第12話 朝っぱらから疲れるわ
もう朝なのね?歳のせいかしら、なんだか一日が猛スピードで駆け抜けていく気がするわ。
誰かノックしたわね。どうぞお入りになって。あら、メイドじゃない、あなた新入りね?
10年以上います?ごめんなさい、いちいちメイドの顔を覚えていられるほど暇じゃないから。
それで、こんな朝早くから何か用かしら?お姉様がドレスを着て待っている?ちょっと待って、パーティは夜からよ?
ドキドキして眠れなかったみたいで、昨日届いたドレスを着て、夜中起きてたって遠足前日の子どもか!一体何を考えているのよ!そんなんじゃ目の下にクマができるじゃないよ!あなた!メイクはバッチリお願いね!ついでに私もお願いね。
そんな興奮することなのかしらね。あぁそうか、お姉様はパーティに出席したことなかったのよね。張り切るのも無理ないわ。でもパーティの時はおしとやかにしていないと、未来の旦那様になんて巡り会えやしない。それじゃ今夜の為にお姉様の所へ行きましょうか。
お姉様?いらっしゃるかしら?
きゃあ!化け物!物の怪!衛兵!いないの?近づいて来るわ!ってお姉様?その顔どうなさったの!?
自分でメイクをしてみた?早く落として!クレンジングはどこ!メイド!お姉様に悪霊が乗り移っているの!早く成仏させて!痛い!
思い切り頬を殴られたわ!悪霊の仕業よ!痛い痛い!わかったから!悪霊なんていないわ!いいからそのお化粧を落としてらして!
悪いけどその顔のままパーティへ行く気ならば、この私が体を張って止めるわ!
メイドがお姉さまを連れて行ってくれたわね。あぁでもどうしてあんな顔に?いくら張り切っていたからと言って、あれは酷すぎるわ。どんだけケバくすれば気が済むのよ。あんなんじゃ男性どころか人一人寄りつかないわよ。
お姉様に負けじと私も早速ドレスに着替えたけど・・・とても似合っているわね。まぁ自分で言うのもなんだけどね。
あっお姉様、あららさすがメイドね。ピッタリのメイクを施してくれたわ。ついでに私もお願いね、あぁ私は後でいいから。
それにしても、お化粧ひとつで女は変わるものなのね。
まぁ私は化粧をしてもしなくてもこの通り、べっぴんさんですけどってメイド!あんたお腹抱えてどうしたの?
朝に食べた明太子が腐ってた?それならお腹が痛いはずなのにどうしてあんた笑ってるのよってお姉様!
あんたはどうして私に口紅を投げてくるのよ!ドレスに口紅が!真っ赤なルージュが!これじゃ恥ずかしくて表に行けないわ!他のドレスをお持ちいたします?さすがメイドね、超マッハでお願い!
っておらぁ!口紅がついた場所にワッペンつけただけじゃないのよ!面白くないわよ!なんで笑ってんのよ!
もうせっかくお気に入りのドレスを買ったのに!他のドレスは?クリーニングから戻ってきたでしょう?
また全て池に落とし・・・もとい落ちた?落としたって言ったよこいつ!
あんた自分がパーティに行けないからってひがんでるんでしょう?行きたいならば行きたいと言えばいいでしょ!
行きたい?メイドとして連れて行ってあげるわ!
痛い!なんで裏拳?連れて行くって言ったじゃない!ドレスを着たい?あんた私のドレスを池に捨てておいてよくそんな事が言えるわね。いいわよ連れて行くわ。
でもこれだけは約束して。私の足を引っ張らないでね。
その言葉そっくりそのまま返します?殴るわよ?ってその前にあんたドレスどうすんのよ?そのメイド服しか持ってないでしょ?
昨日買って来た?支払いお願いしますってボケぇ!あんたねぇ、一国の王女にドレス代支払えって何よ!メイドのくせにいいご身分だ事ね!
ねぇお姉様・・・ちょっとどうしたの?どうしてそんなに青い顔を!
昨夜からずっとドレスを着ていて気分が悪くなった?意味がわかんないわよ!だったら脱ぎなさいよ!パーティまでまだ時間あるんだから!
一人で脱げるわけないじゃないって逆ギレ?
メイド!あんたお姉様がドレスをお脱ぎになるから手伝ってちょうだい!私は別のドレスを買いに行くわよ!