これって夢じゃないですよね?その参
大分……かなり……very……すみません、ものっそい遅れました。
が、次話ですっお楽しみください♪
盛り上がる、とまではいかないまでも昔のような軽口を叩きながら職員室へと歩く。
(本当なら、もっと早く行くことだって出来るはずなのに)
あえてゆっくりと進む彼の優しさが心葉をほこほこと暖かい気持ちにさせた。
「ごめんね、結局最後まで持たせちゃった」
「いいって、女の子にあの量はきついだろうし」
心葉ともっと一緒に居たかったから、という本音は空気に触れないまま飲み込まれたが。
「あっ、じゃあ、よう……じゃなくて本宮君も何かあったら言ってね?すぐ飛んで行くから」
「あはは、じゃあ……今度、お昼でも付き合ってもらおうかな」
冗談に織り交ぜられた本気は二人の鼓動を三倍速に速めることになった。
「っていうか、あと10分しかないし……とりあえず出ない?」
これで終わりかぁ……そう思うと心葉の胸には寂しい思いが広がった。
きっと、こんなに仲良く話せるのなんてこれが最後。
楽しい時間は終わり……|もう少ししたらチャイム(12時の鐘)が鳴って、元に戻ってしまうのだ。
陽樹君は一生気付かないんだろうな、陽樹君と話せたことを私がどれだけ喜んでるかなんて。
せっかく転がってきたチャンス。
話すだけで終わりなんて嫌だから、早めに会話を切り上げてでも言いたいことがある。
心葉が俺を好きになってくれる、なんて都合のいいことは言わないし、そこまでうぬぼれるつもりもない。
ただ一度でいい、恋人気取りで心葉の隣を歩かせてくれたら。
そしたらもう、わがままは言わないから。
「そのかわりっていうのも変だけど、2人で、どっか行かない?」
そのことばを言い終える頃には、ぽかん、としていた心葉の瞳が、口元が、その表情が、見る見るうちに楽しそうなものへと変わっていた。
陽樹の待ち望む承諾の言葉を遮ったのは、能天気で、無邪気で、でもこの状況では無粋としか言いようのない怠け者な教師の声だった。
***
「―――どうだ、やってくれるか?っていうか頼んだぞ?」
いきなり、そのうえ雑用を押し付けてるとしか思えないような頼みごとも、惹かれあう2人にとっては好都合なチャンスに代わる。
一回のデートも嬉しいが、一か月ほどかかりそうな2人きりで過ごせる雑用というのもまた楽しいものなのだ。