から頭をかち割るような痛さだったが、テンション最高潮で、歌っていたはずだが、ここは……ん、あれ、自分が何者で、此処で何をしていたか、思い出してきたな……)


秀秋が、考え込んでいる横で、正成と頼勝はひそひそ話をしていた。


「はぁ~、またこのバカ殿は、意味の分からないことを……」

「正成殿、もう少しの辛抱です。この戦いが終われば、あとは、あれは、遊ばせておけばよいのです」

「分かってはいるが、勘弁してもらいたいわ。太閤殿下も、もう少し、教育してくれれば良いものを」


(ああ、オレって、小早川秀秋って言うのか、確か、関が原で徳川に付いたけど、結局発狂して死んだってやつか……残念すぎるじゃねぇ~か!くそ親父に勉強を強要され、進学校に行ったけど、ストレスが半端なく、狂いそうになった時に聞いたあのロックに助けられ、歌を始め、コンサートを開くところまで来て、これか!)


「ちくしょう!!!」

「と、殿!?」

「五月蠅い!黙ってろ!」

「し、しかし、もうすぐ、黒田様からの依頼で、大谷勢に突入する時刻になります」

「知るか!そんなものほっとけ!」

「い、いや、それは!」


(ウザいな、このおっさん、裏でこそこそしやがって、秀秋が死んだのこいつらの仕業じゃないか?徳川と裏工作してやがること考えたら)


「小早川様、大谷勢への突入をお願い致します」


慇懃無礼な態度で、秀秋と正成・頼勝の会話に入っていた武士に対して、秀秋はムッとした表情を見せ、正成、頼勝は苦虫を噛み潰したよう表情をした。


「誰だ、こいつは?」

「殿、黒田様の使者でございます」

「黒田?なんで、他人の陣に、我が物顔で居ているんだ?えらい、調子こいてんな?あぁ?」

「と、殿、黒田様の使者に、なんと無礼な事を!」

「正成、お前、誰の家臣だ?ん?黒田の顔色みるなら、黒田の家臣か?なら、此処から出て行けや」

「な!?」


秀秋の言葉に、顔を真っ赤にさせ、正成は黙ってしまった。その姿を見て、頼勝は深く大きなため息をつく。

喧嘩腰に言葉をかけられた武士は、見下したような表情で秀秋を見つめていた。その表情を見て、秀秋は、カッとなり、座っていた椅子を持ち上げ、その武士に投げつけ、武士は辛うじて、椅子をかわすことに成功した。

まるで、子供の喧嘩のようである。


「何をなさいます!」

「あぁ?お前、オレのこと、バカにするような目で見ていたよな?えぇ?」

「そのようなことは」

「うるせぇ!言い訳してんじゃねぇよ!ばれねぇ~とでも思ったか?それとも、黒田の家臣は、この俺よりも偉いのか?黒田に俺が仕えてるのか、言ってみろ!」

「何をバカなことを……」

「はっ!正成!頼勝!こいつを放り出せ!」

「「な!?」」

「それは、小早川家が徳川様を裏切るということでしょうか?」

「おい、カス!いつから、オレが徳川の家臣となったんだ?言ってみろよ!」

「もう一度お聞きします。徳川様」

「もういい!」


秀秋は、そう叫ぶと、ぐうたらで、無精で、軟弱者とのレッテルに見合わぬ速度で、武士に近づき、かわすことが出来ない速度で、顔面にこぶしを叩き込んだ。叩き込まれた武士は、吹っ飛ばされ、気を失って倒れることになる。

正成と頼勝は、それを見て、真っ青になり、立ち尽くすことになる。なかなか有能な二人ではあるが、先の事を考えると、このまま気を失ってしまいたいと思ってしまった。


「おい!このボケをどっかに転がしておけ!」


秀秋の命令を受け、兵が武士を担ぎ出していった。ちなみに、担ぎ出された武士は、身ぐるみをはがされ、ふんどし一丁で、小早川の陣から追い出されることになる。


小早川家の本陣が混乱している間に、松尾山の眼下では、宇喜多軍と福島軍が死闘を繰り広げ、大谷軍と平塚軍が藤堂家、京極家と激闘を繰り広げていた。戦い自体は、五分五分に見えるが、西軍は、毛利軍、小早川軍など、大軍は動いておらず、徳川軍も本体は動かず、状況は膠着状態に近くなっていた。

その状況に、徳川家康は、不機嫌な表情をしていた。謀略を駆使し、手紙を大量に書いたのに、決定的な動きがない事に、腹を立てていた。歳を取って、少し、気が短くなった狸親父だった。


「正純」

「はっ」

「小早川軍は動いておらぬのか」

「動く様な気配はありませぬ」

「長政は、父親の如水には勝てぬか……」

「……」

「如水であれば、動く気配があっても良いのだがな、奴を過大評価しすぎたな。鉄砲隊を、小早川軍に向けて攻撃させろ」

「しかし、それでは、こちらに攻撃をしてくるのではないでしょうか」

「お前も、正信を越えれぬな」

「……」


家康の一言に、正純は歯をかみしめ、下を向いた。本多正信は、家康と意思疎通が不思議なほど取れ、家康の考えることを正信は理解し、そのうえで、策略を献策する不思議な老人だった。


「攻撃すれば、秀秋のような小僧は震え上がり、稲葉や平岡は慌てて、大谷を攻めるように秀秋に言いよるわ。小物とは、その程度のものよ」

「……では、鉄砲隊を、差し向えさせます」


家康は、その言葉に軽くうなずき、前面で繰り広げられている合戦を眺め、親指の爪を噛むのであった。




バン、バン、バンと、鉄砲の音が、小早川の陣に打ち込まれた。敵方が攻めてきたかと、兵は陣を固め、警戒をするが、それ以上の攻撃はなかった。


「重元殿、あの攻撃はいったい何であろうか」

「親次殿か、分からぬ。そもそも、100人程度の部隊の攻撃では意味はないろうし、後続の兵も見当たらない」

「そうだな。ただ、この時分になっても、攻撃指示がないことを考えたら、徳川方の攻撃は、何かの合図にも見えるが……」

「確かに、この段階で、西軍に寝返るなぞ、馬鹿馬鹿しく思うが、家名存続を考えれば、それもあり得るか」

「俺としては、そのような恥ずかしい真似はしたくはないが……」

「そう言えば、家中の者ではない奴が、ふんどし一つで、追い出されたと、話を聞いたが、知っているか?」

「知っている。それも、俺は見たことあるやつだった」

「ほぉ、誰だ?」

「名前まで知らぬが、黒田家の家臣だ」

「黒田家か……」


志賀親次、松野重元が話をしている目の前には、赤座家、小川家、朽木家、脇坂家の軍が陣を張っているが、未だに、東軍に攻撃する気配がなく、陣を固めていた。

そこそこの武将なのに、こそこそしか出来ない、小大名のさがなのかもしれない。




「おい!徳川の幟から攻撃してきやがったぞ!」

「殿!徳川様が、西軍に攻撃するように、催促しているのです!」

「そうです。早く攻撃を!そうすれば、先ほどの件も、不問にされます!」

「はぁ?お前ら、さっきの武士の態度見たのか?自分の親分が、バカにされて、腹を立てないって、どういうことだ?やっぱり、お前ら、徳川家の家臣か?あぁ?」

「違います!今ここで、西軍を攻撃しなければ、小早川家が滅びます!」

「その通りです!この戦い、西軍の負けです!」

「なんで、そんなこと分かるんだよ?」

「石田は、稚拙な工作を仕掛けるしか手を打っていません」

「オレに関白の座を与えるとかだな?」

「その通りです。ほかの大名には、加増を約束していますが、石田は所詮、元奉行職、大名に加増をする権限なぞありませぬ」

「また、毛利家にも徳川様は、手を打っているはずです。その証拠が、南宮山から毛利家が下りてきていないことです」


秀秋の東軍参戦を必死で、薦める正成と頼勝は、正確な分析と状況を持って説得を試みる。この言動を考えると、無能とは思えないが、しかし、残念な気持ちがぬぐえないのは何故だろう。


「ふん!だが、徳川は……いや、家康は、オレに喧嘩を売った!」

「と、殿!早まってはいけません!」

「あぁ?ロックは、反骨!権力者をブッ飛ばす!これこそ、ロックの醍醐味じゃないか!」

「ろ、ろっくって、なんですか!?」

「こうなったら仕方ねぇ!この時代で、ロックを広めて、オレが一番になってやる!その為には、こんなくだらなぇ~、権力争いなんぞ、ブッ飛ばしてやる!ロッケンロール!ヒャハー!」

「と、殿が壊れえた!?」

「だ、誰か、殿が乱心した!押さえろ!」

「バカ野郎!てめぇ~らは、誰の下についているだ!正成か!頼勝か!オレか!どっちなんだ!」


正成、頼勝に呼ばれえて、陣に飛び込んできた兵は、当初、秀秋を抑えようとしていたが、秀秋の一喝で、その行為を止めて、様子をうかがうことにした。

人間日和見が一番なのかもしれない。


「正成!頼勝!てめぇ~ら、付いてるものついてるなら、藤堂、京極にぶっこんで来い!」

「ついてるものって、何ですか!」

「仕えている奴の命令が聞きたくないなら、此処から出て行け!」

「「なっ!?」」


秀秋の怒声を聞いて、正成、頼勝は、頭を抱えた。秀秋を見捨てることに問題はないが、今、離れたとしても、手勢も少なく、離れた瞬間、小早川軍から攻撃され、討ち取られる可能性もあった。また、関ヶ原が西軍勝利になった場合は、処刑されることも考えられる。

結果、人間、わが身が可愛いという事になる。


「分かりました。藤堂、京極に攻撃を行います」

「おぉ!攻撃してきた落とし前、きっちり、家康に着けさせてやれ!」

「前面の赤座家、小川家、朽木家、脇坂家は、どのようにしましょうか」

「使者を出して、先陣として、藤堂、京極を攻撃するなら攻撃させろ。敵対したら、落とし前つけろ」

「はっ」

「分かってると思うが、大谷に攻めるなよ?攻めた瞬間、お前ら、落とし前つけさすからな?」

「「分かっております!」」

「よし、行け!」


秀秋の命を受け、正成は、前面の四家に使者を出し、即刻、藤堂、京極に進撃するように依頼を出した。頼勝は、前線の重元、親次に指示を出し、前面四家の動きに合わせ、兵を進める事、いち軍を割いて、藤堂、京極の背後を攻撃することを命令する。

何の間の言っても、二人とも動くときは動くのであった。



笹尾山の石田軍では、小早川軍の動きを察知していた。島左近は、小早川家と黒田家の動きを察知しており、大谷吉継からの話もあり、寝返りの可能性を三成に報告していた。三成は、その報告に対し、豊臣一門が、徳川家に通じているとは信じてはいなかったが、左近と吉継の話もあり、警戒は強めていた。

死闘、激闘の中、一進一退を繰り返しており、小早川軍の行動で、決定的になると三成は考えており、進軍の情報を受け取っていた


「殿!小早川軍が動き出しました!」

「左近!どっちに動いておる?」

「未だ、分かりませぬが……」




桃配山の家康は、秀秋の事を見下しており、早く動けと苛立ちながら、親指の爪を噛みまくりながら、報告を待っていた。

ついでに貧乏ゆすりもしているのを、正純は見て見ないふりをして報告をする。


「殿、小早川軍が動いたようです」

「大谷に攻め入っているか?」

「動いているだけで、まだ、確報は入っておりませぬ」

「ふむ、確認を急げ、万が一という事がある」

「はっ」




「わっははははは!家康に落とし前つけさせて、とっとと、こんな事終らせ、ステージを作るぞ!あ、そうだ!武道館を作ろう!今なら、チョーでっけぇ~の作れるぜ!野外ライブも良いな!」


松尾山では、秀秋が叫び声を上げながら、兵士が若干引いているのに気が付いていない。いや、それ以上に、ロックの演奏をするためのギター、エレキ、ドラム、音響関係などないことにも気が付いていない。ちょっと、残念な秀秋が、関ヶ原の決着をつけるべく動き出すのであった?


某企画で、自分が投票した方で考えていたものを、思い付きで書いたので、不備があったらすみません。

某企画では、落選した人物になるですが、其処は、気にしない。


気が向けば、短編削除して、続き物にするかもしれませんが……

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― 新着の感想 ―
[一言] 続きが気になる。 短編数話でも良いのでざっとでも最後までの流れを読みたいです。
[一言] 是非とも続きが読みたいです!!
[良い点] 勢いがあって素晴らしいです。 [一言] いつか続きが読めることを信じて、待っております!
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