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械ノ操リ  作者: 奥津軽今別
械ヲ操ル
1/1

全てのやり直し

【械生物】

明治の終わり、1900年代初頭に遡る。日本が極北の未開地を求めた時代、探検隊がこの群島を発見した。リアス式海岸が織りなす複雑な地形、氷に閉ざされたフィヨルド。漁業と鉱業の拠点として、日本人移民が根を下ろした。町は生まれ、鉄道が敷かれ、文明が花開いた。だが、島はどの国にも属さず、無主地として忘れ去られた。


1940年代、終戦後の混乱期、鍵島で「大災難」が起きた。原因は今も謎だ。ある者は、北極の磁場が未知のエネルギーを引き起こしたと囁く。結果は明白だった。家具、車、電気、空気――あらゆる物質が、突如として意識を宿した。人の姿に変わり、言葉を話し、感情を抱いた。彼らは「械生物」、通称「カラクリ」または「異形」と呼ばれた。そして、彼らはそれぞれ固有魔法を持つのだ。


最初の異形は、人間を模倣した。だが、すぐにその本性が現れた。人間に乱暴に扱われ、壊され、捨てられた物々の怨念が、異形たちに殺意を植え付けた。鍵島の人間は次々と惨殺された。家屋は自ら立ち上がり、電線は蛇のようにうねり、水は溺れる手となって襲いかかった。生き残った者たちは島を脱出し、二度と戻らなかった。


異形の誕生は、島に留まらなかった。世界中で、物質が突然「バイオ因子」に侵され、異形へと変貌した。街角の椅子が、夜道の街灯が、スマートフォンが――いつ何が人外になるか、誰も予測できない。バイオ因子は、物質に宿る呪い。宇宙の彼方から飛来したとも言われるが、真実は闇の中だ。


人間社会は、異形を恐れ、鍵島群島を隔離場とした。人工カラクリ――人間がセントラルフィード303という物質で加工した、感情を持たぬ機械の兵士―H.Air―が島を管理する。彼らは一般的に看守と呼ばれている。島からの脱出は不可能。島外で新たに生まれた異形は、即座に見つかり、鍵島へと送られる。


鍵島は、ただの監獄ではない。異形たちは独自の文明を築いた。錆びた鉄道が島を繋ぎ、市場では家具の異形が交易し、電灯の異形が夜を照らす。彼らは服をまとい、言葉を交わし、喜びや怒りを抱く。共通するのは「壊れる」運命だ。鉄は錆び、木は腐り、電気は消える。異形に寿命はないが、形あるものは必ず朽ちる。


「ってわけで」


「私も異形になっちゃった」


人間も死体となると異形になることがある――

地方に暮らす中学生、鼎羽(かなわ)は、鬱々な日々を送っていた。そしてある日、命を捨てた。鼎の体はただの物質となり、バイオ因子に反応。彼は異形――「(カラクリ)」となる。姿は全身がノイズで構成された、バグのような異様なルックス。衣装はロングコートに赤紫のネクタイ、ハットをかぶっており、まるでマジシャンのようなものだった。そして、直ちに監視に見つかり、捕えられてしまった。


鍵島――


「……」


看守はただ黙ってこちらを見つめていた。

そして一言。


「……来い」


「は、はいぃっ!」


鼎羽は裏返った声で返事をした。


「外さっむ!!!!????」



鍵廻駅――


「蒸気機関車だ!?結構古い!」


蒸気機関車がごうごうと煙突から煙をあげ、待ち構えていた。鼎羽はどうも鉄道が好きで、少し興奮してしまった。


「こういう海外製のは見たことなかった…!!すごい…!!」


 看守が私の背中を叩く。


「さあ、乗るぞ。」


 看守はポケットから切符を出し、渡してくれた。古びた木造の客車に乗り込み、扉が閉まる。大きな汽笛をあげて蒸気機関車は走り出し速度を上げてゆく。

20分ほどで、四東(あづま)という町についた。

西洋風の家が立ち並び、異世界のような光景だった。

しばらく歩くと


「ここが住居だ」


看守はとある空き家を指差し、鍵を渡してきた。

鼎羽はそれを受け取り、鍵穴に刺し、中を確認した。


「え、綺麗」


中は意外と綺麗で、家具なども整っていた。電気も付く、水道も通っている。


「また詳しい説明は明日させてもらう。」


看守はそう言い放ち、待っていたトランクを鼎羽に渡し、颯爽と歩いて行ってしまった。


「あ、ちょ看守さん!?」

「ほとんど何も説明されてませんけど!!??」


そして、渡された荷物を開けた、そこにはスマートフォンやラジオなどの必需品が沢山入っていた。


「うわ!こりゃ助かるな!」

「なんかRPGみたいで面白いかも!!」


楽観的であった。


「これは新たな人生の幕開けだ!!」


鼎羽はルンルン気分で外に出てみた。

街は、まるで人間の世界を歪に模した鏡のようだった。石畳の道には、頭が木製の椅子である異形が杖をつき、軋む音を立てながら歩く。市場では、ガラス瓶の体を持つ異形が透明な腕で果物を並べ、客の異形たちと笑い合う。電灯の柱から生まれた少女が、チカチカと明滅しながら宙を舞い、子供のような異形たちがその光を追いかける。鍵島は監獄ではない。異形たちの故郷だった。


「一回だけ、うちの近くでカラクリが発生したことがあって…こうして近くで見るのはそれ以来かも。」

「わ、あの人の体、炎だ!?怖い!! 握手したら手から燃えて死にそう…」


鼎羽のノイズの体は、周囲の異形たちと異質だった。彼女の姿──全身がチラつくデジタルノイズででき、輪郭が揺らぐバグのような外見に、通りすがりの異形たちが異質の目を向ける。


「(視線ヤバいな……)」


すると突然、後ろから話しかけられた。


「貴様」


「!!!!」


突然のことに、鼎羽は転んでしまった

その場が一気に静まり返る。

そして、その、背の高い異形はこう言った。


「貴様は、人間か?」


「……は?」


鼎羽はとある本の一文を思い出した。


──人間に乱暴に扱われ、壊され、捨てられた物々の怨念が、異形たちに殺意を植え付けた。鍵島の人間は次々と惨殺された。家屋は自ら立ち上がり、電線は蛇のようにうねり、水は溺れる手となって襲いかかった。──


鼎羽は咄嗟に生存本能が働いたのか、即座に逃げた。

すると、後ろから轟音が響いた──

怖くなって、ただ無我夢中に、走って、走って、走った。

やがて山道に出た時、鼎羽は誤って崖下に滑り落ちてしまった、トラウザーズは破けてしまい、コートには木の枝が刺さっている。


「痛っっ……!」


「谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k」


後ろから、大勢の足音と唸り声が聞こえる。

明らかに異常だった。勇気を出して振り返ると──


恐ろしい形相の化け物が追ってきている──


「ああっ……」


鼎羽は痛む全身を軋ませながら無理矢理でも立ち上がり

足を引きずるように逃げた


「だれかあ!!助けて!!」


「やだあ!!!」


やがて、人気のない小さな村に出て、鉄道駅が見えた。


「助けて……!!」


すぐさま駅に駆け込んだ鼎羽は発車の合図を聞いた


「待って……!!」


「お願い!!」


その貨物列車は無惨にも鼎羽を置いて発進しはじめた。

だが鼎羽は走った、もう走るしかなかった。

最後尾にブレーキ車がついている事に気が付いた、柵に捕まれれば乗ることができる。幸い蒸気機関車の加速力は遅いため柵に掴まることができた。運よく列車は回送列車で誰も乗っていなかった、だが、後ろからは巨大な化け物が線路を破壊しながら追ってきていた。


「噓でしょ…!?」


なぜそこまで私を殺そうとするのか、なぜそこまで人間が憎いのか


「どうして……!」


カラクリ達は驚異的な速度で近づいてきていた。

鼎羽は恐怖を感じすぐさま先頭車両へ走った、そして、機関車の運転士に叫んだ。


「あ、ああ、あの!!」


機関士はハッとした表情で振り返る。


「何故列車に勝手に乗っている!!」


鼎羽は一瞬ひるむが、焦りがすぐに勝ち叫び返した。


「取り敢えずいいから速度上げて!!早く!!」

「後ろから化け物が!!」


機関士はすぐに後方を確認した、そして、驚く。


「あれはッ…!?」

「まさか君は人間か……!!!」


鼎羽は息を呑んだ。


「状況は理解した。君は石炭を焼べるのを手伝ってくれないか!!」


機関士は何かを察した様子で、呼びかけた。


「は、はい!」


鼎羽もせかせかと石炭を焼べた。機関士なにやら難しい操作をこなしている。

列車の速度は徐々に上がっていった。

だが安心できるのも束の間。

後ろには、街を破壊し、山を破壊し、こちらへ突進してきている化け物の姿が──


「え、は!?なんなの!?怖すぎ!?え!?」


「面倒な奴らだ!」


機関士は運転をやめ、ひょいと炭水車の上に乗った。

そして、機関士は化け物に手を向け


「無効化。」


化け物は動かなくなった。


「え……え!?」


鼎羽は呆然とした。


「俺の固有魔法は無効化だからな、一時的なものだが…。」


「なにそれチートじゃん!?」


「だがな!代償に体力の消耗が激しくてな……この調子だと……」


「え、それ、大丈夫ですか!?あ、ちょ!?操縦しなきゃ!!」


機関士は運転室にヒョロヒョロになりながら帰ってきた。


「すまない…すぐに…やるぞ」


「や……休んでてください!!無理は禁物です!!私、実は機関車とか好きで!!ゲームとかで蒸気機関車の操縦とかしたことあって!なんとなく!わかります!加減弁とかなら!」


「……!!そうか、なら…任せてもいいか?」


「はい!任せてください!」


列車はやがて鍵廻の街へ──


「次は大きな駅だ、このまま行けば他の列車と正面衝突する可能性が」


「え!?止めなきゃ!!ブレーキってどこですか!?」


それに、このまま行けば、後ろの化け物が街を破壊する心配があった。

だが、その心配は必要なく、そこらの街では化け物の情報は知れ渡っており

強い異能力を持ったカラクリ達が街の外へ出てきていた。

そこを列車が通過する。


「あれって…!」


鼎羽は見ていた。

化け物が現れると、カラクリ達は一斉に魔法を放った。

化け物は次々と倒れていき、光を放って消えてく。


「すごい!」


「……ッ!!前!!」


突然、機関士が叫んだ。

前方には、この列車と同じような貨物列車が停車していた。


「え、待って待って待って!?ブレーキブレーキ!?どれ!?これ!?」


鼎羽は咄嗟にブレーキを引いた。すると耳をつんざくような音が鳴り響き、列車が大きく揺れた。その揺れで、鼎羽はバランスを崩し、倒れた。その時に手を怪我してしまった。


「いったぁ……!!これやばいかも……!」


手から血のような半透明の液体が流れ始めた。


「これ……血?この体って血とかあるの」


瞬間、鼎羽は後ろから抱きかかえられた。


「降りるぞ」


機関士は、鼎羽を抱えて、そのまま機関車から飛び降りた。

まるで映画のワンシーンのようで、目の前がコマ送りで動いていた

最後に見えたのは飛び散り咲き乱れる火花だった。


── ── ── ──


朦朧とする意識の中、起き上がるとそこはどこかの部屋だった

窓から月光が鼎羽の透明な体を突き刺している。


「おえっ」


突如激しい吐き気に襲われた


「……! 目が覚めましたか!」


隣には、頭部がスマートフォンの異形頭が座っていた。

この人が自分を看病してくれていたんだと気付くまでそう時間はかからなかった。

そして、彼は言葉を放つ。


「吐き気がしますよね...私のせいです...少し失敗してしまったようですね…」


彼の能力は【治療】


「まあでも、大体の怪我は治せましたし、良かったです。」


鼎羽はゆっくり起き上がり、彼の手をそっと掴んだ。


「(...あったかいな)」


それで、現実感を取り戻した。


「私の名はライトです、どうぞ宜しくお願いします。」


「あっ、えっと! 私は鼎羽です」


「鼎羽さん、ね。最近島にやってきたのですか?」


「……はい」


「ふふ、やはりそうでしたか。どこを探してもあなたの情報が一つもないんですよ」

「私はどうやら正体不明の子を預かってしまったようです」


「……」


「あなたが元々人間だったのは知っていますけど」


「な……!!!」


驚きでベットをガタンと揺らす。


「怯えることはありませんよ、私は貴方に危害を加えるつもりはありませんし」

「まあ、でも…貴方を殺せるほどの力はありますが」


ライトは空笑いをした。


「それにしても、本当に大変でしたね…よく頑張りました。」

「昔、人間に憎悪を抱いていたカラクリ達があの地に人間を駆逐する魔法を撒いたんです」

「きっと半分人間のあなたに反応したのでしょう。」


衝撃的な事を聞いてしまった。


「じゃあ、あの街の人たちが私に怒ってあの化け物を召喚した…とかではない……ってこと?」


「……。はい、そうですよ。そもそも、人間に対する憎悪など、もうとっくに私達からは消えています」


「そっか、そうなんだ。」


「まぁ、でも、一部の奴等を除けばの話ですがね。」


「え?なに……?それ。」


「ふふ、何でもありませんよ。」


ライトはクスクスと笑った


「……ああ、そうだ!!あの、機関士さんは……?」


「ああ、隣の部屋で寝ていますよ。貴方を庇って飛び降りたせいか、大変な大怪我でしたが……」

「私にかかれば、あの程度すぐに治せちゃいました」


「……まじですか。なんだか申し訳ない…」


それから、少し話しているとすぐに睡魔が襲って眠ってしまった。

そして、


「新聞に載りましたね〜」


ライトが脱線事故の新聞を読んでいる

鼎羽はそれを隣からジロジロと拝見している。


「私の事は書いてなさそう……よかった」


ほっと息をついた。すると、扉をノックして誰かが入ってきた。

それは──


「あ、機関士さん!」


あの時の機関士だった、腕には包帯が巻かれている、驚くことにそれ以外に目立った外傷はなかった。


「ルルさん、体調の方は良くなりましたか?」


「もう平気だよ、ありがとう。」


鼎羽は何故か申し訳ない気持ちが爆発して机をドンと叩く。


「本当に大丈夫ですか!?なんか!!免許?みたいなのとか……」

「クビとかにされるんじゃ……」


機関士は少し何かを思案した後、腕を組んだ。


「俺は脱線事故常習犯」

「今回のは少し大事故過ぎたが

今まで起こしたのを足して割ったらこのくらいどうってことないさ」


「ん??なんかすっごい事聞いちゃったんだけど。」

「なんか……今まで何人か殺してそう」


「轢いたことはねぇよ!!」

「んーま、大丈夫、俺の魔法で列車の「殺人」を無効化しているから」

「俺の列車によって起きた事故では誰も死なないようになっている」


「チート能力すぎません?」

「それならまぁ……いいですけど」


脱線事故の新聞がパラっとそよ風で落ちる。

機関士とライトは2人で顔を見合わせて笑った。

鼎羽はそのまま呆れたように二度寝した。

隔週で更新するつもりです。

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