茶化さないでよ
「あぁ、ぁ、ぁぁ、ぁ……」
声が上手く出ず、カハッと乾いた音だけが喉から漏れる。
『わ、私、今までどうやって……」
混乱してしまい、苦しみが体中を蝕むような錯覚に陥いる。近くにあった机に手をつき、そのまま膝が折れてしまう。
「ぁ、ぁ……」
呼吸が出来ない、視界が歪む、誰か助けて……。
「……するぞ」
唐突に浮遊感を覚える。滲む視界の先には、私を抱き抱えた男性がいた。
「ぁっ」
彼の口から、私の中へ熱いのが流れ込んでくるのがわかる。そして徐々にソレが肺を満たしていく。
「大丈夫だ、すぐに落ち着く」
薄れゆく意識の中、その言葉を聞いて安心した私は意識を手放した。
「もぅ、やめてってば!」
「アハハハハ、だって緊張して呼吸の仕方がわからなくなったってアンタ、今時そんなのいないわよ」
私の友人があの時の事を思い出したのか、突然語り出したのだ。
「もーばかばか」
「でもでも、アハハ、その御陰で無事くっついんだよね」
そうなのだ、私は好きな男性に告白しようとした瞬間、緊張の余りに呼吸の仕方を忘れてしまったのである。そんな乱れた私をみて、彼はそっと私の唇を重ねた。私を助けるために、彼は息を私に吹き込んでくれたのである、それは凄く暖かくて……。
「は、恥かしい……」
私の隣にいる彼は、私の頭を撫でながら微笑んでくれる。
彼は、今日も私を守ってくれてます。