表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

*。1







「…ん」


イヤフォンから漏れた音楽で目が覚める。

電車の揺れが心地よく、ついうたた寝してしまったようだ。

1つ伸びをして、森山(もりやま)加奈子かなこは、ため息をついた。


「…何で今さら。」


 

__夢を見た。

懐かしい、母の夢。


「約束、か。」

くだらないなぁ…と、加奈子は思わず鼻で笑ってしまう。



自分が「愛されている」ということを信じていた時期もあった。

何1つ疑わないで、ただ素直に、まっすぐに・・・


でもそれが間違いだと気付いたのは小学4年生のとき、


__原因は、母の駆け落ち。



幼い加奈子は、『自分がどんなに信じたって、無駄なことだってある』という現実を突きつけられ、泣き崩れた。

それから加奈子は「頑張れば、なんとかなる」という考えを捨てた。

どんなに願っても、一生叶わないことだってある…と

 

__もし、これが『大人になった』ということなら、それはひどくつまらない事だと思う。







 

『次は…駅です。』


 電車内のアナウンスが加奈子の降りる駅の名を流す。

加奈子はイヤフォンをしまい、荷物をまとめて降りる支度をした。 

 


これから祖父母の家に行く。父がイギリスに海外赴任することになったため、しばらくの間居候することになった。

しかも、父の方の祖父母はとっくの昔に他界しているため…長年帰っていなかった母の方の祖父母の家に居候することに。


ぶっちゃけあまり行きたくなかった加奈子だったが…


 Q、自炊できる?

 A,NO


ということで、やむを得ず決まってしまった。

この時ほど自分の不器用さを恨んだことはない。…が、そんなこと思っても後の祭りなのは百も承知。


 

『…駅に到着いたしました』 


電車のアナウンスが鳴り響き、揺れを感じながら電車が停止する。人ごみに巻き込まれないよう、加奈子はサッと電車を降りた。



「…はぁ、なんでこんなことに」


祖父たちが、長年帰って来なかった孫を優しく迎えてくれるとは到底思えない。

それに、あの人たちとは少しだけトラブルがあった。



「…考えるのはやめよう。」

  

スマホのディスプレイを開き、加奈子は自分の向かう先へと足を急いだ。




 






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ