第6話 その名前、シャレなのかしら
やってやろうじゃないのよ。絶対エイトとアベック優勝を決めてやるんだから・・・それにしてもこのお部屋、広いわねぇ。私一人でどう使えというのかしら?もっと質素な感じでもよろしかったのに。おほほほ・・・
やってらんないわよ!いつまで猫かぶればいいのよ!自分がわかんなくなってきたわ!は!ダメ!ダメよ!こんな汚い言葉はわたくしに似合わないわ!捨てなきゃダメ!本当の自分はもっとこう・・・し、しお?そうそう、しおらしいのよ!しおらしくて・・・おしとやかで・・・しおらしいってどういう意味だったかしら?
まぁいいわ。とにかく・・・あらら!武闘大会に出てどこでしおらしさを発揮したらいいの?
あら?誰か来たわ。はい。あなたは・・・どちら様?え?メイド?それは見た目でわかるけれど・・・お願いがある?なにかしら?あっお入りになって。ああ構わないで大丈夫よ。
えぇ!なに突然?だってエイトは私と、えぇ!あなたはエイトとお付き合いをなさっているって?冗談キツイわよ。あなたも、あなたも武闘大会に出るの?なぜ?エイトとアベック優勝をするためって?それは私が、それならばどうしてエイトは私を大会に誘ったのかしら?ありえないわ!
えぇ?エイトのご両親がメイドとは結婚させられないと?それで武闘大会に勝った女性と結婚をさせる?訳がわからないわね。怪力女がお好みなのかしら?エイトも何を考えているのやら。
あぁメイドさん、あなたのお名前を教えていただいてもよろしいかしら?メイド・レスカ・アバロン?あら名前もメイドなの?できるのならあなたのご両親のお顔を拝見したいわ。
さて話を戻すと、あなたは武闘大会で優勝をしてエイトのご両親に結婚を承諾してもらいたいと、そういう事ね?
わかったわ。手を引かせていただくわ。王女様はエイトのことが好きでいらっしゃるんでしょうって?いいのよ。私は涙を飲むわ。
あぁでも困ったわ。一緒にお城に来たクァイルがいたでしょう?そうぶっさい・・・ペリーゼ家の王女よ。彼女と勝負する約束をしてしまったの。でも、放棄したくないし。
そうだわ!クァイルとは勝負するわ!でももしもあなたと対戦をすることになったら、私は負ける。これなら大丈夫よね?ありがとうございますって、あなたは本当に腰が低い方なのね。ほらほらそれ以上腰を曲げると折れるわよ。
もしクァイルと対戦する前にあなたとぶつかったら私は負けるけれど、絶対クァイルは倒して!他はどうでもいいわ、クァイル狙いでいって!あっあなたは優勝をするつもりだったわね。
そういうことならあなたも一緒に特訓をなさらない?え?私のようなメイドがあなた様とご一緒していいわけがございません?あなた!それでも優勝する気はあって?そんなことではクァイルを潰せ・・・優勝なんてできないわよ!私がなんとかするわ!だから一緒にがんばりましょう!ちょ、どうして泣いているのよ?こんな素晴らしい方に会ったことがないって、嬉しいこと言ってくれるじゃない?
あっ?足音が聞こえてきたわ!ええそれじゃあ後で。
ノックしたわね。はい?どちら様?もしもし?なぜ返事しないのかしら?もしかして、セバ・・・名前を言いたくないわ。無視をしておきましょう。え?誰?セブですって?ちょっとお待ちになって。どうぞ、入ってらして。
お話があるって、一体なにかしら?クァイル?クァイルがどうしたの?クァイルをどうにかしてくださいってどういうこと?勝手にあなたとアベック優勝すると豪語している?私が好きなのはマリー、あなたですって?!
それはわかっていたけれど、それならばそうとはっきりおっしゃらないと、クァイルにも失礼よ?言った?あらおっしゃったの?それじゃあどうしてクァイルはあんなにやる気満々なの?わからない?そう、クァイルは時々意味不明な言動をとるのよね。
それで私にどうしろと?優勝してくださいって?そうすればクァイルは諦めるはず?そう、でも私は優勝できないの。どうしてって、あなた、見てわからない?こんな華奢な体で優勝できると思って?それにこういうものは優勝どうのではなくて、出場することに意義があるの。おわかり?
暗くなったまま無言を貫いているわね。何も言わないつもりかしら。それならば私だって黙りこくってやるわ。「沈黙の女王」と呼ばれた私を甘く見ないで。
・・・・・・・。いつまでそうやって下を向いているのかしら?いいかげん眠くなってきたわ。そろそろ言葉を発しようかしら?ちょっとセブ?・・・って寝てんのかよ!なんだよこらぁ!おふざけんじゃねぇわよ!きゃぁ!なになにカーテンが勝手に揺れたわ!絶対セバスチャンね。あんた!出て行ったんじゃなかったのかよ!
武闘大会で優勝してくださいって?なんでよ?王女の怪力を見せつけてやりましょうってあんたそれ嫌味?この体のどこに筋肉があるっていうのよ?そりゃあ適度な筋力はあるけれど、ムキムキではないわよ。
えぇ?なによあんた、私の全裸見たことあるわけ?三歳の時お風呂に入れたことあるって?あんたバカじゃないの?それから何年経ってると思ってんのよ。二十ウン年経ってる?私の年齢バレバレじゃない!?
あんたがいるだけで私の笑顔が消え失せるわ!お願いだからお城に帰ってよ!それに残念だけど私、彼と結婚するつもりはないのよ。彼には心に決めた方がいるの。え?敗者の戯れ言?ちょ、マジで殴るわよ。
ご両親に反対をされているそうなのよ。誰かって?あんたに言えるわけないでしょう?信頼してくださいって、無理よ。思い込みも甚だしいわね。私は一度たりともあなたを信頼したことはないわ。そうよ覚えておいてって、人の話を聞けや!ドアから出て行くなよ!窓からダイブしろや!
あら、セブ。起きたの?大きな声が聞こえた?自分の寝言で起きることってあるのね。ええとてもうなされていたわ。起こしてくださればよかったのにって?私はそんな優しさに満ちあふれてはいないわ。
申し訳ないけれど一人にさせてくださらない?少し考えたいことがあるの。ごめんなさいね。え?まだいたいって?もうすぐクァイルがこちらに来るけれども、それでもよろしくて・・・行ってしまったわ。素早い身のこなしね。クァイルに同情してしまう私ってなに?
はぁ疲れたわ。武闘大会ねぇ、なんだか面倒くさくなってしまったわ。よく考えてみたらもう私が出場する意味がないじゃない。帰ってしまおうかしら。でももう外も暗いし、今日は寝た方がよさそうね。それではおやすみなさい・・・。
誰!ノックしてるの誰!あ〜せっかくウトウトしてきたのに!誰よ!入れよ!もうわかったから入れよ!はっ!いけないいけない。ど、どうぞお入りになって。
あら、エイト。どうしたのかしら?え?これから特訓をするって?ごめんなさい、よく聞き取れなかったわ。え?だから、声が少し小さくて・・・うるさ!ええ聞こえたわ!特訓ね!特訓!
こんなに夜遅くに?この時間に特訓するのが効率がいいの?ありえないわ。えっあぁごめんなさい。でも今日はもう疲れてしまったの。ええ、それではおやすみなさい。
本当にやってられないわ。なんだか・・・は、ハエが・・・邪魔!口に入った!なんでこんなハエ多いのよ!さっきまでこんなにいなかったじゃない!セバスチャン!てめぇどこにいやがる!どんな嫌がらせだよ!出て行ったんじゃなかったのかよ!なによ!言いたいことがあるならさっさと言いなさいよ!そして消えなさい!
行ったわね。あぁエイトにメイドの事を聞くのを忘れていたわ。明日帰る前に聞いて、そして往復ビンタを食らわせましょう。それじゃあおやすみなさい。