第10話 仮面が似合うって、誉め言葉ではないわ
あ〜よく寝たわ。あららもう夕方になってしまったわね。お姉様もまだぐっすり寝ていらしてるし。
あっ着いたのね。お姉様、お姉様、お城に着きましてよ。さぁゆっくりお風呂に入ってワインで乾杯いたしましょう。
メイド!メイドはいるかしら?あぁいたのね。
ってあなた!私のドレスを全て池に落としたのによくものうのうと仕事をしていられるわね!違うドレスを用意した?最高だわ。それでは汗を流した後にそのドレスを着させていただくことにするわ。ええありがとう。お姉様、さあ早くお風呂に入ってらして。
少し暗いお顔をされていたわね。まぁ仕方ないわね、婚約破棄したんだから。笑っていられる人なんてそうそういないわよ。
っていうか私も早く旦那様を捕まえなければならないわね。夢を見てもいい年頃はとうに・・・まだまだ過ぎてはいないけどね(笑)ってちょっと!なんで(笑)がついてるのよ!いらないから!(笑)いらないから!これじゃあ怒ってるのかなんなのかわからないじゃないよ!もういいわ!シャワー浴びるわ!
ふう、気持ちよかった。ってちょっとメイド!なによこのドレスはっていうかこれメイド服じゃない!私にこんなものを着させるなんてどういう事よ!ドレスがなかったから?あなたさっきドレスを用意したって言ってたじゃない。
すべて池に落ちた?あなた本気で、本気と書いてマジで解雇するわよ?私の言葉がわかるのなら早くドレスを用意しなさい!ないのならお姉様のドレスでいいから!妥協するから!痛い!あっお姉様聞いていたの?そんなに怒らないでくださいまし。お姉様のドレスが嫌ということではないのよ。ただお姉様がお選びになるドレスは、流行の「り」の字もないだけなの。
イタッ!ちょっと本気で殴ったわね?ホッペが痛いわ。加減という言葉をご存じなくて?
まったく、あぁワインね。ありがとう。さぁお姉様乾杯をいたしましょう・・・そんな気分ではないって、こんな時だからこそ乾杯をするのよ!どうしてって、野暮な質問は一切受け付けませんわ。
かんぱーい!あぁ、おいしいわぁ。このワインはとてもおいしいわ。まぁいつも飲んでいるワインですけれど、って言ってももんのっすごい高価なワインですけれどね。
ちょっと、メイド、もう出て行ってよろしくてよ。何かあったら呼ぶから。いいから、行っていいから。なんだかすごく私の顔を直視しているわね。
ワインが飲みたいのかしら?言っておくけれど、あなたのような下級戦士・・・庶民は飲むことが許されない代物なの。
イタッ!コルクが額にストライクよ!あなた!いくら私が羨ましいからとこんな仕打ち・・・もう許すことはできなくてよ!衛兵!衛兵!このメイドは解雇よ!今すぐこのお城から連れ出しなさい!恨むなら今の国家を恨むのね!所詮庶民は王族の者には敵わないのよ!
イタッ!コルクはもういいわよ!
まったく、私を誰だと思っているのかしらね。この王国の娘なのよ。ちょっと甘やかし過ぎてしまったのかもしれないわ。お姉様、聞いてらっしゃるかしら?独り言を言わせないでいただきたいわ。
・・・ちょっとお姉様?ぼーっとして、口が半開きよ。王女ともあろう方がヨダレを垂らすなんて。
考え事?何をお考えになっていたの?ジェフのこと?もう会うことはできないでしょうねって、そうね、再会することはきっとないわね。庭師の仕事も辞めるだろうし、セバスチャンも解雇されるだろうし。
あぁお姉様、そんな悲しいお顔を見せないでください。お姉様にはわたくしがついていますわ。汚い!どうして唾を吐いたのかしら?何か不満があって?
ダンスパーティに行きたい?話が唐突過ぎるわ。でもお姉様、クァイルのダンスパーティは行かなかったじゃない・・・あっクァイルが嫌だったの?それでは行きたくないわよね。だから一度も行かなかったのね。
それじゃあ他のダンスパーティには出かけましょうか。そんなのあるのって、王族なんて毎日がパーティよ。毎日ワインとダンスと仮面ですごいのよ。
どうして仮面をつけるのって、それは自分の顔を隠すために決まっているじゃない。それじゃあどこの誰だかわからない?それがいいのよ。どんなブサイクも仮面をつければわからないし、まぁわたくしにとっては仮面なんていらないけれど。
あなたこそ仮面が相応しいってそれお姉様、自分に言ってるのも同じよ。だって私達は姉妹ですもの、似ているのってそんながっくりしなくても。
今まで自分のお顔を鏡で拝見された事があって?
ない?ないって、どうして?自分の顔を見るのは恥ずかしい?意味がわからないわよ!メイクするときはどうなさっているの?メイドにさせている?私もそうだけど。
あぁなんだかめんどくさい!はいはい!もうこのお話はお終いにしましょう!早速明日、ダンスパーティに出かけましょう!
・・・ダンスパーティねぇ、お姉様ったらきっとジェフの事を忘れようとしてあんな強がりを言ったのね。かわいそうだけれども、仕方のないことだわ。
よぉし!こうなったらお姉様に相応しくて格好いい王子様を捜してみせるわ!お姉様のために!はっ!でも待って!もしもお姉様よりも私に惹かれてしまう可能性も大だわ!どどどどうしましょう!まぁそれもアリってことで。
誰かノックしたわ。どちら様かしら?メイド?入ってよろしくてよ。はいどうぞ。
あらあなた新顔ね。王女様がメイドを解雇したのでその後に入りました?いらないことを言うわね。なにかしら?
これから私のお世話をする?いらないわよ。わたくしは自分のことは自分でやる主義なの。あなたの仕事はなくてよ。ごめんあそばせ。
・・・あなた、どこかで見た顔ねぇ。誰だったかしら・・・あぁ!あなた!隣の国の!えぇと名前・・・あぁそうそうメリリ・ポット・パラリ!パラリ家の一人娘!なぜあなたが我が国に?
お父様と喧嘩をしてお城を飛び出した?それでうちのメイド募集のチラシを見て応募した?
あらら、今までこちら側の人間だったのに突然メイドだなんて。あなたに務まるのかしら?
えぇ?あなたのお城にはメイドはいないの?では誰が?すべて自分達でやっている?お掃除も?お料理も?あなたのお城はどれだけ貧乏でいらっしゃるの?
お父様のご希望?甘やかしてはまともな大人にならないからって?すごいわねぇ。それに比べて私は・・・まぁ私だってね、いくつか苦労は経験済みだし、負けてはいないわ。
それにしても、どうして喧嘩などしたの?お見合いをさせられそうになった?お付き合いをしている方がいることを知っての上で?
あらぁそれはそれは。え!王家の人?それなら構わないのでは?
でも彼は自分では料理ができないから?・・・王子っていうのは普通ご自分で料理はしないと思うけれどって、理由になっていないわよ!それで、お見合いをさせられそうになった相手は、料理好きな国の王子?
意味が全くもってわからないわ。あなたのお父様は何を考えていらして?料理なんてしなくても使用人が・・・あぁそうか、あなたのお城に使用人はいないものね。あれ?でも待って。あなたが結婚をすれば、相手のお城に行くのよね?で、そのお城にはもちろん使用人がいるわけで・・・料理は全然関係ないのではなくて?
どうして黙っているの?お父様は頑固だから一回言い出したらきかない?いや、そういうことではなくて、そもそもそんな意味のない結婚相手の条件なんて気にすることないのではなくて?
あっそうそう!明日あなたのお城でダンスパーティがあるわよね?情報収集はお手のものなの。私達も行くわ。だからあなたもいらっしゃい。大丈夫よ。必ず私が助けてあげるから。私を信じてちょうだい。こう見えても約束は必ず守る性格なのよ。
ちょっとお姉様、お腹を抱えてどうなさったの?笑いを堪えている?殴ってもよろしくて?っていつの間に私の部屋に!
メリリ、あなたは早々とお城に戻ってらして。一人娘がいなくなったとなれば、今頃ご両親は躍起になって捜しているはずよ。
必死になって考えているわね。招待状をもらうまであと一歩よ!がんばれ!
それではお城に戻りますのでどうぞよろしくお願いしますって、ええわかったわ。あぁそうそう、二人分の招待状を用意しておいてくださるかしら?
これで一応パーティには行けるわね。喜んでお姉様、明日行くわよ。
早いわって、善は急げという言葉をご存じないの?パラリ家のパーティと言ったら仮面舞踏会よ!早速仮面を買いに行きましょ!それこそ善は急げよ!