第4話 行くわよ
お城までは一時間くらいだから、ゆっくりでも22時までには着くはずね。でも王女を一人で行かせるなんてひどいわよね。お姉様が一般庶民になったらランラン家の発展を望むにはこの私しかいなくてよ?それなのに何この対応は?言っちゃなんだけど、私ははっきり言って美人よ?こんなに高いドレス着て、盗賊が黙っちゃいないっつーのよ。
ってうわさをすればなんとやらね。ガラ悪すぎの三人組が来たわ。まったく売れない映画に出てきそうなありきたりな野郎共よ。
そんな高そうなドレスを着て一人で馬に乗ってるのはおかしいって、どうして初対面の人にそんなダメ出しされなきゃいけないの?お金?ないわよ。いい?今私は急いで行かなければならないの。わかる?お金が欲しいなら働きなさいよ。そうすれば嫌でももらえるから。仕事がないからこうして私からお金を巻き上げようとしてるって?それじゃあ飢え死にしてしまいなさい。
ちょ、引っ張らないでよ!痛!馬から落ちてお尻を打っちゃったじゃない!あぁドレスに泥がついたわ!クリーニング代高くつくわよ、このドレスはそこらのクリーニング屋には扱えない代物なのよ。いちいち外国に持って行って洗ってもらうの。じゃあそのドレスを置いていけって、それじゃ私パンツとシャツだけになっちゃうじゃないの。あんたの服となんて取り替えたくないわよ!ってあんたそのヒゲ面でこのドレスを着る気なの?頭おかしいでしょ?
ちょっと、破れる!破けたらそれこそ高く売れないわよ?自分で脱ぐから!まったく、しゃべりすぎて唇が乾いてしまったじゃないよ。
ふぅ、随分好き勝手言ってるけど、私がテコンドーの達人だって知ってらして?あなた達なんてご・・・えっと10秒でのしてさしあげてよ?やってみろって?はっ、ちゃんちゃらおかしいわ。あなた達に私の華麗な足技を使うのはもったいな・・・そりゃあ!うりゃあ!太郎!
飛び乗り大成功よ!太郎!あんな臭さ百倍の盗賊を振り切ってやって!
は、速い!そして荒い!でも・・・よし盗賊は追って来てないわ。こんな山道で下着姿のまま馬に乗ってたら恥よ、大恥だわ。ちょっとドレスが汚れてしまったけど仕方ないわね。あら?後ろから蹄の音がする・・・もしや盗賊が追って来たかしら?あれ?違うわ、誰かしら?
セバスチャン?あんた何やってるのよ?私が心配で来た?じゃあ馬車引いて来いよ!なんであんたも馬の背中に乗ってやってきてんのよ!しかもどうして心配してなのよ?あなたは今自分の事で精一杯でしょう?私が一人で行ってしまったら誰がツッコミを入れるのですかって、お前がボケだろが!
ついて来なくていいわよ!あんたがいたらエイトとの縁談話もおじゃんよ。って何変な顔してるのよ。そんなの初めからないって、あんた谷底に蹴り飛ばすわよ?
でも、どうしてもついて行きたいというなら仕方がないわ。ついてらっしゃい。ってそんな嫌な顔をするなら初めから来るんじゃないわよ!私あなたと違って忙しいの。来るなら勝手についてらっしゃい。
セバスチャンのやつ、私について行って点数稼ぎをするつもりなのかしら?そりゃあ私はランラン家の大事な娘ですからね。お父様が護衛を頼んだのかもしれないわ。でもセバスチャンを来させたのは失敗だったようね。何の役にも立たない執事をよこすなんて、お父様も相当気が滅入っている証拠よ。
周りも真っ暗ね。急いで行きましょう。またどこぞの盗賊が来るやもしれないわ。セバスチャン!飛ばすからついて来られないならお戻りなさいっておらぁ!いねぇじゃねぇかよ!なんか言ってから帰れや!独り言を言わすな!
太郎!あとはこの道をまっすぐ行けばいいだけよ!はいやー!よっし!とっても速い!この坂を越えたらもうお城はすぐそこよ!あっちょっと!ちょっと止まって!
今林の方で何か見えたわ。何かしら?太郎、ちょっと良い子で待っていて。
すいません、どなたかいらっしゃって?あら、見間違いかしら?おかしいわね。たしかに何か今、人影が動いたように見えたんだけれど・・・あ!クァイルじゃない!どうしたのよこんな山道で!え?セブのお城に行こうと思って衛兵に馬車を引かせて走っていたら、盗賊に貴金属を盗られて衛兵が馬車でさっさと逃げた?さっきの三人組かしらね。グッジョブよ!いえいえなんでもないわ。ひどい事するわね。でもクァイルは無事でよかったわ。私もついさっき盗賊に遭ってこのドレスを置いていけって言われたのよ。あなたは?ああ言われてない?まぁ当然でしょうね。あぁこっちの話だから気にしないで。
このままここにいても凍え死にするわよ。とにかく私の馬に乗って行きましょう。えぇ私も丁度セブのお城に行くつもりだったの。違うわよ、私はエイトに会いに行くのよ。セブとはなんでもないから心配しないで。
ほっとした顔してるけど、きっとセブはクァイルが嫌なのよ。それなのにお城に行こうなんて迷惑な。セブに同情するわ。って私も今からエイトのお城に行くところなのよね。でも、私とクァイルは違うから。おほほほほ。
さぁ、急ぎましょう。馬の背中に乗ったことがない?大丈夫よ、この馬はこう見えて優しい馬なの。知ってた?馬は本来犬より優しいのよ。ただ大きいだけ。さ、行きましょう。
しっかりつかまっていてね。ウエストが細くて羨ましいって?そんな、こんなの普通じゃない。今何か低い声でぶふふって聞こえた気がしたけど、セバスチャンね。あの野郎、どこに潜んでやがる。見つけたらネリョチャギを食らわせてやるわ。
あれ?なんで太郎すっごいゆっくりなの?さっきはあんなに速かったのに。そうか、クァイルが重くて思ったように走れないのね。ごめんね太郎、後でニンジンたくさんあげるからがんばって。
よしよし、下り坂だからなんとか行けそうね。あっ見てクァイル。お城が見えたわよ。そういえばあなたセブと何か約束でもしてるの?してない?突然行って驚かせてあげようと思った?それはあなたの顔でって事?あらごめんなさい。そういう意味じゃなくてよ。
ねぇクァイル、あなたペリーゼ家の一人娘なのよね?あなたがセブと結婚したらお父様は寂しがるんじゃなくて?とっても寂しがると思うって、せいせいするの間違いじゃないの?
ゴフッ。今軽くボディブローした?言っておくけど、私がちょっとムチを入れたら太郎はあなたを振り落とすかの如く走り出すわよ?それでもよろしくて?この際だからはっきり言っておくわ。私は他人に厳しく自分に甘くがモットーなのよ。あらら、急に黙りこくっちゃったわ。言い過ぎたかしら?まぁいいわ。
なに?マリーはどうしてそんなにモテるのって、どうしたの突然?セブはきっとクァイルではなくて私の事が好きなのよって(わかってるわよ)そんなことないわよ。セブと話をしたとき、あなたのことが気になって仕方がないって言っていたもの。本当よ。鼻の穴が広がってる?私嘘をつくとこうなるの。気にしないで。
私はエイトの事が気になっているのよ。できることなら結婚をと考えているの。そんなに驚かないでよ。私ももう嫁いでもいい年齢よ?あなたもね。よく考えたら私とあなた2歳しか離れていないのよね、しかも私の方が年下。どうしたらそんな幼稚でいられるのか不思議よ。なんでもないわ。