これって夢じゃないですよね?その弐!
前回の、ひぅ様の話から二週間以上><
申し訳ありませんでしたm(_ _)m
ご期待にそえればいいのですが……。
いつも思うけど、この先生はいかつい割には声が小さい。
かろうじて静かな授業中ならまだしも、それが終わったあとの生徒たちの時間になると、その大きさじゃ、一番奥の席の私には届かない。
そうだよ、先生が悪いんだから、少しくらい多目に見てくれてもいいじゃん。
私はやや慌てて教卓に向かう。途中、何度か何もないところで躓いたけど、気にしない。
「花篭、この資料、職員室の俺の机においててもらっていい?」
「呟く」という言葉をこんなに忠実に体現できるのはこの人くらいなものだろう。
そんな強面で呟かれると、意識しなくても笑ってしまうから不思議だ。ギャップネタを携えて芸人になれば、そこそこ売れるかもしれない。
私は、ため息をひとつこぼして、職員室へ向かった。
教室を出るまでは先生も一緒だったけど、彼は教室を出るや否やすぐに私と反対方向へと駆けていった。その先にあるの施設はひとつ、つまり目的もひとつだった。
職員用トイレがそこにあることくらい、誰でも知っている。
◆ ◆ ◆
職員室まで五十メートル。私の余力は、半分もない。
職員室まで十メートル。もう入り口は見えている。
傍らに立つ男子生徒が、失礼しました、と言ってこっちに来る。もう用が済んだ、という事実が羨ましい。
彼が鳴らした足音は、静かな廊下によく響いた。
私がちょっと下を向いた隙に、彼とぶつかってしまった。
「うわっ、すいません!」
彼の言葉は、床に叩きつけられた荷物の音でかき消されてしまいそうだった。
「ほんと、すいません。大丈夫ですか?」
同時に差し出された手に、私のを重ねた。温かさがじんわりと伝わってきた。
「へ、平気です。こちらこそ、ごめんなさいっ、けがはありま、せん、か………え、もとみやくん?」
見間違うはずがない。双子の芸能人がごっちゃになることはあれど、陽樹くんは絶対にない。
すぐに分かった、なにせ、好きな人だし。
「花篭? うわっ、ひさしぶり!」
私の名前、覚えててくれたんだ。
まさか、こんなドラマみたいなことがあるなんて。
「わぁーー! ほんと、久しぶり! 高校入ってからは話すこともなくなっちゃってたから、嬉しい!」
私の顔、赤くなってないかな……。
「しまった、ほらこれ、運ぶところだったんだろ」
「え、あっ!」
ありがとう、という言葉が、パッと出てこない。
一緒に拾った荷物を抱えて、慌てて目的地へ向かう。
――その時、再び声を掛けられた。
「ほら、持つから」
「えっ、悪いよ、私の仕事だし」
「いいから」
結局荷物を全部預けてしまった。
頼んだ訳じゃないから、いいよね。
いいよね!?