体文祭三日前
戯れのように書いた程度だったので、ストックが切れました…。
続きの構想はありますけど…時間がない。
試験に落ちれば再テストに2千円かかるのです。ピンチ!
今日から全日を体文祭準備にあてがわれるようになる。
学園のいたるところで忙しそうにしながらも楽しげな生徒達を見うけられる。この頃になるとどのクラスも準備に追われ、生徒は早めに登校するようになるのだ。
登校する生徒の波に混ざって楓の姿があった。
生徒昇降口に昨日と同じように靴箱を開け、裕の待っている場所を確認。
「黄緑で下の方…中庭だな。う~ん。教室に荷物置いてからでいっか」
鼻歌を歌いながら弾む足取りで階段を上っている楓は気付かない。楓のいた靴箱の反対側でほくそ笑むものがいたことに。
中庭は朝の清々しさで満ちていた。柔らかな日差しの下、清涼な風がベンチに座って本を読んでいる裕に一瞬だけ絡み、走り去って行く。一陣の風と入れ替わるように楓がやってきた。
駆け寄る楓に気付いた裕は、挨拶を交わしたのち、足元に置いていた鞄から何かを取り出した。
「では、楓君。これが参加証明となる品です」
「…これが?」
裕から渡された小さめの紙袋を覗くと、入っていたのは――。
「これ、ハチマキじゃん。しかも、俺の名前入り」
そう、真っ赤なハチマキで、端の方には『楓』の一文字が黒糸で丁寧に縫われている。
「そこに、漢字が一文字縫われていますよね?それは、参加者それぞれが違うんです。楓君がその字になったのは偶然ですよ。ふふ、無くさないでくださいね。再発行はできませんから」
「おう! ぜってー無くさねえ」
自分だけの`特別`を得た楓はそっとその文字を撫でる。俄然やる気がわいてきた。
「いよっしゃー!! 何が何でもカツラ取ってやる!」
ガッツポーズで気合が入りまくる楓を、裕は微笑ましげに眺める。素直に喜びを体全体で表す様は正直まだまだ子供であると言う他ないが、そこが楓の美徳ともいえた。
「その意気です。そうそう、仲間が増えましたよ」
「うぇ!? マジすか! 誰、どんなやつ?」
「ええと、彼は…」
裕が説明しようとしたその時、楓達の後方にある茂みからうわぁ!?という叫び声があがった。突然の声に驚いて振り向く。
「志信…」
そう、そこには志信がいた。こちらへと何かを引きずりながら歩いてくる。もちろん志信があんな情けない声を出すはずがない。さっきの声の主は志信に捕まってあたふたしているこいつなのだろう。
見覚えのありすぎるそいつに、楓は絶句した。裕はただ傍観している。
志信はわめくそいつを気にせずこちらまでやって来て、「盗み聞きしていた」とだけ言い、ぱっと手を離した。
やっと開放されたが、今まで半ば無理やり引っ張られていたので当然バランスを崩して尻餅をついてしまった。今度は短く上がる情けない悲鳴。そいつはぶつぶつと文句を言いながら立ち上がると、身だしなみを整えだした。
「な…んで、なんでお前がここにいるんだ、キザ野郎!」
楓が指差しながら叫んだ内容に、何故か薔薇を持ってモデルポーズを決めていたキザはずっこけた。意外とこういうところでは空気を読むのか、と成り行きを見ていた裕は妙な感想を抱いた。
「違ーう! ぼくは僖貴だ、よ・し・た・か! いい加減名前くらい覚えろ」
「……必要なくね?」
一呼吸分何事か考え込んだ後、首を傾げながらそんなことをのたまった。心底そう思っている表情だ。
「(ムカッ)ふん、そうだな。ぼくの名前は詩織さんだけが憶えてくれるだけでいい…」
ふっと笑い、髪をかきあげる仕草の何から何までキザだ。さっきから楓は鳥肌が立ちまくっている。
「うざっ、この変態!」
「失礼な奴だな、君は」
そのまま低レベルな応酬になり、二人が息継ぎをしたのを見計らって裕が割って入る。
「それで、何をしにきたのです、ギャグキャラ君?」
言った瞬間、楓が盛大に噴出した。
「ひどっ! ちょ、それはいくら酷すぎないかい?」
かなりぐさっと来る一言に、珍しく胸を押さえて呻いた。しかし悲しいながらもだいぶ耐性がついてしまっている僖貴はすぐさま気を取り直し、未だ笑いの収まらない楓を一睨みした後、大げさにため息を吐いてみせた。
「ふぅ…詩織さんからキスを頂こうという不届き者がいたのでね」
「ちっがーう! ってか、どうしてここがわかった!?」
腹を抱えて笑い悶えていた楓は、聞き捨てならないと一瞬で復活した。
「ふっ愛の成せる技さ」
「お前ちょっと黙れー!」
「まあ、知ったからにはぼくも参加させてもらうよ」
「人の話を聞けー!!」
キザな仕草の連発のせいで鳥肌にさいなまれ続ける楓が全力で吼え、再び下らない言い争いが始まった。
「黙れ、貴様ら…」
「「は、はいぃ!」」
地獄から響いてきたかのような志信の超低音ボイスの迫力に押され、喧嘩していた二人は一瞬で姿勢を正した。有無を言わさぬあまりの迫力に、二人はいがみ合っていたにもかかわらず、お互いに手を握り合って小刻みに震えている。
逆らってはいけない。否、逆らえるはずもない。
「ギャグキャラ君が来たのはどうせ、楓君の独り言でも聞いていたからでしょう。仕方がありません。今日の昼休憩はスナイピングに適した場所でも探してイメージトレーニングなんかをやっておいてください」
その口調からは「付き合ってられない。勝手にやれ、アホらしい」とでも言うような投げやりさしか伝わってこなかったが、魔王(志信)から解放されることができた。二人は救ってくれた神(裕)に感謝し、ただこくこくと頷くのだった。
楓のライバル(笑)がなりゆきで仲間になり、そこはかとなく不安が…。
こんな調子で大丈夫か?
更新は未定。蒼月は学業で忙しいのです。
テスト後の夏休みは施設見学とそのレポート、発表の準備…。
考えただけでため息が…はぁ~。